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最終更新: 2026-07-14

💬 「品質にお金をかけろ」と言われるけど、品質にわざわざコストをかけるのって、ムダなんじゃないの、、、?

💬 ウチの会社、品質のために結局いくら使っているのか、正直まったく分からないんだよなぁ、、、。

💬 検査を増やせば不良は出さずに済むけど、そのぶん人手もお金もかかる。どこまでやればいいのか、、、。

そんな『品質コストの考え方』についての悩みにお答えします。

目次

☑ 記事の内容

  1. そもそも 品質コストとは何か (品質を「お金」で語る物差し) と、なぜお金で見るのか
  2. 品質コストの 3 分類 ── 予防コスト・評価コスト・失敗コスト (失敗は内部と外部)
  3. 見える失敗コストと見えない失敗コスト (氷山の一角)
  4. 予防に先手を打つほど総品質コストは下がる (予防投資 → 失敗損失の削減) と、中小製造業がまず何から数字にするか
  5. 品質コストと QCD の「C」・原価低減 のつながり / Q&A

わたしは自動車メーカーの工場で改善活動の指導を 10 年以上行ってきました。実績を金額に換算すると 1 億円以上の改善を行ってきた、いわゆる改善のプロです。今は中小企業診断士として、中小製造業の現場改善や原価管理のお手伝いをしています。その中で、「品質にお金をかけるのはムダだ」と考えていたり、「品質のために結局いくら使っているのか分からない」まま日々を回していたりする会社に、本当に数多く出会ってきました。ですが、品質は「良い・悪い」だけでなく「お金」でも語れます。品質にかかる費用を「予防・評価・失敗」という物差しで見ると、どこに手を打てばいちばん得なのかが見えてきます。わたしは自動車工場の現場で、不良を出さない工夫に少し先手を打つだけで、後からかかっていた大きな損失がごっそり減る場面を、何度も見てきました。本記事では、その「品質コストの考え方」を、順番に整理していきます。

そんなわたしが解説していきます。

本記事は 品質コストの 3 分類(予防・評価・失敗)と、品質を「お金」で語る考え方 を、はじめての方に向けてやさしくまとめた内容です。品質コストだけでなく、品質管理・検査・不良対策まで含めた全体像から知りたい方は、まずまとめ記事 ▶ 品質管理・品質保証 完全ガイド を読んでください。また、品質コストは原価(コスト)の話でもあるので、▶ 原価計算の基礎 で「原価が何で成り立っているか」を先につかんでおくと、この記事が頭に入りやすくなります。

品質コストとは ── 品質を「お金」で語るための物差し

まず、「品質コスト」という言葉が何を指すのか、というところから始めます。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は多くの会社が、気づかないうちにたくさんの品質コストを払っています。ここで整理しておきましょう。

品質コストとは ── 品質を保つため + 崩れたときにかかる費用の総称

品質コストとは、品質を保つためにかける費用と、品質が崩れたときにかかってしまう費用を、まとめて捉えた考え方 のことです。英語では Cost of Quality(コスト・オブ・クオリティ)といい、頭文字をとって COQ と呼ぶこともあります。

ここで大事なのは、「品質コスト」には 2 つの向きがある、ということです。1 つは、良い品を作るために 前もってかける費用(教育・確認・検査など)。もう 1 つは、不良が出てしまったために 後からかかってしまう損失(作り直し・クレーム対応など)です。この両方をひとまとめにして「品質にまつわるお金」として見よう、というのが品質コストの発想です。

なぜ品質を「お金」で見るのか ── 現場の言葉を経営の言葉に翻訳する

では、なぜわざわざ品質を「お金」で見る必要があるのでしょうか。それは、現場の言葉(不良が多い・手直しが大変)を、経営の言葉(いくら損しているか)に翻訳できる からです。

「不良が多くて困っている」と言われても、経営者にはその深刻さがピンと来ないことがあります。ですが、「その不良のせいで、毎月これくらいの費用が消えています」と金額で示せば、話は一気に伝わります。品質を「良い・悪い」だけで語ると、どうしても現場の主観になりがちです。品質コストという物差しを使えば、品質の問題を、誰もが同じ土俵で判断できる「お金」の話にできるのです。品質そのものの考え方(良い品を工程で作り込むこと)については、▶ 品質管理とは で解説していますので、あわせて読むと、品質と原価のつながりが見えてきます。

