工場で必要な技術・技能伝承とは? 第九回

仕事の基本
Businessman standing at long to do list. Big task document. Man looking at paper sheet. Isolated vector isometric illustration

技能伝承ってどんなこと?

そんな疑問に答える「技術・技能伝承の第九回」です。

☑記事の内容

  1. 暗黙知の明確化作業を日常的に行うには
  2. 技能道場の開設と伝承指導

私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。

そんな私が解説します。

暗黙知の明確化作業を日常的に行うには

暗黙知の明確化作業を日常に取り組むこと重要です。日常に取り組み、回数を重ねることで効率的な方法へとたどり着けます。最初から完璧なものは作れないと開き直って気軽に取り組んでみましょう。

日常的に行うためにフォーマットを提案します。

技能分析表のフォーマットで、記入していくことは以下の内容になります。

技能分析表

1、作業の全体像

作業名フライス盤にによる溝嵌め合い加工
作成者改善 弥太郎
作成年月日202×/08/25
標準時間35分
作業の概要と意義(作業の全体像)フライス盤により嵌め合い溝加工を行う
特に難しい部分ワークの取り付けとワーク送り
使用する工具、道具、材料、環境、条件等バイス、フライス盤、TSコート超硬面取り用エンドミル、切削油、切削油用筆、清掃道具

2,行程技能分析表

行程段取り
手順1-ワークの取り付け
具体的な行動ポイント・判断基準技能の補足
1-1バイスを平行台の上に置く平行台は2本同じサイズのものを使用する
1-2図面を確認してワークを平行台に乗せる寸法公差が記入されている方を基準として、バイスの固定側に置くバイスを移動側に置くとワーク素材の精度が段部の幅精度に影響する
1-3バイスを締め付ける 締め付ける場合は腕力である程度締める(約30N/m )ハンマーなどで叩かない
1-4バイスで掴んだワークをプラスチックハンマーで下方に叩くバイスの底面とワークが平行に取り付けられたことを平行台が動かなくなることで確認するバイスを締め付けるとワークは締め付けの力で浮き上がる この状態では加工精度が著しく低くなる

暗黙知でのインタビューで得たカン・コツは「技能の補足」の欄に記入することが重要です。

技術・技能伝承は技能分析表の出来栄え次第といえます。

技能道場の開設と伝承指導

技能分析表が完成したら、技能マニュアルを作成します。学習者が技能マニュアルと必要な機械、材料等があれば学習できることを目的とします。

技能マニュアルは技能分析表で分かりづらい部分が動画などで補強された内容とします。動画は必要最小限で、見所やポイントに絞り込みます。

技能道場は教育に必要な技能マニュアルと機械、資材等がそろってる場所です。学習者が自由な時間に学べる環境を整備します。

伝承の指導は初期のころはやり方や工夫の仕方等を指導しますが、中期以降は学習者自身が考えるようなアドバイス程度の指導に移行していきます。

技術・技能伝承では学習者が熟練者と同様の作業ができることを確認出来たら終了とします。できていること、できていないことを5段階評価と具体的な項目で指摘することで効果的なフォローアップを行います。

まとめ

記事のまとめです。

  1. 暗黙知の明確化作業を日常的に行うにはフォーマットに沿って数をこなしていくことが必要
  2. 技能分析表が完成したら、技能マニュアルを作成する
  3. 技能マニュアルには短い動画等を使用し理解しやすく工夫する

技術・技能伝承の核といえる暗黙知の明確化作業を日常的に行うコツ、技能マニュアルの作成について解説しました。

ここまで技術・技能伝承の準備が進めばあとは伝承していくだけです。適切な評価とフォローアップを行って学習者を継承者に育てましょう。