💬 改善!改善!と上司に言われるけど、何をしたらいいかさっぱりで、、、
💬 改善のネタなんて、もう出尽くしているんだよなぁ、、、
💬 自分の改善案、これでいいのか自信が無い、、、。
そんな悩みにお答えします。
☑ 記事の内容
- 改善の8原則とは何か
- 8つの原則を1つずつ具体例で解説
- 業務を要素作業に分解して8原則を当てる手順
- ECRS との違いと、困ったときの対処5選
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。
そんな私が解説していきます。
改善活動の全体像については ▶ 中小製造業の現場改善 完全ガイド にまとめています。3M (ムリ・ムダ・ムラ) の見方とセットで読むと迷子になりにくいので、▶ ムリ・ムダ・ムラ(3M)の解説 もあわせてどうぞ。
改善の8原則とは ── 製造業の改善で迷子にならないための「8つの方向性」
改善の8原則とは、業務や作業を見直すときの「方向性」を8つに整理したものです。
便利なことに、改善には原則が存在します。原則とは決まり事のことです。つまり、「改善しましょう」という上司の指示は、「改善の8原則で仕事を見直してみましょう」と言い換えられるのです。
改善の8原則は次の8つです。
- 廃止の原則 ── やめられないか?
- 削減の原則 ── 減らせないか?
- 容易化の原則 ── 簡単・早くできないか?
- 標準化の原則 ── やり方を決められないか?
- 計画化の原則 ── 計画的にできないか?
- 同期化の原則 ── 手待ち・調整を無くせないか?
- 分担検討の原則 ── 担当を変えられないか?
- 機械化の原則 ── 機械や IT に任せられないか?
ですから、改善のネタが思いつかないときは、この8つを順に問いかけるだけで、自然と発想が広がっていきます。
8原則の全体像 ── 効果が大きい順に並べた一覧マップ
まずは全体像を1枚の図で押さえます。

8原則は、上にあるほど「効果が大きく、影響範囲が広い」原則です。
- 上位 (廃止・削減): やめる・減らす → 一発で効果が出る
- 中位 (容易化・標準化・計画化・同期化): 工夫で効果が出る・仕組み化に進む
- 下位 (分担検討・機械化): 体制と設備で定着させる
つまり、改善を考えるときは 上から順に検討する のが基本です。「機械化しよう」と最初に飛びつく現場が多いのですが、本当はその前に「そもそも、その作業は要るのか?」を問い直すべきなのです。
順番を間違えると、ムダな作業を高速に大量生産する仕組みが完成してしまうのです。
8つの原則を1つずつ解説
ここから先は、8原則を1つずつ見ていきます。
原則① 廃止 ── 「やめる」が最強の改善
廃止の原則とは、その作業や工程をそもそも「やめる」ことです。
8原則の中で最も効果が大きいのがこの廃止です。なぜなら、やめてしまえば作業時間はゼロになるからです。容易化や機械化をどれだけ頑張っても、やめることには勝てません。
現場のあるある:
- 誰も読んでいない日報・報告書
- 「念のため」で続けている二重チェック
- 過去のトラブル対策で残った臨時手順
チェック観点は、「やめられないか」「目的がはっきりしているか」「本当に効果が出ているか」「現行の資料・帳票・サービスをやめられないか」「そのチェック自体をやめられないか」の5つです。
「今までやってきたから」という理由だけで続けている作業は、たいてい廃止できます。現場で頻出する問題点については ▶ よくある問題点 10選【見つけるコツについても】 で具体例をまとめています。
原則② 削減 ── 「減らす」で半分にする
削減の原則とは、回数・量・項目を「減らす」ことです。
廃止ほど大胆ではないものの、現実的に効果が出やすい原則です。減らすと誰(何)が困るのだろう?と考えてみましょう。困らないなら、減らしてよいということです。
チェック観点:
- 枚数を減らせないか (帳票・報告書)
- 頻度を少なくできないか (毎日 → 週・月)
- 分類や項目を粗くできないか
- 経由する部門を少なくできないか
例えば、月次レポートを「毎日5項目」から「月1回20項目」に変えるだけで、年間の作成工数は劇的に減ります。「細かく」「頻繁に」が良いとは限らないのです。
原則③ 容易化 ── 「簡単・早く」でミスを減らす
容易化の原則とは、もっと簡単に、もっと早くできないかを考える原則です。
この作業は複雑だなと感じる作業に対して使います。複雑さは、ミスと時間ロスの温床なのです。
チェック観点:
- 資料はすぐにできるようになっているか