「品質はタダではない、しかし不良はもっと高くつく」

品質コストの世界には、昔からよく知られた言葉があります。「品質はタダではない、しかし不良はもっと高くつく」 という言葉です。

良い品を安定して作るには、教育や確認など、それなりの手間とお金がかかります。品質はタダでは手に入りません。ですが、それを惜しんで不良を出してしまうと、作り直し・クレーム・信頼の低下といった、もっと大きな損失を払うことになります。つまり、品質にかけるお金を惜しむほど、失敗による損失のほうがふくらんでいく のです。品質コストの考え方は、この「どちらにお金を使うほうが得か」を見極めるための道具だと考えてください。

品質コストの 3 分類 ── 予防・評価・失敗

品質コストは、大きく 3 つ(細かく分けると 4 つ)に分類 して考えます。これが品質コストの土台になる考え方です。まずは下の図で、「品質コスト」という 1 本の木が、予防・評価・失敗の 3 つの枝に分かれ、失敗はさらに内部と外部に分かれる様子をつかんでください。

品質コストの 3 分類 ── 予防・評価・失敗

品質コスト (かかる費用の総額)

① 予防コスト 不良を「出さない」投資 標準づくり・教育・ 治具・設計の作り込み

② 評価コスト 品質を「確かめる」費用 検査・測定・試験・ 受け入れ確認

③ 失敗コスト 品質が「崩れた」損失 不良が出たために 後からかかる費用

内部失敗 出荷前に発見 手直し・廃棄

外部失敗 客先で発見 クレーム・返品

予防・評価 = 品質を守るための「攻め」の費用 / 失敗 = 守りきれなかった「損失」

予防コストとは ── 不良を「出さない」ための投資

1 つ目は予防コストです。予防コストは、そもそも不良を出さないように、前もってかける費用 です。

たとえば、作業のやり方を標準にまとめる、作業者を教育する、間違えにくい治具(じぐ)や仕掛けを用意する、設計の段階で作りやすさや品質を作り込む ── こうした「不良の芽を先につぶす」ための費用が予防コストです。ポイントは、これは ムダな出費ではなく「投資」 だということです。予防にかけたお金は、後で見る失敗コストを大きく減らすための先行投資なのです。この点は、後の章でくわしく見ていきます。

評価コストとは ── 品質を「確かめる」費用

2 つ目は評価コストです。評価コストは、作った品が良品かどうかを確かめるためにかける費用 です。

検査・測定・試験、材料の受け入れ確認、出荷前のチェックなど、「品質を確かめる」ための人手や設備・時間が、これにあたります。評価コストは、不良を外に出さないために欠かせない費用です。ただし注意したいのは、検査(評価)をどれだけ増やしても、それだけでは不良そのものは減らない ということです。検査は「見つけてはじく」だけで、作り込みの弱さを直すわけではないからです。検査の位置づけや基本の進め方は ▶ 検査の基本 で解説していますので、評価コストの中身を具体的に知りたい方はあわせて読んでみてください。

失敗コストとは ── 品質が「崩れた」ときの損失

3 つ目は失敗コストです。失敗コストは、不良が出てしまったために、後からかかってしまう損失 です。3 つの中で、いちばんやっかいで、いちばん大きくなりがちなのがこの失敗コストです。

失敗コストは、その不良が「いつ・どこで見つかったか」で、さらに 2 つに分かれます。出荷する前に社内で見つかった場合の 内部失敗コスト と、お客さまのところまで届いてから見つかった場合の 外部失敗コスト です。この 2 つは、性質も金額の大きさもまるで違います。次の章で、くわしく分けて見ていきましょう。

3 分類は「攻めの費用」と「守りきれなかった損失」

ここまでの 3 つを、大きくまとめておきます。予防・評価は「品質を守るための攻めの費用」、失敗は「守りきれなかった損失」 です。

予防コストと評価コストは、良い品質を保つために自分から進んでかける「攻め」の費用です。一方、失敗コストは、品質を守りきれず、不良を出してしまった結果として払わされる「損失」です。同じ「品質にまつわるお金」でも、この 2 つは意味がまったく違います。品質コストを考えるときは、攻めの費用(予防・評価)を賢く使って、損失(失敗)をいかに小さくするか という視点で見ることが大切です。

失敗コストの内訳 ── 内部失敗と外部失敗

3 分類の中でも、経営に大きく効いてくるのが失敗コストです。ここでは、その失敗コストを「内部失敗」と「外部失敗」に分けて、それぞれの中身を見ていきます。この 2 つの違いを押さえると、「なぜ早く不良を止めることが大事か」がはっきり見えてきます。

