💬 IE手法ってよく聞くけど、何をすればいいのかさっぱり、、、
💬 現場のムダって見えにくいんだよなぁ、、、
💬 改善したいけど、データの取り方からわからない、、、。
そんな悩みにお答えします。
☑ 記事の内容
- IE手法とは何か (現場改善の体系・効果)
- 改善の進め方 ── 計画・実行・評価の3ステップ
- 工程分析の基本 (加工・検査・運搬・停滞)
- 4種類の工程分析 (製品・作業者・組み合わせ・付帯)
- 分析結果から改善案を作る具体手順
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。
そんな私が解説していきます。
改善活動の全体像については ▶ 中小製造業の現場改善 完全ガイド にまとめています。改善の方向性を決める ▶ 改善の8原則 とセットで読むと、現場で何をどう変えるかが具体化します。
IE 手法 全体マップ ── 4 要素 × 4 分析 × 3 ステップ
まずは IE 手法の全体像を 1 枚の図で押さえます。
上段の 4 要素 (加工・検査・運搬・停滞) が分析の基本単位、中段の 4 種類の工程分析 が目的別の使い分け、下段の 計画 → 実行 → 評価 が改善サイクルです。これから順番に解説していきます。
IE手法とは何か ── 現場のムダを数字で見える化する道具
IE手法とは Industrial Engineering (経営工学) の略で、現場の作業や工程を 数字で分析して改善する 一連の手法のことです。
「ムダがありそう」という感覚を、「ムダが○○秒・○○回ある」 と数字に置き換える ── これが IE 手法の本質です。数字にすることで、改善前後の比較ができ、効果が客観的に評価できるようになります。
IE手法を導入すると、現場には次のような変化が起きます。
- 「なんとなくムダっぽい」が「ムダの大きさ」になる ── 改善の優先順位が決まる
- 改善の効果が数字で出る ── 上層部への報告がしやすい
- 誰がやっても同じ結論になる ── 属人化しない
逆に IE手法を使わずに改善すると、「気合いと根性で頑張ろう」になりがちで、続きません。続く改善には、数字の支えが必要 なのです。
改善の進め方 ── 計画 → 実行 → 評価の 3 ステップ
IE 手法による改善は、次の 3 ステップで進めます。
STEP 1. 改善を計画する
- 改善する問題点を見つけ出す ── パレート図で「上位 20%」を狙う
- 目標を立てる ── 「○○を○○秒短縮」と数値で書く
- 計画を立てる ── 誰がいつまでに何をするか
STEP 2. 改善を実行する
- 問題点を詳しく調べる ── これから紹介する 4 種類の工程分析を使う
- 改善案を考える ── ECRS の法則 (排除・結合・並べ替え・簡素化) で発想
- 改善案を実施する ── 小さく試して、効果を測る
- 改善事項を歯止めする ── 標準書を改定して定着させる
STEP 3. 改善を評価する
「改善した結果、本当に目標を達成したか」を数字で確認。目標未達なら次のサイクルに入ります。
このうち STEP 2 の「問題点を詳しく調べる」 が IE 手法のキモ。具体的に何をどう調べるかを、次から詳しく解説していきます。
工程分析の基本 ── 加工・検査・運搬・停滞の 4 要素
工程分析とは、製品や作業の流れを 4 つの基本要素 に分解して記録する手法です。
| 記号 | 要素 | 中身 | 価値 |
|---|---|---|---|
| ○ | 加工 | 形・性質を変える | 価値あり |
| □ | 検査 | 品質を確かめる | 必要 |
| → | 運搬 | 場所を移す | ムダ候補 |
| ▽ | 停滞 | 何もしない時間 | ムダ候補 |
このうち 「加工」だけが価値を生み出す活動。残り 3 つは「ゼロにできるなら、ゼロにしたい」ものです。実際に分析してみると、加工時間が全体の 10〜20% しかない ことが珍しくありません。
「運搬」と「停滞」の見落としは特に多い。▶ よくある問題点 10 選 の半分は、運搬と停滞のムダです。
工程分析には、目的に応じて 4 種類あります。
- 製品工程分析 ── モノの流れを追う
- 作業者工程分析 ── 人の動きを追う
- 組み合わせ作業分析 ── 人と機械の連動を見る
- 付帯分析 ── 流れ・停滞・運搬・余力を細かく見る
