【IE手法による現場改善④】作業者工程分析について知る

改善

IE手法の「作業者工程分析」について知りたいな、、、。

そんな悩みにお答えします。

☑記事の内容

  1. 作業者工程分析とは
  2. 作業者工程分析の手順について
  3. 作業者工程分析の使い方

私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。

そんな私が解説していきます。

作業者工程分析とは

IE手法には工程分析が3種類ありそのうちの一つが「作業者工程分析」です。分析の対象を「人の流れ」とした分析手法です。

工程分析を行う際の注意点

どの工程分析にも共通している注意点があります。

  1. 分析する対象を間違えないようにする
  2. 分析を確実に行い、改善活動に結び付ける
  3. 分析の漏れがないように、最初に分析の範囲を決めておく
  4. 実際に現場で作業者と一緒に考えながら分析する
  5. 工程の流れが変化する場合は、最も基本的な生産の流れに基づいて分析する
  6. 分析中に改善のアイデアを考えておく
  7. 改善案は個別改善より工程全体の改善から考える

ねらい

工程分析の狙いです。

  1. 作業者の活動を順序だてて知る
  2. 作業者の活動を作業、検査、移動、手待ちの状態で把握し、その回数や比率を知る
  3. ムダな手待ちや空手移動(何もせず移動だけすること)を見つけることができる
  4. 各作業の目的を明確にすることができる

用途

工程分析の用途です。

  1. 作業者の仕事の流れに関する問題点を把握するために活用する
  2. 作業を詳細に分析し、改善するための基礎資料とする
  3. 作業の大まかな標準を作成するために活用する
  4. 作業改善の目標を設定する場合に利用する
  5. 作業改善の効果を確認する場合に活用する

作業者工程分析の手順について

工程分析の手順について解説していきます。

  1. 分析の目的を決める
  2. 対象となる作業者を決める
  3. 作業の範囲を決める
  4. 分析の日程計画を立てる
  5. 予備調査をする
  6. 分析の準備をする
  7. 分析用紙に必要事項を記入する
  8. 作業者の行動を分類し記入する
  9. 作業内容を調査し、各項目の欄に記入する
  10. 結果を整理し総括表を作成する
  11. 流れ線図を作成する
  12. 分析結果を検討し、改善案を立案する

分析の目的を決める

目的によって必要な精度や結果のまとめ方が違うため、最初に何が問題なのか、目的は何かをはっきりさせます。

  • 作業効率を改善する
  • 仕事のしやすいレイアウトに改善する
  • 作業の流れを標準化する

などの目的を具体的決めることで、分析の要点や調査項目をはっきりさせることができます。

対象となる作業者を決める

分析の対象となる作業者を分析の目的によって決定します。

  • その仕事に慣れている人
  • 作業方法、手順がしっかり定まっている人
  • 時間が多くかかるなど問題のある人

など分類を行い選びます。

作業の範囲を決める

作業工程分析の分析の範囲は基本的に「その作業の1サイクル」を範囲にします。

また、分析したい範囲が数人の作業者にまたがって作業している場合は「一人で一枚の分析表」を作成して分析を行います。

分析の日程計画を立てる

分析する日時、期間と分析者を決定し、日程計画を立てます。

分析する日時や期間に対象とする作業が行われているかの確認を十分に行います。

関係者に日程表を周知することも大切です。必要に応じてTOリストやスケジューラーに反映させて管理します。

予備調査をする

効率よく分析をするために予備調査が重要です。必要な資料を準備、確認することで工程や作業についての知識を再確認します。

よく知っている作業や工程の場合でも確実に行います。

分析の準備をする

分析に必要な用具や資料を準備します。

  1. 用具として準備するもの
    1. 分析用紙
    2. 筆記用具
    3. 観察用のDMストップウォッチ(DMとは分を100分割した単位)
    4. メモ用紙
  2. 資料として用意するもの
    1. 予備調査での資料
    2. 工程分析チェックリスト

分析用紙に必要事項を記入する

分析前にわかっている事項を分析用紙に記入していきます。

項目内容
行程系列名工程全体の名称
分析範囲分析の初めと終わりの工程
作業名 工程で行われている作業名称
分析対象 製品工程分析と作業者工程分析の区分
氏名  分析者名
所属 工場、所属課名、グループ名など
年月日分析を行った年月日