内部失敗コスト ── 出荷前に社内で見つかった不良

まず内部失敗コストです。内部失敗コストは、製品を出荷する前に、社内で不良が見つかったときにかかる損失 です。

具体的には、不良品を作り直す材料費、手直しにかかる人件費、直せないものを捨てる廃棄の損失、もう一度確かめるための再検査の手間などです。たとえば、ある部品加工の現場では、寸法のバラつきで一定数の手直しが毎日発生し、そのぶんの人手が本来の生産から取られていました。これはすべて、本来なら払わなくてよかった費用です。ただ、内部失敗は「社内で止められた」ぶん、まだ傷が浅いとも言えます。本当に怖いのは、この先の外部失敗です。

外部失敗コスト ── お客さまに届いてから見つかった不良

次に外部失敗コストです。外部失敗コストは、不良がお客さまのところまで届いてしまってから見つかったときにかかる損失 です。品質コストの中で、最も大きく、最も痛いのがこれです。

具体的には、クレームへの対応、返品や交換、回収、値引きやおわびの費用 ── そして何より、お客さまの信頼を失う という損失です。一度出た不良品を回収し、代わりの品を作って届け直すには、内部失敗とは比べものにならない手間とお金がかかります。しかも、失った信頼は簡単には戻りません。この外部失敗コストの最たるものが「クレーム」であり、その対応と再発防止の進め方は ▶ クレーム対応と再発防止 で詳しく解説する予定です。外部失敗をどう減らすかは、品質コストを下げるうえで最重要のテーマです。

外部失敗は内部失敗よりずっと高くつく

この 2 つを比べると、大事な原則が見えてきます。同じ不良でも、見つかるのが遅い(お客さまに近い)ほど、損失は大きくなる ということです。

工程の途中で見つかれば、その場で直すだけで済みます。出荷検査で見つかれば、社内で作り直せば済みます。ですが、お客さまに届いてから見つかれば、回収・交換・信頼の低下まで、損失が一気にふくらみます。よく「不良は下流に流れるほど高くつく」と言われるのは、このためです。だからこそ、不良はできるだけ上流(手前の工程)で止める ことが、失敗コストを抑える鍵になります。不良を早く・確実に減らしていく具体的な進め方は ▶ 不良を減らす進め方 で解説していますので、あわせて読んでみてください。

見える失敗コストと見えない失敗コスト ── 氷山の一角

失敗コストには、もう 1 つ、ぜひ知っておいてほしい大事な性質があります。それは、私たちが「見えている」失敗コストは、実はほんの一部にすぎない ということです。多くの失敗コストは、帳簿に出てこない形で、水面下に隠れています。まずは下の図で、失敗コストを「氷山」にたとえたイメージをつかんでください。

失敗コストは氷山 ── 見えているのは一角

水面(=帳簿に出る線)

見える失敗コスト 手直し・廃棄・返品 (帳簿に出る)

見えない失敗コスト 信用の低下・失注 リピート・紹介の減少 対応に取られた時間 現場の士気の低下 (帳簿に出にくい) = 失敗コストの大半

予防に先手

氷山ごと 小さくなる

※ 帳簿に出る失敗コストは氷山の一角。水面下の「見えない損失」まで含めて考える

見える失敗コスト ── 帳簿に出る手直し・廃棄・返品

まず、目に見える失敗コストです。見える失敗コストとは、手直し・廃棄・返品など、金額としてはっきり数えられる損失 です。

作り直しにかかった材料費、廃棄した品の損失、返品の送料や交換費用 ── これらは、帳簿や記録をたどれば「いくらかかったか」を数字にできます。氷山でいえば、水面から上に出ている部分です。多くの会社が「品質コスト」としてイメージするのは、たいていこの見える部分だけです。ですが、失敗コストの本当の怖さは、水面の下にあります。

見えない失敗コスト ── 信用低下・失注・士気の低下

次に、目に見えにくい失敗コストです。見えない失敗コストとは、信用の低下・失注・現場の士気の低下など、金額にしにくいけれど確かに存在する損失 です。

不良を出したことでお客さまの信頼が下がり、次の注文が減る。悪い評判が広がって、新しい取引の機会を逃す。クレーム対応に追われて、本来の仕事が止まる。「またやり直しか」と現場の士気が下がる ── こうした損失は、帳簿には「品質コスト」として出てきません。ですが、実際には会社に大きなダメージを与えています。氷山でいえば、水面の下に隠れた、いちばん大きな部分です。そして多くの場合、この見えない部分のほうが、見える部分よりずっと大きい のです。