- よく参照する情報は近いところに置いてあるか
- 移動距離を小さくできないか
- 大事な事柄がすぐに目につくか
- 迷わず判断できるようになっているか
例えば、判断基準を写真1枚で見えるようにする、よく使う工具を腰に下げる、といった小さな変更でも、容易化の立派な改善です。
原則④ 標準化 ── 「やり方を決める」で属人化を解消する
標準化の原則とは、作業のやり方を決めて、誰がやっても同じ結果になるようにすることです。
誰か特定の人がやれば上手くいく作業は、たいてい標準化できていないのです。
チェック観点:
- もっと標準化・ルール化できないか
- ミスでやり直していることはないか
- 例外処理のルールは決まっているか
- 引き継ぎはスムーズにいくか
- この通りにやれば一定の成果が出る、というやり方になっているか
ただし、標準化の前に容易化をやらないと、複雑なやり方を全員に強制することになってしまうのです。順番が大事です。
原則⑤ 計画化 ── 「人の動き」を設計する
計画化の原則とは、計画性のある作業になっているかを問う原則です。
何度も同じところを往復していないか?時間がかかる作業はどこか?を見ていきます。
チェック観点:
- もっと計画的に仕事ができないか
- もっと短い時間でできないか
- 人の動きは良いか (のんびりしていないか)
- 離席を少なくできないか・なぜ離席するのか
- 期日を守れているか
例えば、段取り作業を機械が動いている間に前倒しする (外段取り化) のは、計画化の代表例です。
原則⑥ 同期化 ── 「手待ち・催促」を消す
同期化の原則とは、手待ちや催促、調整を無くせないかを考える原則です。
作業を並行で進められないか、まとめて処理できないかを問います。
チェック観点:
- もっと平準化できないか
- もっとまとめて処理できないか
- 必要な情報が必要なときに届いているか
- 手待ちはないか
- 納期遅れで価値が下がった資料を作り続けていないか
つまり、自分の作業の前後にいる人と「タイミングを合わせる」のが同期化です。前工程が遅れているのに自分だけ走っても、結局どこかで詰まるのです。
原則⑦ 分担検討 ── 「誰がやるか」を見直す
分担検討の原則とは、分担を変えることで効率化できないかを考える原則です。
似たような動作の作業はないか?負荷が偏っていないか?を見ていきます。
チェック観点:
- 仕事の負荷は平準化されているか
- 余裕があるのではないか
- 分担を変えた方が良いか (スキル・経験は適正か)
- もっと集中化できないか
- パート化・外注化できないか
ベテラン1人が抱えていた作業を、若手2人に振り分ける。逆に、複数人に散っていた作業を1人に集中させる。どちらも分担検討の改善です。
原則⑧ 機械化 ── 「人 → 機械・IT」に置き換える
機械化の原則とは、機械やプログラム、パソコンでの処理に変更できないかを考える原則です。
チェック観点:
- 手書きを少なくできないか
- データベース化して活用できないか
- 自動化できないか
- モバイル化できないか
- ネットワークを活用できないか
- 単純な計算に時間がかかっていないか
ただし、機械化はインパクトが大きい一方、最後に検討すべき原則です。①〜⑦を済ませた上で機械化を検討するのが正しい順序です。IE 手法による現場改善のステップは ▶ IE手法による現場改善① ステップと進め方 で詳しく解説しています。
8原則を業務に当てる4ステップ ── 「要素作業」への分解
この8原則を使うには、業務を細かく分解して原則に基づいて考えていきます。
手順は次の4ステップです。
- 今やっている業務を、一つ一つの動作に分解して書き出す
- 分解した動作 (=要素作業) を1行ずつ並べる
- 各要素作業に対して、8原則のどれが当てはまるかを問う
- 廃止 → 削減 → 容易化 → … の順に検討する
例として「作業台で製品の個数を用紙に記入する」作業を分解します。
- 振り向く
- 3歩歩く
- ボールペンを取る
- ペン先を出す
- 記入欄を探す
- 製品個数を思い出す
- 「2021セット生産」と記入
- ペン先をしまう
- ボールペンを置く
- 3歩歩いて元位置へ
この要素作業に8原則を当てはめます。例えば「振り向く」「3歩歩く」は 計画化 で動線を見直せます。「ペン先を出す/しまう」は 廃止 (常時出しっぱなしのペンに置き換え)。「記入欄を探す」は 容易化 (記入欄の場所を固定)。「個数を思い出す」は 機械化 (カウンター導入) です。