作業者の行動を観察し「4種」に分類する

作業者の行動を観察し、「作業」「検査」「移動」「手待ち」に分類します。

作業内容を調査し、各項目の欄に記入する

各作業についての場所、時間、方法などを調査します。調査項目は下記の通りです。

  • 作業
    1. 主体:作業内容、機械設備(名称、台数)
    2. 場所:作業場所
    3. 時間:作業時間、単位時間当たり生産量
    4. 方法:作業順序、作業条件、主要治工具
  • 移動
    1. 主体:移動目的、運搬設備、運搬手段
    2. 場所:移動距離、経路、回数
    3. 時間:移動時間
    4. 方法:運搬個数、使用工具
  • 検査
    1. 主体:検査内容、検査機器(名称、精度)
    2. 場所:検査場所
    3. 時間:検査時間
    4. 方法:検査箇所、検査方法、規格、不良率
    5. 方法:容量、置き方

全てを調査する必要はなく、分析の目的や精度により必要なものを選んで調査します。調査した内容は分析表の各項目に記入していきます。

結果を整理し総括表を作成する

分析が終われば「分析もれ」「間違い」がないか確認し、必要に応じて補足調査を行います。

確認後、現在方法での「作業、検査、移動、手待ちの各工程数」「移動距離」「所要時間」などの合計を求め総括表を作成します。

総括表は、各工程の数や時間の比率から問題を発見したり、改善案との比較を実施するために必要になります。

流れ線図を作成する

配置図に作業者の動きを分析号を用いて記入し「流れ線図」を作成します。

「流れ線図」は配置図上に実際の作業の動きと同じように表すことができます。

「流れ線図」を作成することにより

  • 流れが逆戻りしている
  • 流れが交差している
  • 流れがジグザグである
  • 流れを妨害するものがある
  • 不必要に遠回りしている

などのレイアウト上の問題点を明らかにすることができます。

分析結果を検討し、改善案を立案する

分析結果が整理できれば分析表や総括表、流れ線図から工程全体の検討を行います。

各工程に対してなぜなぜ分析、5W2H法やチェックリストなどによって改善案を立案します。

パレート図、ヒストグラム、特性要因図などで図表化すると効果的です。

作業者工程分析の使い方

作業者工程分析は作業の動きの改善を中心に維持・管理活動に幅広く用いることができます。

  1. 作業者の仕事の流れをつかみ、改善点を見つける場合
  2. 問題となる作業を全体的な立場で位置付ける場合
  3. 作業者の教育訓練を行う場合
  4. 作業改善の報告を行うとき

作業者の仕事の流れをつかみ、改善点を見つける場合

作業者の動きを分析し、図表化することによって作業上の問題を発見します。

手待ちや不必要な移動などといった問題を発見することで改善に取り組んだり、さらに詳細に調査・分析を行うことで改善への見通しを立てます。

問題となる作業を全体的な立場で位置付ける場合

作業者の動きが中心となる工程で、ある作業に時間がかかると全体に手待ちが発生するなどの問題を改善する必要があったとします。

この場合、全体的な作業の流れを調べ、全体的な立場でその作業を改善するときに使うことができます。

問題となっている作業を全体の作業の流れからとらえ、レイアウトや作業順序を調べることによって問題点を解決していくことができます。

作業者の教育訓練を行う場合

作業者に工程分析の考えを理解してもらうことにより、作業者自身で作業の改善を行うことができるようになります。

この場合、作業者自らが作業者工程分析票を自主的に作り、自分の作業を見直していくことが大切です。

作業改善の報告を行うとき

作業者の動きの改善を報告する場合、作業者工程分析により

作業や機械設備の改善を報告する場合、行程図示記号ににより工程の概要を説明した後に改善について説明します。

こうするこで説明相手が工程全体を認識でき、意思疎通が効率的に行えます。

まとめ

☑記事のまとめです

  1. 「作業者工程分析」は分析の対象を「作業者の動き」とした分析手法
  2. 作業者工程分析の手順についての説明
  3. 作業者工程分析の使い方
    1. 作業者の仕事の流れをつかみ、改善点を見つける場合
    2. 問題となる作業を全体的な立場で位置付ける場合
    3. 作業者の教育訓練を行う場合
    4. 作業改善の報告を行うとき

IE手法の作業者工程工程分析について大枠を解説しました。

他の分析についての詳細は別記事で開設予定です。