だから「見えている失敗コスト」は氷山の一角と考える

ここから、大事な心構えが導けます。帳簿に出ている失敗コストは、氷山の一角にすぎないと考える ことです。

「手直し費用はこれくらいだから、たいした損ではない」と思っていると、水面下の大きな損失を見落とします。実際の失敗コストは、目に見える金額の何倍にもなっている、と考えておくくらいがちょうどよいのです。見えない失敗コストを、無理に正確な金額にする必要はありません。大切なのは、「見えている損失の下に、もっと大きな損失が隠れている」と意識すること です。そう考えれば、不良を出さないための予防に、先手を打つ価値が見えてきます。

予防に先手を打つほど総品質コストは下がる

ここが、品質コストの考え方でいちばん大事なところです。予防に先手を打つほど、品質にかかるお金の合計(総品質コスト)は下がっていく のです。「品質にお金をかけると、その分だけコストが増える」と思われがちですが、実際は逆になります。なぜそうなるのか、順を追って見ていきましょう。

総品質コスト = 予防 + 評価 + 失敗 の合計

まず、言葉を整理します。総品質コストとは、予防コスト・評価コスト・失敗コストをすべて足し合わせた、品質にまつわる費用の合計 です。

会社が品質のために払っているお金は、この 3 つ(失敗を内部・外部に分ければ 4 つ)の合計です。品質コストを下げるというのは、どれか 1 つを削ることではなく、この合計をいちばん小さくする組み合わせを探すこと です。そして、その鍵をにぎるのが、予防コストの使い方です。

予防を増やすと失敗コストが大きく減る ── 逆転を狙う

次に、3 つの関係を見ます。予防コストを増やすと、失敗コストが大きく減っていきます

作業を標準にする、教育をする、間違えにくい仕掛けを作る ── こうした予防にお金をかけると、そもそも不良が出にくくなります。不良が減れば、手直し・廃棄・クレームといった失敗コストが減ります。ここで大事なのは、予防にかけるお金より、減る失敗コストのほうが大きい という点です。少しの予防投資が、大きな失敗損失を防ぐ。この「逆転」を狙うのが、品質コストの考え方の核心です。一般的な傾向として、不良を後で手直しするより、最初から出さないほうが安く済むと言われています(どれくらい差が出るかは、業種や品物、管理のレベルによって変わります)。

総品質コストは下がっていく

この関係を合計で見ると、こうなります。予防に先手を打つと、予防コストは少し増えるが、失敗コストがそれ以上に減るので、総品質コストは下がる のです。

先ほどの氷山の図を思い出してください。予防に先手を打つことは、氷山(失敗コスト)そのものを、水面下の見えない部分ごと小さくすることです。目先では「予防にお金をかけた」ぶんコストが増えたように見えても、後からかかっていたはずの大きな失敗損失が消えるので、トータルでは得をします。品質にお金をかけることは、支出ではなく、もっと大きな損失を防ぐ投資 なのです。

検査(評価)を増やすだけでは総コストは下がらない ── 予防が本命

ここで、よくある勘違いを 1 つ正しておきます。検査(評価コスト)を増やすだけでは、総品質コストは下がりません

「不良を出さないために検査を増やそう」と考える会社は多いです。たしかに検査を増やせば、不良を外に出すことは減ります。ですが、検査は「見つけてはじく」だけで、不良そのものを減らすわけではありません。検査を増やせば評価コストが増え、はじいた不良は失敗コスト(手直し・廃棄)になります。つまり、評価を増やしても、評価コストと失敗コストが両方かさむだけ になりがちなのです。本当に総品質コストを下げたいなら、増やすべきは検査(評価)ではなく、不良を出さない予防です。不良を根本から減らす進め方は ▶ 不良を減らす進め方 で解説していますので、予防に本気で取り組みたい方は、そちらを土台にしてください。

中小製造業がまず何から数字にするか

「品質コストが大事なのは分かった。でも、ウチの会社で品質コストを全部きっちり数えるなんて、とても無理だ」── そう感じる方も多いはずです。ご安心ください。最初から完璧に数える必要はありません。ここでは、中小製造業が現実的に「何から数字にするか」を整理します。

