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予知保全AIの始め方

最終更新: 2026-07-11

💬 設備が急に止まると生産計画がぐちゃぐちゃになるんだよなぁ、、、。

💬 「予知保全」がいいのは分かるけど、うちみたいな中小でセンサーとかAIとか本当にできるの、、、?

💬 大がかりなシステムはお金も人もない。小さく始める方法はないの?

そんな『予知保全AIの始め方』についての悩みにお答えします。

目次

☑ 記事の内容

  1. そもそも予知保全とは ── 事後保全 / 予防保全 / 予知保全 の違い
  2. 予知保全に AIが効くケース と仕組み (振動・温度・電流センサ + 機械学習)
  3. 1設備から始める スモールスタートの進め方 5 ステップ
  4. 必要なデータ・インフラと 費用相場・ROI
  5. TPM・自主保全 との組み合わせ / 失敗パターン / Q&A

わたしは自動車メーカーの工場で改善活動の指導を 10 年以上行ってきました。実績を金額に換算すると 1 億円以上の改善を行ってきた、いわゆる改善のプロです。現場では TPM (全員参加の設備保全) や自主保全の立ち上げにも数多く関わり、設備が突発で止まるたびに生産計画が崩れる痛みも、部品を早めに替えすぎるムダも、どちらもさんざん見てきました。予知保全という言葉が新しく聞こえても、その根っこは「故障ロスをゼロに近づける」という、昔から現場でやってきた改善そのものです。本記事では、わたしが現場で中小企業にお勧めしている 「1設備の小さな試しから始める」予知保全 AI の進め方 を、そのまま整理していきます。

そんなわたしが解説していきます。

本記事は 設備の故障を事前に検知する予知保全に、AIをどう使い始めるか を段階導入で整理した内容です。AI導入そのものの全体像 (どんな用途があるか・どう進めるか) から知りたい方は、まずまとめ記事 ▶ AI導入完全ガイド を読んでください。また、予知保全は TPM・自主保全といった 設備保全の改善活動が土台 になります。その基礎から押さえたい方は ▶ 改善完全ガイド を併せてご覧ください。本記事は、その改善の延長線に AI を接ぎ木する 実践編の入口 として使ってください。

予知保全とは ── 事後保全・予防保全・予知保全の3つの違い

まず「予知保全とは何か」を、昔からある2つのやり方と並べて整理します。設備の保全のやり方は、大きく 事後保全・予防保全・予知保全の3つ に分けられます。予知保全は、この3つ目にあたる一番新しい考え方です。

事後保全 / 予防保全 / 予知保全 の違い

事後保全 タイミング 壊れてから直す 出やすいムダ 突発停止で 生産計画が崩れる AIが効く度合い 低い

予防保全 タイミング 時間・回数で 定期交換 出やすいムダ まだ使える部品を 替えるムダ AIが効く度合い 中くらい

予知保全 タイミング 状態を見て 壊れる前に手を打つ 出やすいムダ 両方のムダを 減らせる AIが効く度合い 高い

事後保全とは

事後保全とは、設備が壊れてから直すやり方 のことです。動くところまで使い切るので一見ムダがないように見えますが、壊れるタイミングを選べません。生産の真っ最中に突然止まれば、生産計画は一気に崩れ、納期にも響きます。この 突発停止のダメージが大きい のが、事後保全の弱点です。

予防保全とは

予防保全とは、時間や回数を決めて、定期的に部品を交換していくやり方 のことです。「3ヶ月ごとにベアリングを交換する」といったイメージです。突発停止は減りますが、今度は逆の問題が出ます。まだ十分使える部品まで、期限が来たからと替えてしまう。つまり まだ使えるものを捨てるムダ が出やすいのです。

予知保全とは

予知保全とは、設備の状態 (振動・温度など) を実際に見て、壊れる前に手を打つやり方 のことです。事後保全のように壊れるまで待つのでも、予防保全のように一律で交換するのでもなく、「この設備は今どんな状態か」を測りながら、傷み始めた兆しをつかんで交換や整備の計画を立てます。

つまり予知保全は、「突発停止のムダ」と「替えすぎのムダ」の両方を減らそう という、いいとこ取りを狙う考え方です。そして、この「状態を見て予兆をつかむ」部分にAIが効いてきます。