どうでしょうか。「作業台で製品の個数を記入する」とまとめた状態では原則を当てはめにくいですが、要素作業に分解した瞬間に、改善案が次々と出てくるのです。
大きな改善は小さな改善の積み重ねでできています。
ECRS との違いと使い分け ── 4文字との対応関係
改善を学ぶと「ECRS (イクルス)」という言葉も出てきます。ECRS は次の4つの頭文字です。
- Eliminate (排除)
- Combine (結合)
- Rearrange (順序変更)
- Simplify (簡素化)
改善の8原則と ECRS の関係はこうなります。
| ECRS | あすなろ式8原則の対応 |
|---|---|
| Eliminate (排除) | 廃止の原則 |
| Combine (結合) | 削減の原則・同期化の原則 |
| Rearrange (順序変更) | 計画化の原則・分担検討の原則 |
| Simplify (簡素化) | 容易化の原則・標準化の原則 |
| (ECRS に無い) | 機械化の原則 |
つまり、ECRS は8原則の 発想出しの段階だけ をカバーしています。短く覚えやすい反面、標準化や機械化のように「仕組みで定着させる」原則が抜けるのです。
使い分けの目安は次のとおりです。
- 短時間の改善会議・発想出し → ECRS (4つだけなので覚えやすい)
- 改善プロジェクトの全体設計 → 8原則 (定着まで含めて一気通貫)
3M を打ち返す具体的なやり方は ▶ 3M の打ち返し方(具体策) で解説しています。
8原則をなぜなぜ分析と組み合わせる5ステップ
8原則は「何を変えるか」を決める道具です。一方、なぜなぜ分析は「なぜ起きているか」を掘る道具です。この2つを組み合わせて初めて、改善が空回りしなくなります。
組み合わせる手順は次の5ステップです。
- 問題を1行で書き出す (例: 「A工程で月10件の手戻りが出ている」)
- なぜなぜ分析で原因を3〜5段掘る
- 出てきた真因に対して「8原則のどれが使えるか?」を問う
- 廃止 → 削減 → 容易化 → 標準化 → … と 上から順に検討する
- 選んだ原則をベースに具体策を1つに絞る
このとき、なぜなぜ分析のやり方を間違えると、いくら8原則を当てはめても効果は出ません。なぜなぜ分析でよくあるヌケや漏れについては ▶ 「なぜ」の抜け漏れ ── 見落としチェックリスト と ▶ なぜなぜ分析ができない3つの理由と解決策 で解説しています。
困ったときの対処方法 5選
改善を進めていると、必ず困りごとが出てきます。代表的な5つに対する対処法を整理します。
改善案が複数浮かんで決められない
→ 時間・コスト・有効性・汎用性・職場の目標とのマッチ度 で評価して決める。
自分の偏見で選ばないように、評価軸を5つほど決めてから絞り込みましょう。
上司にダメ出しされた
→ 理由をきちんと聞いてみる。
ダメ出しの多くは「他の作業・部署との関係性」「職場の目標とマッチしていない」「予算が回せない」などです。上司がやって欲しい改善案 (=職場の目標達成につながる) を理解することも大切なのです。
全然思い浮かばない
→ 他の作業から徹底的にマネしてみる。
「学ぶ」の語源は「真似る」です。似た作業の改善や、他の人の改善案を、自分の作業に置き換えられないかを考えましょう。
似たような改善をやっている人がいる
→ 気にせずやる。
似た改善になることはよくあります。気になるなら、先にやっている人にアドバイスをもらうのもアリです。
具体的な解決策が見つからない
→ なぜなぜ分析で深掘りする。
良い案が浮かばないときは、その作業の成り立ち・必要性・関係性を分析しましょう。着想点が絞り込まれることで、改善案が浮かびやすくなります。
まとめ
記事のまとめです。
- 改善の8原則は、現場の改善ネタを増やす「方向性の道具」(廃止・削減・容易化・標準化・計画化・同期化・分担検討・機械化)
- 廃止 → 削減 → … → 機械化 の順で、上から検討する
- 業務は「要素作業」に分解して8原則を当てると、改善案が一気に増える
- ECRS は発想出しに、8原則は仕組み化まで含めた全体設計に使う
- なぜなぜ分析で真因を掘ったあとに8原則を当てると、改善が空回りしない
改善の8原則について解説しました。
最初は廃止・削減の2つから始めるだけでも、現場は確実に軽くなります。コツコツと積み上げて改善活動を進めていきましょう。そんなわたしも、改善活動の最初の1年は廃止と削減だけで充分な手応えがありました。改善活動全体の地図は ▶ 中小製造業の現場改善 完全ガイド にまとめています。


