工場で必要な技術・技能伝承とは? 第十一回

仕事の基本

技能伝承ってどんなこと?

そんな疑問に答える「技術・技能伝承の第十一回」です。

☑記事の内容

  1. 技術・技能伝承で「教える側」が注意すべきこと
  2. 技術・技能伝承で「教わる側」が注意すべきこと

私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。

そんな私が解説します。

技術・技能伝承で「教える側」が注意すべきこと

  • 対象者の技能、教える技術を明確にする
  • 作業の性質を考えて層別して考える

対象者の技能、教える技術を明確にする

教える側がまず最初に行うべきことは学習者の技能を明確にすることです。

教える技術・技能につての経験や知識はどの程度あるのか?現場の経験や知識はどの程度あるのか?などを詳細に把握することが必要です。

初心者に近い学習者へ教える場合では職場内で当たり前のように使う「専門用語」や「業界用語」「社内用語」についての説明から始める必要もあります。

また、実際の作業を教える際も、「知っていて当たり前」「できて当たり前」の知識、技能についても保有しているか確認しながら進めいていく必要があります。

このような初心者への技術・技能伝承には「読めばわかる」技術・技能伝承マニュアルの整備が不可欠です。しかしながら、読めばわかるマニュアルの整備は高難易度となります。

経験が豊富な学習者へ教える場合は「専門用語」や「業界用語」などにも知識と理解があるため大雑把な伝え方でも意思疎通が可能です。

実際の作業を教える際にも基本的な知識や技能が備わっているため、具体的な手順と的確なポイントを伝えるだけで教育が進みます。

このような経験が豊富な学習者を対象にした技術・技能伝承マニュアルは必要なことに絞ったもので十分です。初心者向けのマニュアルのように詳細まで作りこんでしまうと「知っていることばかり」となってしまいマニュアルが活用されない恐れがあるからです。

作業の性質を考えて層別して考える

工場や製造現場には数多くの技術・技能伝承すべき仕事や作業があります。そのすべてについて詳細な技術・技能伝承マニュアルを作成しては膨大な時間とコストがかかります。

効率的に技術・技能伝承マニュアルを作成するために作業の性質によって4つに層別して考えます。伝承の難易度、習得の難易度によって以下のように層別します。

  1. 伝承→簡単 習得→簡単
  2. 伝承→簡単 習得→困難
  3. 伝承→困難 習得→簡単
  4. 伝承→困難 習得→簡単

伝承→簡単 習得→簡単

「何かをとって、指定された場所に置く」といったすぐにできる作業等のことです。作業にカン・コツが少なく、技術・技能伝承が容易です。

このような作業は工場や現場多く存在しますが、その作業すべてをマニュアル化する必要はありません。

なぜならそのマニュアル作成には膨大な工数がかかるからです。その工数に圧迫されて習得が困難な技術・技能のマニュアル作成に取り掛かる前に力尽きてしまいます。

伝承→簡単 習得→困難

「検査等の作業の基準が明確であり教えることは簡単だがその作業を正確に行うことが難しい」といった作業です。

作業のやり方にカン・コツがあるが明文化されていな場合や判断基準があいまいな場合があります。そのような場合はその暗黙知の部分を明確する技術・技能伝承マニュアルの整備を進めます。

暗黙知の部分が明確になればこの層の作業は早期の取得が可能になるため技術・技能伝承マニュアルの整備を進めていきます。

伝承→困難 習得→簡単

「加工作業に代表されるような作業のカン・コツが多く含まれるが、それを具体的に説明できれば習得が簡単」といった作業です。

これらの作業は技術・技能伝承マニュアルの整備時に、熟練者の作業観察やヒヤリングを経てわかりやすく的確に明文化していきます。

イラストや勘所を動画で表現するなどの工夫を行い、確実な技術・技能伝承を目指します。

伝承→困難 習得→簡単

唯一無二の職人技が求められられるもので代表的なものは「ぎょう鉄における焼き曲げ加工」や「きさげ作業」などです。

このような作業は暗黙知の洗い出しが重要な課題になってきます。

技術・技能伝承で「教わる側」が注意すべきこと

  • 指示された通りのことを行う
  • 技術・技能伝承マニュアルは声に出して読む

指示された通りのことを行う

技術・技能伝承で教わる側が特に注意すべきことは「指示されたと売りのことを行う」です。作業は指示通りに、技術・技能伝承マニュアルや標準作業書があれば一字一句違わずに行うということです。

指示通りに「何も足さず」「何も引かず」の作業を行いうまくいかないことがあります。その場合は作業する上でのカン・コツが抜けていることが考えられます。

カン・コツの抜けがあれば教わる側が指示通りの作業を行ってもうまくいきません。こういった場合は教わる側は忖度せずに質問することが大切です。熟練者は学習者が理解できるようかみ砕いて教える必要があります。

技術・技能伝承マニュアルは声に出して読む

教わる側は技術・技能伝承マニュアルは声に出して読むことを心掛けましょう。

書かれていることを黙読すると理解できたような気になりますが、本当に理解したいのであれば声に出して読みべきです。

なぜなら、曖昧や分かりにくい部分は声に出してにも読みにくいものです。この読みにくい箇所を「これはどういうことですか?」と聞き出すきっかけになります。

まとめ 

記事のまとめです。

  1. 技術・技能伝承で「教える側」が注意すべきこと
    1. 誰に何を教えるのか明確化する
    2. 作業の性質を考えて層別する
  2. 技術・技能伝承で「教わる側」が注意すべきこと
    1. 指示された通りのことを行う
    2. 技術・技能伝承マニュアル等は声に出して読む

技術・技能伝承の中で教わる教える側の注意点について解説しました。

「教える側」「教わる側」ともに注意をして行うことがスムースな技術・技能伝承につながります。