3方式の対比表

3つのやり方を並べると、性格の違いがはっきりします。

保全のやり方 手を打つタイミング 出やすいムダ AIが効く度合い
事後保全 壊れてから直す 突発停止・生産計画の崩れ 低い
予防保全 時間・回数で定期交換 まだ使える部品を替えるムダ 中くらい
予知保全 状態を見て壊れる前に (両方のムダを減らせる) 高い

予知保全はTPMの「故障ロス削減」の延長線上にある

予知保全は、まったく新しい発想というわけではありません。TPM (全員参加の設備保全) や自主保全では、昔から 「故障ロスをゼロにする」 ことを目指してきました。日常点検で異常の芽を早く見つけ、突発停止を減らす。予知保全は、その 人の点検にセンサとAIを足して、予兆をもっと早く・確実につかもう という延長線上にあります。TPM・自主保全の基礎は ▶ 改善完全ガイド で詳しく解説しています。

なぜ今、予知保全にAIなのか ── AIが効くケースと効かないケース

予知保全と聞くと「AIを入れれば何でも故障が予測できる」と思われがちですが、そうではありません。AIには 効くケースと効きにくいケース があります。ここを最初に見極めるのが、失敗しない一番のコツです。

AIが効くのは「異常の予兆がデータに出る」設備

AIが得意なのは、壊れる前の兆しが、振動や温度などのデータに少しずつ表れる タイプの設備です。代表的なのは、モータ・ポンプ・ファン・コンプレッサといった 回転する機械 です。こうした設備は、ベアリング (軸受) が傷んでくると振動が変わったり、負荷が上がって電流や温度が変わったりします。この「少しずつ変わっていく様子」をAIがつかみます。

予知保全AIが向くケース

わたしの経験では、次のような設備は予知保全AIの効果が出やすいです。

  • 止まると生産全体が止まる 要 (かなめ) の設備
  • 過去に何度も 故障した履歴がある 設備
  • 24時間・長時間動き続けていて、人の目が届きにくい設備
  • 交換部品や修理が高額で、突発だと損失が大きい設備

要するに、「止まると一番痛い設備」から 考えるのが正解です。

逆にAIが効きにくいケース

一方で、次のような場合はAIを入れても効果が出にくいので、無理に急ぐ必要はありません。

  • センサでデータがまったく取れない設備
  • 故障が完全にランダムで、予兆が出ない壊れ方をする設備
  • そもそも年に一度も止まらず、困っていない設備

ここに高いお金をかけても回収できません。困っていない設備から始めない ことが大切です。

「まず人の点検、そこにAIを足す」順番

もう一つ大事なのが順番です。予知保全AIは、日常点検 (人の五感による自主保全) を置き換えるものではありません。まず人が毎日設備を見て、音・熱・振動の「いつもと違う」に気づく。その土台があった上で、人では追いきれない細かな変化や24時間の監視をAIが補う、というのが正しい順番です。この点は本記事の後半 (「予知保全AIとTPM・自主保全の組み合わせ」) で詳しく整理します。

予知保全AIの仕組み ── センサー + 時系列の異常検知

「AIで故障予測」と聞くと難しそうですが、仕組みそのものはシンプルです。ここでは、予知保全AIがどう動いているかを 3段階 に分けて、かみ砕いて説明していきます。

全体像 ── 「測る → 学ぶ → 知らせる」の3段

予知保全AIの中身は、大きく次の3段です。

  1. 状態を測る ── 設備にセンサを付けて、振動や温度などを数値にする
  2. 正常を学ぶ ── いつもの (正常な) 状態を機械学習でAIに覚えさせる
  3. 異常の予兆で知らせる ── いつもと違うズレが出たら、壊れる前に知らせる

この「測る → 学ぶ → 知らせる」の流れが分かれば、予知保全AIの全体像はつかめます。

どんなセンサを使うか

状態を測るために使うセンサは、主に次の4種類です。難しく考えず、「何を測りたいか」で選びます。

  • 振動センサ ── 設備の揺れ・振動の波形を測る
  • 温度センサ ── 表面温度や発熱を測る
  • 電流・電圧センサ ── モータが使う電流の変化を測る
  • 音・超音波センサ ── 人の耳では聞こえない異音・高周波を測る

