改善JAPANはJAPANはジャパンは『改善で世界を一歩進める』をテーマに取り組んでいきます。
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最終更新: 2026-07-12

💬 「標準作業」ってよく聞くけど、作業手順書と何が違うのか正直あいまいなんだよなぁ、、、。

💬 トヨタ式の「標準作業3票」って難しそう、、、うちみたいな中小でも作れるの?

💬 標準作業を作れと言われたけど、何から手を付ければいいのか分からない、、、。

そんな『標準作業とは何か』という悩みにお答えします。

目次

☑ 記事の内容

  1. 標準作業とは何か ── 3 要素 (タクトタイム・作業順序・標準手持ち)
  2. なぜ標準作業が必要か ── 改善の 土台 になる理由
  3. 標準作業3票 (工程別能力表・標準作業組合せ票・標準作業票) の目的と作り方
  4. 標準作業の作り方 5 ステップと、維持・多能工化とのつながり
  5. よくある誤解と Q&A

わたしは自動車メーカーの工場で改善活動の指導を 10 年以上行ってきました。実績を金額に換算すると 1 億円以上の改善を行ってきた、いわゆる改善のプロです。そのなかで、トヨタ式の標準作業と「標準作業3票」を、実際に現場でストップウォッチを片手に作り、貼り替え、改善してきました。標準作業は言葉で聞くと難しそうですが、やっていることは「いまいちばん良い作業のやり方を紙 1 枚に決める」だけ です。本記事では、わたしが現場で使ってきた通りに、3 要素と 3 票を中小製造業でもそのまま作れるかたちで整理していきます。

そんなわたしが解説していきます。

本記事は 標準作業とは何か・トヨタ式の標準作業3票をどう作るか に絞った内容です。作業手順書と標準作業をあわせた全体像から知りたい方は、まずまとめ記事の ▶ 作業手順書・標準作業の作り方 完全ガイド を先にご覧ください。また、標準作業はトヨタ生産方式の中核にある考え方です。その全体像は ▶ トヨタ生産方式とは何か で解説しているので、あわせて読むと理解が深まります。

標準作業とは ── 「いまいちばん良い作業のやり方」を決めた 3 要素の組み合わせ

まず 1 行で言い切ります。標準作業とは、ムダなく安全に、決められた時間で作業するための「いまいちばん良いやり方」を決めた取り決め のことです。

ポイントは「人の動き」を中心に考えることです。機械の性能ではなく、人がどの順番で、どのくらいの時間で、どれだけの仕掛品を持って作業するかを決めます。そして、その中身は次の 3 つの要素でできています。この 3 要素が揃って初めて「標準作業」と呼べます。

標準作業の 3 要素 標準作業 ① タクトタイム 1 個を何秒で作ればいいか という「作るペース」 お客様の必要数から 逆算して決める ② 作業順序 モノを加工・組立する 「作業の順番」 人が動く順番。動線の ムダをなくす並びにする ③ 標準手持ち 作業を繰り返すために 工程内に置く仕掛品 多すぎず少なすぎない ちょうどの最小数 3 要素が揃って初めて「標準作業」になる

標準作業の 1 行定義

標準作業とは、人の動きを中心に、ムダのないもっとも良い作業のやり方を決めたもの のことです。「誰がやっても、いまの時点でいちばん良いやり方になる」ように、順番と時間と手持ちを決めておく、というイメージです。

「いまの時点で」という言葉が大切です。標準作業は一度決めたら固定するものではなく、もっと良いやり方が見つかれば、そのつど書き換えていきます。この点は後の章でくわしく触れます。

標準作業を成り立たせる 3 要素

標準作業は、次の 3 つの要素の組み合わせでできています。

要素ひと言でいうと
① タクトタイム1 個を何秒 (何分) で作ればいいか、という「作るペース」
② 作業順序モノを加工・組立していく「作業の順番」
③ 標準手持ち作業を同じ順で繰り返すために工程内に置く「最小限の仕掛品」

つまり「どれくらいのペースで (タクトタイム)」「どの順番で (作業順序)」「どれだけ手元に持って (標準手持ち)」作業するかを決めたものが、標準作業です。順番に見ていきます。

