💬 改善活動の効果を上司に報告しても、なんとなくしか伝わらないんだよなぁ、、、
💬 ロスを数字で出したいけど、どの式を使えばいいかわからない、、、
💬 OEE って言葉は聞くけど、自分の現場で計算したことがない、、、。
そんな悩みにお答えします。
☑ 記事の内容
- ロスを「数字で表現」する3つのメリット
- 設備総合効率 (OEE) を構成する3つの因数と計算例
- 人の効率化・原単位の効率化の計算式
- 16大ロスと計算式の対応マップ
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。
そんな私が解説していきます。
ロス改善の前提となる「16ロスの地図」は ▶ 16大ロスとは何か にまとめています。本記事の計算式とあわせて読むと、ロスの「言葉」と「数字」が一直線につながります。改善活動全体の地図は ▶ 中小製造業の現場改善 完全ガイド も参考にしてください。
なぜロスは「数字」で表現するのか ── 3つのメリット
ロス改善の活動報告でよくあるのが、「段取りロスをかなり減らしました」「不良が結構少なくなりました」── という曖昧な表現です。これでは、聞いている側はどれくらい良くなったのかピンと来ません。
ロスは計算で数字に変えられるのです。数字にすることで、改善活動には次の3つのメリットが生まれます。
- 説得力が生まれる ── 経営層・他部署を動かせる
- 比較ができる ── 工程間・他社・業界平均との横並びが見える
- Before-After が見える ── 改善の効果を時系列で追える
メリット① 説得力が生まれる
「段取りロスの改善により、時間稼働率を 80% から 87% に向上させました」── これだけで、報告の説得力は段違いに上がります。さらに「7% の向上は、年間で 280 時間の追加稼働、生産金額にして 1,400 万円の上積みです」と続けば、経営層は資金を出す判断ができるのです。曖昧な表現のままでは、改善の価値が伝わらず、活動継続の予算もつきません。改善は「成果を数字で言語化するところまでが活動」と覚えておきましょう。
メリット② 比較ができる
数字にすれば、ライン A とライン B、自社と業界平均、先月と今月 ── あらゆる比較が可能になります。比較ができると「どこから手をつけるべきか」が一目瞭然になるのです。例えば OEE が 60% のラインと 85% のラインが並んでいれば、当然 60% のラインから手をつけるという判断になります。
メリット③ Before-After が見える
改善前 78%、改善後 85% ── という Before-After の数字は、現場メンバーの達成感に直結します。改善活動が長続きしない大きな理由の1つが「やった気がしない」ことです。数字で見える化することで、活動は自走しはじめるのです。
ロス改善の計算は「人・設備・原単位」の3軸で考える
16大ロスは「設備の8大ロス + 人の5大ロス + 原単位の3大ロス」で構成されています。計算式もこの3軸に対応して用意されているのです。
- 設備の効率化 ── 設備総合効率 (OEE) と3つの因数
- 人の効率化 ── 時間稼働率・能率・総合能率・省人化率
- 原単位の効率化 ── 歩留まり/エネルギー/型治工具の削減率
どの軸の計算をすればよいかは、追っているロスの種類で決まります。設備系のロスを潰しているなら OEE、人系のロスなら能率、原単位系なら削減率です。次の章から、それぞれを具体例つきで掘り下げていきます。
設備効率の核 ── 設備総合効率 (OEE) とは
設備総合効率 (OEE = Overall Equipment Effectiveness) とは、設備が「本来出せる成果のうち、実際に出せた割合」を表す指標です。次の3つの因数を掛け合わせて計算します。
OEE = 時間稼働率 (小数) × 性能稼働率 (小数) × 良品率 (小数) × 100
OEE を理解するうえで欠かせないのが、設備の時間概念です。設備の動きは、次の5つの時間に分けて整理します。
- 操業時間 ── 設備が稼働しうる時間 (1日24時間など)
- 負荷時間 ── 設備が稼働しなくてはならない時間 (操業時間 − 計画停止)
- 稼働時間 ── 故障・段取りロスなどを除いた実稼働時間
- 正味稼働時間 ── 立ち上がりロス・チョコ停などを除いた時間
- 価値稼働時間 ── 不良・手直しロスを除いた実製品生産時間