センサ種類 × 検知できる異常マップ

どのセンサで何が分かるかを、一覧にすると選びやすくなります。

センサ 主に測るもの 検知しやすい異常の例
振動センサ 揺れ・振動波形 軸受 (ベアリング) の劣化・芯ズレ・アンバランス
温度センサ 表面温度・発熱 過熱・潤滑不良・過負荷
電流・電圧センサ 消費電流の変化 モータの過負荷・負荷変動・部品の摩耗
音・超音波センサ 異音・高周波 エア漏れ・初期の軸受異常・放電

はじめは、取り付けやすく効果が分かりやすい振動・温度・電流 から選ぶのがお勧めです。

時系列の異常検知とは

予知保全AIの心臓部が「異常検知」です。時系列の異常検知とは、時間とともに変化するデータの中から「いつもと違う」を機械が見つける仕組み のことです。

ポイントは、故障のデータを大量に集めなくてもよいことです。多くの現場では、正常に動いているときのデータをAIに学習させ、そこからのズレを「異常の予兆」とみなす という進め方をします。「壊れたときのデータがないと始められない」わけではないので、ここは安心してください。

予兆で「あと何日」を読むイメージ

異常検知がうまく働くと、劣化がだんだん進んでいく様子 (トレンド) が見えてきます。「振動が少しずつ大きくなってきた」といった傾向がつかめれば、「そろそろ交換の計画を立てよう」と前もって動けます。突発で止まってから慌てるのではなく、生産の空き時間に落ち着いて整備できる。これが予知保全の一番のうまみです。

予知保全AIの始め方 ── 1設備から始める5ステップ

ここが本記事の核です。予知保全AIで一番やってはいけないのが、いきなり全設備に一斉導入すること です。わたしがお勧めするのは、止まると一番痛い 1設備の小さな試し (PoC=試験導入) から始めて、効果を確かめてから広げる 進め方です。ここでは、その流れを5ステップで整理します。

予知保全 スモールスタート 5ステップ

1 対象設備を1つ選ぶ 止まると一番痛い設備・過去によく故障している設備を1台に絞る

2 センサを付けてデータを貯める 取り付けやすい振動・温度・電流から。まず「いつもの状態」を記録

3 正常な状態を学習させる 平常運転のデータで「いつもの状態」の基準を作る (故障データは不要)

4 異常の予兆で知らせる仕組みにする しきい値・通知。「誰が受けて、誰が動くか」まで決めておく

5 効果を確かめて横展開する 1設備で回してから、同型設備・別ラインへ広げる

大原則 ── 1設備の小さな試しから始める

予知保全AIは、最初から工場全体に入れる必要はありません。むしろ 1設備だけで小さく試す 方が、失敗しても被害が小さく、費用も抑えられ、現場が納得してから広げられます。「まず1台で回してみて、良ければ増やす」── これが中小企業に一番合う進め方です。

第1ステップ ── 対象設備を1つ選ぶ

最初にやるのは、対象設備を1つに絞ることです。選ぶ基準は、「止まると一番痛い」か「過去によく故障している」か です。生産全体を止めてしまう要の設備、あるいは何度も突発停止で困っている設備を1つ選びます。ここを欲張って複数選ぶと、次のステップから一気に大変になります。まずは1台です。

第2ステップ ── センサを付けてデータを貯める

対象が決まったら、その設備にセンサを付けてデータを貯めていきます。最初は 取り付けやすい振動・温度・電流 あたりから始めるのが現実的です。ここで大切なのは、いきなり分析しようとせず、まず「いつもの状態」のデータをためる ことです。データがなければAIは何も学べません。

第3ステップ ── 正常な状態を学習させる

ある程度データがたまったら、平常運転のデータをAIに学習させ、「いつもの状態」の基準を作ります。これが、後で「いつもと違う」を見つけるための物差しになります。前述の通り、故障データを集める必要はなく、正常な状態さえ覚えさせれば、そこからのズレで異常の予兆をつかめます。