いきなり全部は数えない ── まず失敗コストの「見える分」から

まず大前提です。品質コストを、いきなり 4 分類すべてきっちり計算しようとしないこと。ここでつまずく会社がとても多いです。

予防コストや見えない失敗コストまで正確に数えようとすると、手間がかかりすぎて、たいてい途中で挫折します。そうではなく、まずは いちばん効果が見えやすい「失敗コストの、見える分」から 数字にするのが現実的です。手直し・廃棄・返品といった、記録をたどれば数えられるものから始めれば、大きな手間なく「品質でいくら損しているか」の入口がつかめます。

手直し・廃棄・返品の 3 つを月単位でざっくり拾う

では、具体的に何を拾うか。おすすめは、「手直し」「廃棄」「返品」の 3 つを、月ごとにざっくり集計する ことです。

1 円単位で正確に、と気負う必要はありません。「今月、手直しにおおよそ何時間かかったか」「廃棄した品はおおよそいくら分か」「返品・クレーム対応はおおよそ何件・どれくらいか」── この程度のざっくりした数字でも、毎月続けて見れば、品質の問題がどれだけお金に効いているかが見えてきます。大事なのは正確さより、「感覚」を「おおよその金額」に置き換えて、毎月定点で見ること です。

「数字にする」だけで打ち手が変わる

そして、ここがいちばん伝えたいことです。ざっくりでも数字にするだけで、打ち手が変わります

「不良が多くて困る」という感覚のままでは、優先順位がつけられません。ですが、「手直しに毎月これくらいの費用がかかっている」と分かれば、「では、その原因の上位から予防に手を打とう」と、具体的な行動につながります。数字は、現場と経営の共通言語です。品質コストを数字にする第一歩として、そもそも自社の原価がどんな費用で成り立っているかを知っておくと、拾った品質コストの意味がつかみやすくなります。原価の中身は ▶ 原価計算の基礎 で解説していますので、あわせて読んでみてください。

品質コストと QCD・原価低減のつながり

最後に、品質コストを大きな地図の中に置いておきましょう。品質コストは、品質(Q)の話であると同時に、コスト(C)= 原価の話でもあります。ここで、品質コストが QCD や原価低減とどうつながるかを整理します。

品質コストは QCD の「C」の中身

まず、QCD とのつながりです。品質コストは、QCD(品質・コスト・納期)の「C(コスト)」の中に含まれる、大事な中身の 1 つ です。

ものづくりでは、品質(Q)・コスト(C)・納期(D)の 3 つを同時に満たすことが求められます。この「C」の中には、材料費や労務費だけでなく、不良による失敗コストも含まれています。つまり、失敗コストを減らすことは、そのまま「C」を良くすること(コストダウン)につながるのです。QCD の 3 つは切り離せず、品質を良くすればコストも良くなる関係については、▶ QCD(品質・コスト・納期) でくわしく解説していますので、あわせて読むと、品質コストの位置づけがはっきりします。

品質を上げる(不良を減らす)ことが原価低減になる

次に、原価低減とのつながりです。不良を減らして失敗コストを減らすことは、そのまま原価を下げること(原価低減)になります

原価を下げるというと、材料を安く買う、工程を削る、といった話を思い浮かべがちです。ですが、それらは品質を落とすリスクと隣り合わせです。一方、不良を減らして失敗コストを消す原価低減は、品質を落とすどころか高めながらコストを下げられる、いちばん筋の良いやり方です。実際に原価を下げていく進め方は ▶ 原価低減の進め方 で解説していますので、品質コストの削減を原価低減につなげたい方は、そちらも読んでみてください。

品質と原価は、同じコインの裏表

ここまでをまとめると、1 つの結論にたどり着きます。品質と原価は、対立するものではなく、同じコインの裏表 だということです。

「品質を上げるとコストが上がる」という思い込みを持っていると、品質と原価は敵同士に見えます。ですが、品質コストの視点で見れば、品質を上げる(不良を減らす)ことが、そのまま原価を下げる のです。予防に先手を打ち、失敗コストを消していく ── これは、品質を守る活動であると同時に、利益を残す活動でもあります。品質と原価を別々に考えるのをやめ、1 枚のコインとして見ること。それが、品質コストの考え方が教えてくれる、いちばん大切な視点です。

よくある質問 Q&A

Q1: 品質コストは、売上の何%くらいが目安ですか?