要素① タクトタイム ── 「1 個を何秒で作ればいいか」

タクトタイムとは、製品を 1 個作るのにかけてよい時間 のことです。お客様の要求から逆算して決める「作るべきペース」で、次の式で計算します。

  • タクトタイム = 1 日の稼働時間 ÷ 1 日に必要な生産数

例えば、1 日の稼働時間が 8 時間 (28,800 秒) で、1 日に 480 個必要なら、タクトタイムは 28,800 ÷ 480 = 60 秒です。「60 秒に 1 個のペースで作れば、注文どおりに間に合う」という意味になります。

ここで大事なのは、タクトタイムは「速く作れる時間」ではなく「お客様の必要数から決まるペース」だということです。速く作りすぎると作りすぎのムダになり、遅いと欠品します。タクトタイムは、標準作業のいちばんの物差しになります。

要素② 作業順序 ── モノを加工・組立する「作業の順番」

作業順序とは、1 人の作業者が、モノを加工・組立していく作業の順番 のことです。「部品を取る → 機械にセットする → ボタンを押す → 次の工程へ運ぶ」といった、人の動きの並びを指します。

ここでよくある勘違いが「モノが流れる順番」と「人が動く順番」を混同することです。標準作業で決めるのは 人が動く順番 です。動線に行ったり来たりのムダがない、いちばん短い動きになるように順序を決めます。

要素③ 標準手持ち ── 作業を繰り返すための「最小限の仕掛品」

標準手持ちとは、決めた作業順序を同じリズムで繰り返すために、工程内に置いておく最小限の仕掛品 のことです。「工程の途中に、いくつモノが乗っていれば作業が止まらずに回るか」という数のことです。

標準手持ちは、多すぎても少なすぎてもいけません。多すぎれば仕掛品の在庫のムダになり、少なすぎれば作業者が待つ「手待ち」が発生します。作業が滞りなく繰り返せる ちょうどの数 を決めるのが標準手持ちです。

3 要素が揃って初めて標準作業になる

タクトタイム・作業順序・標準手持ちは、どれか 1 つでも決まっていないと「標準」になりません。

  • タクトタイムだけ決めても、順序が人によって違えば時間はバラつきます
  • 順序を決めても、手持ちが多すぎれば在庫のムダが残ります
  • 手持ちを決めても、作るペース (タクト) がなければ速い遅いの判断ができません

ですから標準作業を作るときは、この 3 要素をセットで決める と覚えてください。次の章では、なぜここまでして標準作業を作るのか、その目的を整理します。

なぜ標準作業が必要か ── 改善の「土台」であり、ムダを見えるようにする物差し

標準作業を作る目的は、大きく 3 つあります。「決まりを守らせるため」ではありません。現場を良くしていくための土台 を作るためです。

  1. 改善の土台 (比べる物差し) になる
  2. ムダが「見える」ようになる
  3. 品質・安全がバラつかなくなる

標準がなければ改善もできない

改善とは「いまより良くする」ことですが、いまがどうなっているか (標準) が決まっていないと、良くなったかどうかを判断できません。比べる物差しがないからです。

例えば「作業が速くなった」と言っても、元の作業が 70 秒だったのか 90 秒だったのかが決まっていなければ、本当に速くなったのか分かりません。標準作業は、この「比べる基準」になります。だから、改善をしたい現場ほど、まず標準作業から作る必要があるのです。

ムダが「見える」ようになる

標準作業で順序と時間が決まると、そこから外れた動きが、ひと目でムダと分かる ようになります。

決めた順序どおりに手が動いていない、決めた時間より長くかかっている、標準手持ちより多くモノが溜まっている── こうしたズレが「見える」ようになります。標準がない現場では、ムダがあっても「そういうもの」として流れてしまいます。標準作業は、隠れていたムダを表に出す道具でもあるのです。

品質・安全がバラつかなくなる

人によってやり方が違う状態は、品質と安全のバラつきをうみます。A さんは締めるが B さんは締め忘れる、といった違いが不良や事故のもとになります。

標準作業では、作業の順序に加えて 品質の急所 (必ず確認するポイント) や安全の急所 も決めて共有します。誰がやっても同じ手順・同じ確認になるので、品質と安全が安定します。