第4ステップ ── 異常の予兆で知らせる仕組みにする

次に、異常の予兆が出たら 知らせる仕組み を作ります。「振動がいつもの範囲を超えたらアラートを出す」といった形です。ここで見落としがちなのが、「誰が通知を受けて、誰が動くか」まで決めておく ことです。通知だけ来ても、動く人が決まっていなければ意味がありません。仕組みと運用はセットで考えます。

第5ステップ ── 効果を確かめて横展開する

1設備でしばらく回したら、効果を確かめます。突発停止の回数・停止時間が導入前より減ったか、予兆をちゃんとつかめたかを見ます。効果が確認できたら、同じ型の設備や別のライン へ広げていきます。1台で成功パターンを作ってから横展開するので、失敗のリスクを抑えながら広げられます。

スモールスタートの利点

この「1設備から」の進め方には、はっきりした利点があります。

  • 少額で試せる ── 全社一斉のような大きな初期投資が要らない
  • 失敗しても被害が小さい ── 1台なので、うまくいかなくても損失が限られる
  • 現場が納得してから広げられる ── 実物で効果を見せられるので、社内の合意を得やすい

「大がかりなシステムはお金も人もない」という中小企業ほど、この段階導入が向いています。

予知保全に必要なデータとインフラ ── 「まず貯める」から始める

「予知保全にはビッグデータや専用サーバが要るのでは」と身構える方が多いのですが、そんなことはありません。最初から完璧なインフラを揃える必要はなく、データを貯めるところから 始められます。

必要なのは「設備の状態データ」

予知保全AIに必要なのは、難しいデータではありません。センサから取れる、振動・温度・電流などの時系列データ です。設備の「今の状態」を数値で記録し続ける、それだけです。まずはこの状態データを取れるようにするのが第一歩です。

どれくらいデータが要るか

必要なのは、正常に運転しているときのデータをある程度の期間ためること です。設備や故障のしかたによって必要な期間は変わるので一概には言えませんが、「いつもの状態」がAIに伝わるくらいの量が目安になります。前述の通り、異常 (故障) のデータは無くても、「正常からのズレ」で始められます

インフラは段階的でよい

インフラも段階的に育てれば十分です。まずは 後付けセンサ + クラウド (SaaS=月額で使うクラウドサービス) で小さく始め、必要になってから設備との連携やエッジ処理 (設備の近くでデータを処理する仕組み) へ広げていきます。最初から大きな仕組みを組もうとすると、費用も手間も膨らみます。

既存設備でもできるか

「うちの設備は古いから無理では」という相談もよく受けます。ですが、古い設備でも後付けの外付けセンサで状態を測れることが多い です。設備そのものを入れ替えなくても、外からセンサを付けて振動や温度を拾えれば、予知保全は始められます。まずは1台、後付けで試してみるのが現実的です。

現場の運用体制

最後に忘れてはいけないのが、人の側の準備です。通知を受けて動く人・記録を残す仕組み まで、最初に決めておきます。データとAIだけあっても、それを見て動く体制がなければ宝の持ち腐れになってしまうのです。

予知保全AIの費用相場とROI ── ダウンタイム削減で回収を試算する

気になるのは費用と、その元が取れるか (ROI=投資回収) です。ここは金額を断定できない部分なので、「費用の考え方」と「回収の組み立て方」 を整理します。

費用の内訳

予知保全AIの費用は、大きく3つに分けて考えると見通しがよくなります。

  1. センサ費 ── 設備に付けるセンサの購入・設置費
  2. データを貯めて分析する仕組み ── SaaS の月額利用料など
  3. 導入・設定の手間 ── 初期の取り付けや設定にかかる工数

「一式でいくら」ではなく、この3つに分けて見積もると、どこにお金がかかるかが分かります。

スモールスタートなら初期投資は抑えられる

1設備・後付けセンサ + 月額 SaaS という構成なら、初期投資は比較的小さく始められます。ただし、金額はセンサの種類・設備・分析の仕組みによって大きく変わるので、ここで「相場は○○円」と断定はしません。まずは1設備の見積りを取り、その規模感をつかむところから始めてください。

ROIの考え方 ── 回収の主役はダウンタイム削減

予知保全AIの投資回収で 主役になるのは「突発停止 (ダウンタイム) の削減」 です。まず、対象設備が 1回止まると何時間・いくらの損失になるか を出します。停止による生産ロス・残業・納期遅れまで含めた1回あたりの損失が分かれば、「突発停止を年に何回減らせれば元が取れるか」という形で回収を組み立てられます。