OEE は、この時間がどれだけ「価値稼働時間」に変換できているかを示す指標です。世界の優良工場のベンチマークは OEE 85% といわれています。日本の現場では 60〜70% に留まっているケースが多く、まだまだ伸びしろがあります。TPM 活動全体の文脈は ▶ TPMについて理解を深めよう もあわせて読むとつながりが見えます。
【因数1】時間稼働率 ── 止まっていた時間を数字にする
時間稼働率とは、負荷時間に対して設備が実際に動いていた時間の割合のことです。
時間稼働率 = 稼働時間 ÷ 負荷時間 × 100
※ 稼働時間 = 負荷時間 − 停止ロス時間
計算例: 8時間勤務のライン
1日 480 分 (8時間) 負荷のラインで、故障停止が 40 分、段取り替えが 20 分発生したとします。
- 負荷時間: 480 分
- 停止ロス: 40 + 20 = 60 分
- 稼働時間: 480 − 60 = 420 分
- 時間稼働率 = 420 ÷ 480 × 100 = 87.5%
時間稼働率を下げているのはどのロスか
8大ロスのうち「止まる系」のロス ── 故障・段取り・刃具交換・立上がり・SD ── がそのまま時間稼働率を下げる要因になります。時間稼働率が低い現場は、まずこれらの「止まる時間」を可視化することから始めるのです。
【因数2】性能稼働率 ── 動いているのにロスを数字にする
性能稼働率とは、設備が動いていた時間のうち、設計スピードで動けていた割合のことです。「動いているのにロスしている」時間を数字で炙り出す指標です。
性能稼働率 = (サイクルタイム × 加工個数) ÷ 稼働時間 × 100
計算例: サイクルタイム30秒のライン
設計サイクルタイム 30秒/個のラインが 420 分稼働して、800 個を加工したとします。
- 設計上の出来高: 420 分 ÷ 30秒 = 840 個
- 実際の出来高: 800 個
- 性能稼働率 = (30秒 × 800個) ÷ (420 × 60秒) × 100 = 24,000 ÷ 25,200 × 100 ≒ 95.2%
つまり、設計通りなら 840 個できるはずが、800 個しかできていない ── この差 40 個分の時間がチョコ停・速度低下に消えていたのです。
性能稼働率を下げているのはどのロスか
チョコ停・空転ロスと速度低下ロスです。どちらも「設備は動いている」ため見落とされやすく、累計の損失が大きくなりがちです。時間稼働率を改善し終わった後の現場が、次に取り組むべきはここなのです。
【因数3】良品率 ── 不良を数字にする
良品率とは、作った数量のうち良品だった割合のことです。
良品率 = (加工数量 − 不良数量) ÷ 加工数量 × 100
計算例 + OEE 統合計算
先ほどの 800 個のうち、不良が 16 個発生したとします。
- 良品: 800 − 16 = 784 個
- 良品率 = 784 ÷ 800 × 100 = 98.0%
3つの因数がそろったので、OEE を計算します。
OEE = 0.875 × 0.952 × 0.980 × 100 ≒ 81.6%
世界のベンチマーク 85% にあと一歩、というラインです。3因数のうちどれを優先的に改善すれば 85% に届くか ── ここが改善活動の入り口になります。例えば時間稼働率を 87.5% → 90% に上げれば OEE は約 83.9%、性能稼働率を 95.2% → 97% に上げれば約 83.2% です。掛け算の構造なので、最も低い因数から手をつけるのが鉄則です。
人の効率化の計算 ── 5つの工数概念と能率
人の効率化の計算は、設備の時間概念と似た構造で「工数 (人時)」の概念を5段階に整理します。
- 就業工数 ── 賃金を支払う対象となる時間 (通常 1日8時間)
- 負荷工数 ── 実際に作業しなければならない時間
- 正味作業工数 ── 管理ロス・動作ロスを除いた時間
- 有効工数 ── 編成ロス・自動化置き換えロスを除いた実作業時間
- 価値工数 ── 測定調整ロスを除いた実際の出来高に結びついた時間
計算式
時間稼働率 = 正味作業工数 ÷ 負荷工数 × 100
能率 = 価値工数 ÷ 正味作業工数 × 100
総合能率 = 時間稼働率(小数) × 能率(小数) × 100
省人化率 = 改善後の配置人員 ÷ 現状の配置人員 × 100
計算例: 5人ラインの能率改善