製品工程分析 ── モノの流れを追う
製品工程分析 は、原材料が完成品になるまでの「モノの動き」を追跡します。
分析手順は次のとおり。
- 目的を決める ── 「リードタイム短縮」「在庫削減」など
- 工程範囲を決める ── どこからどこまでを見るか
- 対象製品を決める ── 多品種なら、生産量の多い品種を優先
- 日程計画を立てる ── いつ・誰が・どう記録するか
- 予備調査 ── 全体像をざっと把握 (1 日くらい)
- 本調査 ── 1 つずつの工程を時間・距離込みで記録
- 分析結果を整理 ── 加工 / 検査 / 運搬 / 停滞の比率を出す
- 改善案を作る ── 運搬と停滞の削減から
製品工程分析の主な狙いは、「滞留時間の削減」 です。製造リードタイムが長い原因の 80% は「停滞」にあります。
作業者工程分析 ── 人の動きを追う
作業者工程分析 は、特定の作業者の動きを追跡します。
こちらの分析対象は「人」。1 人のオペレーターが 1 日に何をどれだけしているかを、4 要素 (作業・検査・運搬・手待ち) で記録します。
手順は製品工程分析とほぼ同じですが、ポイントが 2 つ違います。
- 「手待ち」を見つけるのが目的 ── 機械停止待ち・他工程待ち・指示待ち
- 同じ作業者を 1 日中観察 ── 朝礼から終業までフル追跡
結果として「1 日の中で実際に作業しているのは 4 時間で、残り 4 時間は手待ちだった」というような事実が見えてきます。これがムダの正体 です。
組み合わせ作業分析 ── 作業者と機械の関係を見る
組み合わせ作業分析 は、人と機械の連動関係を分析します。代表的なのが 「作業者-機械分析」。
この分析の主な活用シーンは 4 つ。
- 稼働率低下の原因発見 ── 機械が止まる原因を作業者側から特定
- 持ち台数の検討 ── 1 人が何台の機械を担当できるか
- 稼働重点の決定 ── 作業者と機械、どちらを優先するか
- 機械配置の改善資料 ── 動線を縮めるレイアウト
分析手順としては、横軸に時間、縦軸に「作業者」「機械 A」「機械 B」と書いて、それぞれが何をしているかを並列に記録します。すると 「作業者は動いてるが機械は止まっている」 といった非効率が一目でわかります。
付帯分析 ── 細部の流れ・停滞・運搬・余力を見る
付帯分析 は、工程分析の結果からさらに深掘りする手法で、4 種類あります。
① 流れ分析
工程間のモノの流れを レイアウト図 に矢印で書き込みます。逆流・交差・遠回りが一目でわかり、レイアウト変更の根拠になります。
② 停滞分析
「なぜ止まっているか」を細かく分類します。手順は次のとおり。
- 分析する停滞を決める (一番大きいやつ)
- 各停滞の調査をする (時間・場所・回数)
- 分析用紙に記入する
- 分析結果から改善を検討する
③ 運搬分析
運搬の 「回数 × 距離 × 質量」 を測ります。最もエネルギーを消費している運搬を見つけ、ゼロにできないかを考えます。
④ 余力分析
各工程の 能力と負荷 の差を見ます。能力 > 負荷なら余力あり、能力 < 負荷ならボトルネック。ボトルネック工程を特定して、生産能力全体の底上げを図ります。
まとめ ── IE 手法は「数字で見える化」の体系
記事のまとめです。
- IE 手法は、現場のムダを 数字で見える化 する道具の体系
- 改善は 計画 → 実行 → 評価 の 3 ステップで回す
- 工程分析の基本は 加工・検査・運搬・停滞 の 4 要素。価値があるのは加工だけ
- 製品工程分析 はモノの流れ。リードタイム短縮が目的
- 作業者工程分析 は人の動き。「手待ち」の発見が目的
- 組み合わせ作業分析 は人と機械の連動。持ち台数や稼働率に活用
- 付帯分析 (流れ・停滞・運搬・余力) で深掘りして改善案にする
IE 手法による現場改善について解説しました。
最初はとっつきにくいかもしれませんが、まずは 「作業者工程分析」を 1 日試す だけで現場の手待ちが見えてきます。そんなわたしも、IE 手法を最初に体験したときは「1 日中走り回っている作業者が、実は 4 割は手待ちだった」と衝撃を受けました。コツコツと数字を積み上げて、現場のムダを潰していきましょう。改善の方向性を整理する ▶ 改善の8原則 や、ロスの全体像をまとめた ▶ 16 大ロス もあわせてどうぞ。