標準作業は「守るため」ではなく「良くするため」にある

ここが標準作業でいちばん誤解されるところです。標準作業は、決めたことを がまんして守り続けるためのもの ではありません。もっと良いやり方が見つかったら、すぐに書き換えるためのもの です。

トヨタ式では「標準がなければ改善はない、改善のない標準は死んでいる」という言い方をします。標準を決める → その標準を土台に改善する → 良くなったら標準を書き換える、というサイクルを回し続けることが目的です。この考え方を持っておくと、次に説明する 3 票も「作って終わり」にならずにすみます。

標準作業3票とは ── トヨタ式で標準作業を作る 3 枚の帳票

ここが本記事の核です。トヨタ式では、標準作業を 3 枚の帳票 (標準作業3票) を使って作ります。3 票は、次の順番で作ります。

標準作業3票の関係・役割マップ STEP 1 ── 調査 STEP 2 ── 設計 STEP 3 ── 掲示 ① 工程別能力表 各工程・設備が 「何個作れるか」を調べ ネック工程を見つける (土台の調査票) ② 標準作業組合せ票 人と機械の動きを 時間軸で組み合わせ タクトタイムに収める (作業の設計票) ③ 標準作業票 レイアウト図の上に 順序・手持ち・急所を 1 枚に描く (現場掲示用) まず ① で能力を調べ → ② で時間を設計し → ③ で 1 枚にまとめる この順番が、標準作業を作るときの基本の流れ

標準作業3票の全体像

標準作業3票は、それぞれ役割が違います。「調べる → 設計する → 現場に貼る」の 3 段階だと考えると分かりやすいです。

票の名前役割 (ひと言)段階
工程別能力表各工程・設備が「何個作れるか」を調べ、ネック工程を見つける調査
標準作業組合せ票人と機械の動きを時間軸で組み合わせ、タクトタイムに収める設計
標準作業票完成した標準作業をレイアウト図の上に 1 枚で描き、現場に掲示する掲示

いきなり③の標準作業票から書こうとすると手が止まります。まず①で能力を調べ、②で時間を設計し、③で 1 枚にまとめる ── この順番が、標準作業を作るときの基本の流れです。ひとつずつ見ていきます。

票① 工程別能力表とは

工程別能力表とは、各工程・設備が 1 日 (または一定時間) で何個作れるかという「能力」を調べ、いちばん能力の低い工程 (ネック工程) を見つける調査票 のことです。

現場では、工程ごとに加工にかかる時間が違います。速い工程と遅い工程が混ざっていると、全体の生産量は いちばん遅い工程 (ネック) に引っ張られます。工程別能力表は、そのネックを数字で見つけるための最初の 1 枚です。

工程別能力表の作り方

工程別能力表は、次のように作ります。

  1. 対象の工程を 加工の順番に 縦に並べる
  2. 各工程の 手作業時間 (人が手で行う時間) を書く
  3. 機械加工がある工程は 自動送り時間 (機械が自動で動く時間) を書く
  4. 刃具交換などの余裕時間 (何個ごとに何秒、といった段取り替えの時間) を書く
  5. これらから、その工程の 加工能力 (一定時間に何個作れるか) を計算する

こうして全工程の能力を並べると、数字がいちばん小さい工程 = ネック工程が見えてきます。

工程別能力表の記入イメージと使いどころ

能力を並べたとき、例えば A 工程 500 個・B 工程 320 個・C 工程 600 個 なら、能力の低い B 工程 (320 個) がネック です。この現場は、どうがんばっても 1 日 320 個までしか作れない、と分かります。

改善の第一歩は、このネック工程を良くすることです。工程別能力表は、どこを改善すれば全体が良くなるか を教えてくれます。また、誰がどの工程をこなせるかを広げる多能工化の土台にもなります (多能工化の進め方は、近日公開の別記事でくわしく解説します)。

票② 標準作業組合せ票とは

標準作業組合せ票とは、1 人の作業者が行う「手作業」「歩行」「機械の自動送り」を時間軸に並べ、1 サイクルがタクトタイムに収まるよう組み合わせを設計する票 のことです。