5人で 8時間運営しているラインで、負荷工数 40 人時に対して、管理・動作ロスが 5 人時、編成・自動化置換ロスが 2 人時、測定調整ロスが 1 人時発生していたとします。
- 正味作業工数 = 40 − 5 = 35 人時
- 有効工数 = 35 − 2 = 33 人時
- 価値工数 = 33 − 1 = 32 人時
- 時間稼働率 = 35 ÷ 40 × 100 = 87.5%
- 能率 = 32 ÷ 35 × 100 ≒ 91.4%
- 総合能率 = 0.875 × 0.914 × 100 ≒ 80.0%
もしこの改善で 5人 → 4人で同じ生産量を実現できれば、省人化率 = 4 ÷ 5 × 100 = 80% ── つまり 20% の省人化達成です。人の効率化は「待ち」「歩行」「ライン編成」がカギなので ▶ 生産効率向上の6ステップ もあわせて読むと改善の引き出しが増えます。
原単位の効率化の計算 ── 歩留まり・エネルギー・型治工具
原単位とは、製品1つを作るために必要な原材料・エネルギー・治工具などの投入量のことです。これらを「どれだけ減らせたか」を率で表します。
歩留まり向上率 = [1 − (改善後投入総重量 ÷ 現状投入重量)] × 100
エネルギー削減率 = [1 − (改善後投入エネルギー ÷ 現状投入エネルギー)] × 100
型・治工具ロス削減率 = [1 − (改善後投入金額 ÷ 現状投入金額)] × 100
計算例: 歩留まり改善
製品 1個あたりの素材投入量が現状 1.00 kg、改善後 0.95 kg になったとします。
- 歩留まり向上率 = [1 − (0.95 ÷ 1.00)] × 100 = 5.0%
- 素材単価が 1,000 円/kg なら、1個あたり 50 円のコスト減
- 年間 100 万個生産なら、年間 5,000 万円の改善効果
原単位ロスの最大の魅力は「お金で測りやすい」ことです。OEE のような率の改善より、経営層への報告で響きやすいのです。
16大ロスと計算式の対応マップ
最後に、16大ロスとここまでの計算式がどう対応しているかを一覧で整理します。
設備の8大ロス × OEE 因数
- 故障ロス → 時間稼働率を下げる
- 段取り・調整ロス → 時間稼働率を下げる
- 刃具交換ロス → 時間稼働率を下げる
- 立上がりロス → 時間稼働率を下げる
- SD (シャットダウン) ロス → 時間稼働率を下げる
- チョコ停・空転ロス → 性能稼働率を下げる
- 速度低下ロス → 性能稼働率を下げる
- 不良・手直しロス → 良品率を下げる
人の5大ロス × 工数概念
- 管理ロス → 正味作業工数を下げる
- 動作ロス → 正味作業工数を下げる
- 編成ロス → 有効工数を下げる
- 自動化置換ロス → 有効工数を下げる
- 測定調整ロス → 価値工数を下げる
原単位の3大ロス × 削減率
- 歩留まりロス → 歩留まり向上率
- エネルギーロス → エネルギー削減率
- 型・治工具ロス → 型・治工具ロス削減率
このマップを手元に置いておけば、「いま追っているロスは、どの式で数字化できるか」が一瞬で引けます。実際にロスを潰しに行く現場活動は ▶ 自主保全活動の進め方 にまとめています。組織として継続させるしくみは ▶ 製造業の人と組織マネジメント 完全ガイド も参考になります。
まとめ
記事のまとめです。
- ロスは計算で「数字」に変えられる。数字化のメリットは説得・比較・Before-Afterの3つ
- 計算は「人・設備・原単位」の3軸。それぞれが16大ロスの3層に対応している
- 設備の核は OEE = 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率。世界ベンチマークは 85%
- 時間稼働率は止まる系ロス、性能稼働率は動いているのにロス系、良品率は不良ロスを映す
- 人の効率化は5つの工数概念を経由して「総合能率」「省人化率」で表す
- 原単位は歩留まり・エネルギー・型治工具の削減率。金額換算しやすく経営層に響く
- 16大ロスと計算式の対応マップを手元に置けば、追っているロスから即座に式が引ける
ロス改善の計算について解説しました。
計算式は丸暗記する必要はありません。「いま追っているロスはどの軸か」を見極めて、必要な式を都度引きにいく ── それで十分なのです。そんなわたしも、現場に入った頃は式の使い分けに苦労しましたが、ロス → 式の対応マップを1枚作ってからは迷わなくなりました。コツコツと積み上げて活動を進めていきましょう。