回収の副次効果

ダウンタイム削減が主役ですが、副次的な効果もあります。

  • 替えすぎのムダの削減 ── 状態を見て交換するので、まだ使える部品を早めに替えるムダが減る
  • 保全の計画化 ── 突発対応が減り、整備を計画的にできる。残業や休日出勤の平準化にもつながる

これらは金額に置き換えにくい部分もありますが、現場の負担軽減として確実に効いてきます。

効果は控えめに見積もる

ここで一番伝えたいのは、効果は控えめに見積もる ということです。「AIで故障が○%減る」といった数字は、設備や運用で大きく変わるので、最初から当てにしない方が安全です。わたしがお勧めするのは、自社の停止コストをもとに、保守的に (少なめに) 試算する やり方です。控えめに見積もっても回収できるなら、実際にはもっと効果が出ることが多い。この順番で考えると、導入の判断を間違えにくくなります。

予知保全に使える補助金 ── 設備を伴うかで補助金が変わる

予知保全AIの導入には、補助金を使える場合があります。ただし、どの補助金が合うかは 「設備を伴うかどうか」 で変わります。ここでは当たりを付ける入口だけ示し、細かい制度の話は補助金の記事へ送ります。

予知保全は「設備を伴うか」で補助金が変わる

線引きはシンプルです。

  • 既製の予知保全 SaaS を中心にクラウドで使う → IT導入補助金が入口
  • センサ設置・設備の改造を伴う → ものづくり補助金が本命

つまり、ソフト (SaaS) で収まるか、ハード (設備・センサ工事) を含むかで、見る補助金が変わってきます。

省人化が主目的なら省力化投資補助金も候補

「点検の手間を減らして省人化したい」という 省人化・自動化が主目的 の場合は、中小企業省力化投資補助金も候補になります。人がやっていた点検・監視を、どれだけ減らせるかを数字で示せるケースです。

数字の細部は公募年度で変わる

補助率・補助上限・締切といった数字は、公募年度ごとに改定されます。ですから本記事では個別の金額を並べません。最新の条件は、各制度の公式サイトと、補助金側の記事で確認してください。

用途別の詳しい整理は補助金の記事へ

「AIの用途ごとに、どの補助金が合うか」は、専用の記事で整理しています。予知保全を含めた用途別のマップと、補助金でAIツールを入れるときの実務は、次の記事をご覧ください。

予知保全AIとTPM・自主保全の組み合わせ ── AIは自主保全を置き換えない

予知保全AIを考えるときに、絶対に外してほしくない点があります。それは、予知保全AIは自主保全 (人の日常点検) を置き換えるものではない ということです。ここを取り違えると、導入は失敗します。

予知保全AIは自主保全を「置き換える」のではなく「補強する」

自主保全とは、現場の作業者が自分の設備を毎日点検し、異常の芽を早く見つける活動 のことです。予知保全AIは、これを置き換えるのではなく、その上に載せて 補強する ものです。人が五感で「いつもと違う」に気づく土台があり、そこに、人では追いきれない24時間の監視や細かな変化の検知をAIが足す。この組み合わせが一番強いのです。

16大ロスの「故障ロス」「チョコ停」を減らす

TPMでは、設備の効率を下げる代表的なムダを「16大ロス」として整理します。その中でも、予知保全AIが効くのが 「故障ロス (突発停止)」と「チョコ停 (小さな停止)」 です。予兆をつかんで突発停止を減らし、状態を見ながら小さな停止の原因にも早く手を打てます。予知保全は、この故障ロス削減を強力に後押しします。

AIの通知を自主保全のサイクルに組み込む

うまくいく現場は、AIを孤立させず、自主保全の点検・改善サイクルに組み込んでいます。具体的には、「AIの通知 → 現場が点検 → 原因に対策 → 記録を残す」という流れにします。AIの通知が現場の行動につながって初めて、故障は減っていきます。仕組みだけ入れて満足しないことが大切です。

