技能伝承ってどんなこと?
そんな疑問に答える「技術・技能伝承の第二回」です。
☑記事の内容
- 技術・技能伝承は「暗黙知」の管理が重要
- 技術・技能伝承を成功させている企業の特徴
- 技術・技能伝承が上手くいかない原因とは?
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。
そんな私が解説します。
技術・技能伝承は「暗黙知」の管理が重要
「暗黙知」とは経験的に使っている知識だが観点に言葉で説明することが難しい知恵や知識のことです。
技能は繰り返し、行為し、動作し経験を重ねることで獲得される能力です。その過程で様々な思考や捉え方にも変化が起きます。これら「暗黙知」となるのです。
技術・技能伝承を困難にさせているのはこの「暗黙知」存在です。「暗黙知」は表現が難しいとされているからです。
「暗黙知」を表現し管理するには以下の手順で整理していく必要があります。
- 仕事・作業リストの作成
- 仕事・作業リストの内容を行動リストに分解する
- 行動リストを分析し動作リストを作成する
- 動作リストをさらに分解する
仕事・作業リストの作成
現場や職場にどのような仕事や作業があるかを確認しリストを作成します。
仕事・作業リストの内容を行動リストに分解する
作成した仕事・作業リストをもとにその仕事・作業を行うために必要な行動を確認しリストを作成します。
行動リストを分析し動作リストを作成する
行動リストをもとに職場や現場の作業者・メンバーがどの行動を行う能力があるかを評価します。その評価をもとにして「全体的に保有能力が低い」、「年代的に世代交代が近づいている」、「重要だが保有者が少ない」といった行動を抽出します。
この抽出した行動が技術・技能伝承が必要な行動(暗黙知が多く含まれる)になります。抽出した行動を動作レベルまで分解しリストを作成します。
動作リストをさらに分解する
動作リストをさらに分解することで、見ただけではわかりにくい内面的な「暗黙知」を抽出できます。
内面的な暗黙知とは一般的にカン・コツと呼ばれるもので「作業者は自覚していないが、引き出し言語化できる」「作業者が無意識に行っているもので、言語化できない」ものがあります。
このようにして技術・技能伝承に必要な要素を把握していきます。
技術・技能伝承を成功させている企業の特徴
技術・技能伝承を成功させている企業の特徴です。当てはまるならひとまず安心を、当浜ならない場合は危機感を持って取り組む必要があります。
- 工程管理者が技術・技能伝承を経営上の問題だと考えている
- 技術・技能伝承の重要性の認識が企業風土となっている
- 技術・技能伝承の組織があり、責任が明確である
- 伝承対処を絞り込んで計画的に展開している
- 技術・技能マニュアルが整備されている
- 職場の能力マップが整備されている
- 技術・技能伝承がいつでもできるように工場内、事業所内に教育の場所がある
- 技術・技能伝承プロセスを見える化している
- 技術・技能伝承と人事管理がリンクしている
つまり、取り組んでいる、取り組む気が経営層に近い上層部にあるということです。
あなたが経営層でなく、しかし技術・技能伝承の必要性を強く感じているなら能力マップを整理し、弱点と今後の技能の行く末をまとめて上司、経営層にアピールすることが必要かもしれません。
技術・技能伝承が上手くいかない原因とは?
技術・技能伝承がうまくいかない原因は以下のものです。
- 技術・技能に対する認識が浅い
- 伝承活動に関するエキスパートがいない
- 計画的・組織的に実行する推進者がいない
- 技術・技能伝承についての管理者の理解がない
技術・技能に対する認識が浅い
現場や職場、工場全体での技術・技能の内容、特製、伝承時の困難箇所などの認識が浅いと技術・技能伝承はうまくいきません。
なぜなら、認識が浅いということは技術・技能伝承の意味、意義がわからないからです。
伝承活動に関するエキスパートがいない
伝承活動に関するエキスパートがいないと技術・技能伝承はうまくいきません。
なぜなら、伝承活動を進めたくても進め方がわからないからです。専門家のアドバイスをもらいながら進めるか、セミナーや講習に参加したりする必要があります。
進め方を熟知している方がいるといないでは進みが全く違います。
計画的・組織的に実行する推進者がいない
計画的・組織的に実行する推進者がいない場合も技術・技能伝承はうまくいきません。
なぜなら、地齋の活動は組織全体にかかわる活動になるため、推進者がいないと他部門と調整がうまくいかないなどの阻害要因がクリアできないからです。
現場や職場、工場に何が求められているかが理解できている人、かつそれなりの上位の職制が推進者となる必要があります。
技術・技能伝承についての管理者の理解がない
管理者層の理解がない場合は技術・技能伝承はうまくいきません。
なぜなら技術・技能伝承は担当者単位で何とかなるものではないからです。全体的な視野から必要項目を抽出したり、活動のための場所や工数の確保、人事評価への折り込みなど様々な要素があります。
管理者層の理解がないと工数の確保ができず、活動すらままなりません。
まとめ
記事のまとめです。
- 技術・技能伝承を困難にさせているのは「暗黙知」存在
- 「暗黙知」は表現が難しいとされているから
- 技術・技能伝承を成功させている企業
- 「もう初めている企業」
- 「経営者層に理解・関心がある企業」
- 技術・技能伝承がうまくいかない原因は「人」が原因
- 技術・技能に対する認識が浅い
- 伝承活動に関するエキスパートがいない
- 計画的・組織的に実行する推進者がいない
- 技術・技能伝承についての管理者の理解がない
技術・技能伝承について第二回目の記事を作成しました。
もう少し長くなりそうですが、読破すると必ず技術・技能伝承の活動の方向性が見えてきますので続きも楽しみにしてください。