人が作業している間に機械が動く、機械が動いている間に人は次の作業に移る── この「人と機械の時間の組み合わせ」を設計するのが、この票の役目です。人の手待ちや、機械のそばで見ているだけの時間 (機械番) といったムダを見つけ出します。

標準作業組合せ票の作り方

標準作業組合せ票は、線の種類を使い分けて書きます。

  1. 横軸に 時間 の目盛りを引く
  2. 作業順序ごとに、実線 = 手作業の時間 を引く
  3. 工程間の移動は 破線 (点線) = 歩行の時間 で引く
  4. 機械が自動で動く時間は 波線 = 機械の自動送り時間 で引く
  5. 1 サイクル全体が タクトタイムの線 (縦線) の内側に収まるか を確認する

タクトタイムの縦線をはみ出していれば、そのままでは間に合いません。線を見ながら、作業の順番を入れ替えたり、機械番の時間に別の作業を割り当てたりして、タクト内に収めていきます。

標準作業組合せ票の記入イメージと使いどころ

この票の良いところは、ムダが「線のはみ出し」や「線と線のすき間」として目で見える ことです。

  • 手作業の実線が終わってから次まで空いていれば、それは 手待ち のムダ
  • 機械の波線をずっと横で見ているだけなら、それは 機械番 のムダ
  • 1 サイクルがタクトの縦線をはみ出していれば、人や作業配分の見直しが必要

数字の表だけでは気づきにくいムダが、線にすると一目で分かります。ここで作業の組み替えを検討するのが、標準作業組合せ票の使いどころです。

票③ 標準作業票とは

標準作業票とは、設備のレイアウト図 (上から見た配置図) の上に、作業順序・標準手持ち・品質チェック・安全の急所を描き込んだ、現場に掲示する 1 枚の票 のことです。標準作業3票の「仕上げ」にあたり、これが現場の壁に貼られます。

①工程別能力表と②標準作業組合せ票が「作る側が設計するための票」だとすれば、③標準作業票は 現場の作業者に見せるための票 です。その工程を初めて見る人でも、順番と急所が分かる状態を目指します。

標準作業票の作り方

標準作業票は、次の順番で描きます。

  1. 工程の 設備レイアウト (機械や作業台の配置) を上から見た図で描く
  2. 作業する順番を 番号と矢印 でレイアウト図の上に書き込む
  3. 各所に置く 標準手持ちの数 を書く
  4. 品質チェックのマーク (必ず確認する箇所) と 安全のマーク (危険な箇所) を入れる
  5. 欄外に タクトタイム・サイクルタイム (実際にかかる時間)・標準手持ちの合計数 を記す

こうしてできた 1 枚を見れば、「どこで何番目の作業をして、いくつ手持ちを置き、どこで品質と安全を確認するか」が分かります。

標準作業票の記入イメージと使いどころ

完成形は、その工程を初めて見る人でも、番号と矢印をたどれば作業の流れと急所が分かる 状態です。現場に掲示し、実際の作業がこの票のとおりになっているかを、いつでも見比べられるようにします。

なお、標準作業票は「作業設計を 1 枚にまとめた図」であり、1 つ 1 つの作業の細かいやり方 (コツ・急所の説明) を写真つきで伝える 作業手順書 とは役割が違います。この違いは次の章で簡単に整理し、くわしくは近日公開の別記事で解説します。

標準作業の作り方 ── 現場で回す 5 ステップ

3 票の中身が分かったところで、実際に現場でどう作るかを 5 ステップで整理します。3 票を作る流れに、観測と現場合わせを足したものです。

ステップ 1 ── 現状の作業をありのまま観測する

まず、対象の工程を 1 つ決め、いまの作業を ありのまま観測 します。理想の姿ではなく、実際にやっている動きと時間を、ストップウォッチや動画で記録します。

作業の観測は、繰り返し見て時間を測る地道な作業です。近年は撮った動画から作業を分析してくれる AI ツールも出てきており、観測の手間を減らせます。動画を使った作業の観測・分析については ▶ AI動画解析で作業をマニュアル化する方法 でくわしく解説しています。

ステップ 2 ── 工程別能力表でネック工程を把握する

観測した時間をもとに、①工程別能力表を作り、各工程の能力とネック工程を把握します。「この現場は 1 日に何個作れるか」「どこがボトルネックか」を数字で押さえます。