ひとことで「何%」と言い切れる決まった目安はありません。品質コストが売上に占める割合は、業種・製品の性質・管理のレベルによって大きく変わるからです。一般的な傾向として、品質管理が未整備な会社ほど失敗コストの割合が大きく、予防・評価に力を入れている会社ほどその割合は小さくなる、と言われています。他社の数字と比べることより、まずは自社の失敗コストを毎月定点で見て、それが減っているかを追うほうが役に立ちます。詳しくは「中小製造業がまず何から数字にするか」の章で解説しています。

Q2: 予防コストと評価コスト、どちらを優先すべきですか?

本命は予防コストです。評価(検査)を増やしても、不良を「見つけてはじく」だけで、不良そのものは減りません。一方、予防に先手を打てば、そもそも不良が出にくくなり、失敗コストが根本から減ります。もちろん評価もゼロにはできませんが、力の入れどころは予防に置くのが、総品質コストを下げる近道です。予防の具体的な取り組み(不良を減らす進め方)は ▶ 不良を減らす進め方 で解説しています。詳しくは「予防に先手を打つほど総品質コストは下がる」の章で解説しています。

Q3: 検査を増やせば、品質コストは下がりますか?

検査(評価コスト)を増やすだけでは、品質コストは下がりません。検査を増やすと評価コストが増え、はじいた不良は手直し・廃棄という失敗コストになるため、両方がかさむだけになりがちです。検査は不良を外に出さないためには必要ですが、それは「見つけてはじく」活動であって、不良を減らす活動ではありません。総品質コストを下げたいなら、増やすべきは検査ではなく予防です。検査の位置づけは ▶ 検査の基本 で解説しています。

Q4: 中小の現場は、品質コストを何から数字にすればいいですか?

まずは失敗コストの「見える分」= 手直し・廃棄・返品の 3 つを、月単位でざっくり拾うところから始めます。いきなり 4 分類すべてを正確に数えようとすると、手間がかかりすぎて挫折しがちです。1 円単位の正確さより、「おおよその金額を毎月続けて見ること」のほうが大切です。ざっくりでも数字にすれば、どこから予防に手を打つべきかが見えてきます。詳しくは「中小製造業がまず何から数字にするか」の章で解説しています。

Q5: 見えない失敗コスト(信用低下など)は、どう扱えばいいですか?

無理に正確な金額にしなくてかまいません。「存在する」と意識するだけで十分です。信用の低下や失注、現場の士気の低下といった損失は、帳簿には出てきませんが、実際には見える失敗コストよりずっと大きいことが多いものです。正確に数えることより、「見えている損失の下に、もっと大きな損失が隠れている」と考えることが大切です。そう意識すれば、予防に先手を打つ価値が実感できます。詳しくは「見える失敗コストと見えない失敗コスト」の章で解説しています。

Q6: 品質コストと原価管理は、どうつながっていますか?

品質コスト(特に失敗コスト)は、原価の中に含まれています。不良による手直し・廃棄・クレーム対応は、すべて原価を押し上げる費用です。ですから、失敗コストを減らすことは、そのまま原価を下げること(原価低減)になります。まず自社の原価の中身を ▶ 原価計算の基礎 でつかみ、そのうえで ▶ 原価低減の進め方 に進むと、品質と原価が 1 本の線でつながります。詳しくは「品質コストと QCD・原価低減のつながり」の章で解説しています。

まとめ

本記事で押さえてほしい 3 行サマリーは以下の通りです。

  1. 品質コスト は、品質を「お金」で語る物差し。予防コスト(出さない投資)・評価コスト(確かめる費用)・失敗コスト(崩れた損失=内部/外部) の 3 分類で見る
  2. 失敗コストは 氷山 ── 帳簿に出る手直し・廃棄・返品は一角で、信用低下・失注・士気の低下といった「見えない失敗コスト」が水面下の大半を占める
  3. 予防に先手を打つほど、失敗コストが大きく減り、総品質コストは下がる。検査(評価)を増やすだけでは下がらない。品質と原価は、同じコインの裏表

品質コストの考え方について解説しました。大事なのは、「品質にお金をかけるのはムダ」という思い込みを手放すことです。品質にかけるお金は支出ではなく、後からかかるもっと大きな失敗損失を防ぐ「投資」です。まずは、手直し・廃棄・返品という失敗コストの見える分を、月単位でざっくり数字にするところから始めてみてください。数字にすれば打ち手が変わり、予防に先手を打つほど、品質も利益も、いっしょに良くなっていきます。品質と原価は、対立するものではなく、同じコインの裏表なのです。

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