TPM・自主保全の進め方そのものは改善側へ

TPM・自主保全の進め方そのもの (点検のやり方・活動の立ち上げ方) は、改善の基礎として別に解説しています。予知保全の土台を固めたい方は、▶ 改善完全ガイド から自主保全の進め方をご覧ください。

予知保全AI導入でよくある4つの失敗パターン

最後に、相談現場で本当によく出てくる失敗を4つ整理します。逆に言えば、この4つを避けるだけで 予知保全AIの成功率はぐっと上がります。

失敗1 ── いきなり全設備に入れる

一番多いのがこれです。最初から工場全体に入れようとして、費用も手間もふくらみ、途中で頓挫する。まずは止まると痛い1設備のPoCから 始めてください (「1設備から始める5ステップ」参照)。

失敗2 ── 目的が「AI導入」になっている

「AIを入れること」自体が目的になると、まず失敗します。決めるべきは、「どの設備の・どの故障を・どれだけ減らすか」 です。目的があいまいなままだと、効果も測れず、社内でも続きません。

失敗3 ── 通知が来ても誰も動かない

センサとAIを入れて満足してしまい、通知が来ても誰も動かない パターンです。前述の通り、通知を受けて動く人・手順を最初に決めておきます (第4ステップ)。仕組みと運用はセットです。

失敗4 ── 効果を測っていない

導入したきり、効果を測っていない のも失敗のもとです。突発停止の回数・停止時間を、導入前と後で比べてください。数字で効果を見せられないと、投資の続行判断もできず、次の設備への横展開も止まってしまうのです。

よくある質問 Q&A

Q1: 中小企業でも予知保全AIは導入できますか?

できます。最初から大がかりな仕組みは要りません。止まると痛い1設備に、後付けセンサ + 月額 SaaS で小さく始める のが中小企業に合う進め方です。効果を確かめてから広げれば、失敗のリスクも費用も抑えられます。

Q2: 古い設備でも予知保全はできますか?

多くの場合できます。設備を入れ替えなくても、外から後付けするセンサ で振動や温度を測れることが多いからです。まずは1台、後付けセンサで状態が取れるか試してみてください。

Q3: どのくらいのデータ量・期間が必要ですか?

設備や故障のしかたによって変わるので一概には言えませんが、必要なのは 「正常に動いているときのデータをある程度の期間ためること」 です。故障データを集める必要はなく、正常な状態からのズレで予兆をつかめます。

Q4: 費用はどのくらいかかりますか?

センサ費・分析の仕組み (SaaS 月額)・導入の手間の3つに分かれ、構成によって大きく変わるため一律の相場は出せません。まずは 1設備の見積りを取り、その規模感をつかむ ところから始めてください。回収は「突発停止の削減」で試算するのが基本です。

Q5: 予知保全AIがあれば点検はしなくてよくなりますか?

いいえ。予知保全AIは日常点検 (自主保全) を置き換えるものではありません。人が五感で異常に気づく土台の上に、AIが24時間の監視や細かな変化の検知を足す、という関係です。点検とAIはセットで考えてください。

Q6: 予知保全に補助金は使えますか?

使える場合があります。SaaS 中心なら IT導入補助金、センサ設置・設備改造を伴うならものづくり補助金 が入口になります。用途別の詳しい整理は ▶ AI導入に使える補助金 をご覧ください。

まとめ

本記事で押さえてほしい3行サマリーは以下の通りです。

  1. 予知保全は「壊れる前に、状態を見て手を打つ」保全。事後保全・予防保全の次の一手で、突発停止と替えすぎ、両方のムダを減らせる
  2. AIは万能ではなく、データが取れて止まると痛い設備で効く。全社一斉ではなく 1設備の小さな試しから段階導入 するのが中小企業の正解
  3. 土台は自主保全 (人の点検)。TPMの故障ロス・チョコ停削減の延長線上でAIを使い、効果は自社の停止コストから 保守的に試算する

予知保全AIの始め方について解説しました。大事なのは「AIを入れれば故障が予測できる」と考えるのではなく、止まると痛い1設備を選び、小さく試して、効果を確かめてから広げる ことです。根っこにあるのは、昔から現場でやってきた「故障ロスをゼロに近づける」改善そのものです。コツコツと1台から積み上げて、突発停止のない現場をつくっていきましょう。

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