ステップ 3 ── 標準作業組合せ票でタクトに組み合わせる

次に②標準作業組合せ票で、人の手作業・歩行・機械の自動送りを時間軸に並べ、1 サイクルがタクトタイムに収まるよう 組み合わせを設計します。手待ちや機械番のムダを見つけ、作業を組み替えます。

ステップ 4 ── 標準作業票にまとめて掲示し、合わせ込む

設計ができたら③標準作業票にまとめ、現場に掲示します。そして 実際にその通りに作業してみて、無理があれば直します。机上の設計と現場は必ずズレるので、この「合わせ込み」を必ず行います。

ステップ 5 ── 標準どおりに回っているか確認し、書き換える

最後に、決めた標準どおりに作業できているかを定期的に確認します。守れていない箇所があれば、標準に無理があるのか、教育が足りないのかを見極めます。そして、もっと良いやり方が見つかったら、標準を すぐに書き換えます。この維持と改善の運用については、近日公開の別記事でくわしく解説します。

標準作業と作業手順書の違い ── 「作業の設計図」と「やり方の説明書」

「標準作業と作業手順書は何が違うのか」は、いちばんよく受ける質問です。ここでは要点だけ整理します。

役割の違いを 1 表で整理

標準作業と作業手順書は、目的も見た目も違います。

標準作業 (標準作業3票)作業手順書
主な目的人の動きを タクトタイム基準で設計 し、ムダを見えるようにする1 つ 1 つの作業の やり方・急所 を分かりやすく伝える
中心にあるものタクトタイム・作業順序・標準手持ち手順・写真・コツ・急所
主な使い手作業を設計・改善する側実際に作業する人・教わる人
ひと言でいうと作業の 設計図・物差し作業の 説明書

両方そろって現場が回る

標準作業と作業手順書は、どちらが上ということではなく、役割が違うので両方そろって現場が回ります。標準作業で「どの順番で、どれくらいの時間で」を決め、作業手順書で「その 1 つ 1 つの作業を、どうやってやるか・どこが急所か」を伝える、という関係です。

作業手順書そのものの作り方は ▶ 作業手順書の作り方 でくわしく解説しています。標準作業とあわせて読むと、現場の紙の全体像がつかめます。

詳しい違いと使い分けは別記事へ

標準作業書と作業手順書の細かい違いや使い分け (どちらをどの場面で作るか) は、専用の記事で近日くわしく解説する予定です。本記事では「設計図と説明書で役割が違う」という要点だけ押さえてください。

標準作業を「活かす」ために ── 維持改善と多能工化とのつながり

標準作業は、作って貼って終わりにすると、すぐに現場と合わなくなり形だけのものになります。作った標準作業を活かすには、次の 2 つのつながりが大切です。

作った標準作業は「維持」しながら「改善」する

標準作業は、決めたら維持し、改善したら書き換える、という運用があって初めて生きます。放っておくと、実際の作業と貼ってある票がズレていき、誰も見ない紙になってしまいます。

この「形だけにしない」運用と改訂の進め方は、近日公開の別記事でくわしく解説します。本記事では「作った標準は維持と改善をセットで回す」ことだけ覚えておいてください。

工程別能力表は多能工化の土台になる

①工程別能力表で各工程の能力が分かると、次は「誰がどの工程をこなせるか」を広げていく 多能工化 に進めます。作業者が複数の工程をこなせるようになると、ネック工程に人を回したり、欠員をカバーしたりできるようになります。

多能工化の進め方 (誰にどの工程を教え、どう広げるか) は、近日公開の別記事でくわしく解説します。

標準作業は改善活動全体の一部

標準作業は、それ単体で完結するものではなく、現場改善全体の土台となる一部です。ムダの見方・改善の進め方といった全体像は ▶ 改善完全ガイド にまとめています。標準作業を作ったあと、何を改善していくかの地図として使ってください。

標準作業でよくある 4 つの誤解

標準作業には、現場で本当によく出てくる誤解が 4 つあります。

誤解 1 ── 「標準作業 = 作業手順書」

標準作業と作業手順書は別物です。標準作業は 人の動きをタクトタイム基準で設計する もの、作業手順書は 1 つ 1 つの作業のやり方を説明する ものです (前章参照)。役割が違うので、両方そろえて使います。

誤解 2 ── 「一度決めたら変えてはいけない」

これは逆です。標準作業は、もっと良いやり方が見つかったら、すぐに書き換えるのが正しい姿 です。変えずに守り続けるのは、改善を止めることと同じです。「標準は改善の出発点であって、ゴールではない」と覚えてください。

誤解 3 ── 「大企業やライン生産だけのもの」

標準作業3票はトヨタ式なので「大企業のライン生産のもの」と思われがちですが、そうではありません。少人数・多品種の中小の現場でも、3 票の考え方はそのまま使えます。まずは 1 つの工程・1 つの製品から作ってみるのが現実的です。

誤解 4 ── 「3 票を全部きれいに作らないと意味がない」

最初から 3 票を完璧に作ろうとすると、手が止まって前に進みません。まずは 1 工程から、手書きでかまわないので作ってみる のが正解です。完璧な帳票より、現場で使われて改善が回ることのほうが、はるかに大事です。

よくある質問 Q&A

Q1: 標準作業と作業手順書はどう違いますか?

標準作業は、人の動きを タクトタイム基準で設計する「作業の設計図・物差し」 です。作業手順書は、1 つ 1 つの作業の やり方・急所を伝える「説明書」 です。役割が違うので、両方そろえて使います (前章の比較表を参照)。

Q2: 標準作業3票は 3 枚とも必ず作らないといけませんか?

理想は 3 票そろえることですが、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは現状を観測して 標準作業票 (③) を 1 枚作る だけでも、現場の「今のやり方」が決まり、改善の物差しになります。慣れてきたら能力表・組合せ票を足していくのが現実的です。

Q3: タクトタイムはどうやって計算しますか?

タクトタイム = 1 日の稼働時間 ÷ 1 日に必要な生産数 で計算します。例えば稼働 8 時間 (28,800 秒) で 480 個必要なら、28,800 ÷ 480 = 60 秒です。「速く作れる時間」ではなく「お客様の必要数から決まるペース」である点に注意してください。

Q4: 標準手持ちがゼロではいけないのですか?

工程内で加工の順番を守って作業を繰り返すには、最小限の仕掛品 (標準手持ち) が必要になる場合があります。手持ちゼロで作業が止まらず回るならゼロで構いませんが、順序を保つために手持ちが要る工程では、多すぎず少なすぎない ちょうどの数 を決めます。

Q5: 多品種少量生産でも標準作業は作れますか?

作れます。品種が多い場合は、代表的な製品や作業の共通部分から標準作業を作り、少しずつ広げていきます。「うちは多品種だから標準化できない」と最初からあきらめず、まず 1 品種・1 工程から 始めるのがコツです。

Q6: 作業の観測を効率化する方法はありますか?

あります。従来はストップウォッチで繰り返し測っていましたが、近年は撮った作業動画を分析して時間や手順を整理してくれる AI ツールも登場しています。動画を使った観測・マニュアル化については ▶ AI動画解析で作業をマニュアル化する方法 でくわしく解説しています。

まとめ

本記事で押さえてほしい 3 行サマリーは以下の通りです。

  1. 標準作業 = タクトタイム・作業順序・標準手持ちの 3 要素 で「いまいちばん良いやり方」を決めたもの
  2. トヨタ式では 工程別能力表 → 標準作業組合せ票 → 標準作業票 の 3 票で作る (調べる → 設計する → 現場に貼る)
  3. 標準は「守る」ためでなく 「良くする」ため にあり、もっと良いやり方が見つかったら書き換える

標準作業とは何かと、標準作業3票の作り方について解説しました。標準作業は難しそうに聞こえますが、やっていることは 「いまいちばん良い作業のやり方を決めて、それを土台に良くしていく」 ことです。最初から完璧な 3 票を目指さず、まずは 1 工程から手書きで作ってみましょう。コツコツと積み上げて、現場を良くしていきましょう。

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このほか、作業手順書と標準作業書の違い・標準作業の維持改善・多能工化の進め方については、近日別記事で公開予定です。

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