最終更新: 2026-07-13
💬 「コストを下げろ」と言われても、いったい何から手を付ければいいのか分からない、、、?
💬 削れるところは、もう削り尽くした気がするんだよなぁ、、、。
💬 かといって、値上げやお客さまへの交渉は言い出しにくい、、、。
そんな『原価低減の進め方』についての悩みにお答えします。
☑ 記事の内容
- そもそも 原価低減とは何か (原価企画・原価維持・原価改善の違い)
- どこにコストが潜むか と、原価低減の 6 つの着眼点 (材料・工数・不良・在庫・段取・エネルギー)
- 改善活動との連動 と、原価低減の 進め方 5 ステップ
- 「買いたたき」の罠 と、品質・コスト・納期 (QCD) のバランス
- つまずきやすい点 / Q&A
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を 10 年以上行ってきました。実績を金額に換算すると 1 億円以上の改善を行ってきた、いわゆる改善のプロです。今は中小企業診断士として、私は中小製造業の現場改善や原価管理のお手伝いをしています。その中で、「コストを下げたいのに、何から手を付ければいいのか分からない」「削れるものはもう削った、と行き詰まっている」という現場に、本当に数多く出会ってきました。原価低減は、やみくもに削る作業ではありません。どこにコストが潜んでいるかを見つけ、着眼点を決め、進め方の型に沿って回していく── そうすれば、行き詰まっていた現場でも、まだ下げられる余地が見えてきます。本記事では、私がふだん現場で使っている原価低減の考え方と進め方を、そのまま順番に整理していきます。
そんなわたしが解説していきます。
本記事は、見えた原価をどう下げるか (原価低減・コストダウンの進め方) にしぼってまとめた内容です。その前提として、「原価がどんな費用で成り立っていて、どう計算するか」という基礎は ▶ 原価計算の基礎 にまとめています。まだ自社の原価をつかめていない方は、先にそちらを読むと、本記事が頭に入りやすくなります。また、原価だけでなく生産計画・在庫・工程管理まで含めた全体像から知りたい方は、まずまとめ記事 ▶ 中小製造業の生産管理・原価管理 完全ガイド を読んでください。
原価低減とは ── 「原価企画・原価維持・原価改善」の 3 つを整理する
まず、「原価低減」という言葉を整理するところから始めます。ひとことで原価低減と言っても、実は タイミングの違う 3 つの活動 がまとめて含まれています。この 3 つを分けて考えると、自分が今どの活動をしようとしているのかが、はっきりします。
原価低減は 3 つの活動の総称
原価低減とは、製品にかかる原価を下げるための取り組み全体 を指す言葉です。そして、その中身は次の 3 つに分けられます。
- 原価企画 ── 製品を 作る前 (設計・開発の段階) で、目標の原価を作り込むこと
- 原価維持 ── いったん決めた原価を、作りながら保つ こと (悪化させない)
- 原価改善 ── すでに作っているもの の原価を、現場の工夫で下げていくこと
つまり原価低減は、「作る前・保つ・下げる」という 3 つの局面をまたいだ活動の総称です。同じ「原価を下げる」でも、どの局面で手を打つかで、やることがまるで違います。
原価企画とは ── 作る前に原価を「作り込む」
原価企画とは、製品を設計・開発する段階で、目標とする原価を先に決めて、それに収まるように作り込んでいくこと です。
よく言われるのが、「原価の大部分は、設計の段階で決まってしまう」ということです。どんな材料を使うか、どんな構造にするか、どんな工程で作るかは、たいてい設計で決まります。作り始めてから下げられる余地は、実はそれほど大きくありません。ですから、下げしろがいちばん大きいのは、作る前の段階なのです。中小の現場でも、新しい製品や試作の相談を受けたときに「この構造なら、後で作るのが大変そうだ」という視点を持てると、原価企画の入口に立てます。
原価維持とは ── 決めた原価を悪化させない
原価維持とは、いったん決めた原価 (標準) を、日々の生産の中で保ち続けること です。
せっかく良い原価で作れる状態にしても、放っておくと、じわじわ悪化します。材料のロスが増えたり、段取りに時間がかかるようになったり、不良が出やすくなったり── こうした「気づかないうちの悪化」を防ぎ、決めた水準を守るのが原価維持です。標準作業や標準時間を決めて、その通りに作れているかを見ていく取り組みが、これにあたります。標準作業の考え方は ▶ 標準作業とは (IE) で詳しく解説しています。
原価改善とは ── 現場の工夫で今より下げる
原価改善とは、すでに作っている製品の原価を、現場の改善活動で今より下げていくこと です。
本記事の主役は、この原価改善です。材料のムダを減らす、工数 (作業にかかる手間・時間) を減らす、不良を減らす── こうした現場の一つひとつの改善が、積み重なって原価を下げます。原価企画のように大きく下げられるわけではありませんが、今の現場で、今日から手を付けられる のが原価改善の強みです。中小の現場では、まずこの原価改善から入るのが現実的です。
どこにコストが潜むか ── まず「重い費目」を見つける
原価を下げようと思ったとき、いきなり「あれを削ろう、これを削ろう」と動くのは危険です。まず、どこにコストが潜んでいるか (どの費目が重いか) を見つける ことが先決です。ここを飛ばすと、たいして効かないところを一生けんめい削って、疲れるだけに終わります。
「重いところ」から手を付けるのが鉄則
原価低減の鉄則は、金額の大きいところ (重い費目) から手を付ける ことです。
▶ 原価計算の基礎 で見たように、製造原価は「材料費・労務費・経費」の 3 要素でできています。この 3 つのうち、どれがいちばん重いかは、現場によってまったく違います。材料費が原価の大半を占める現場もあれば、人手のかかる作業が中心で労務費が重い現場もあります。まず「うちは何が重いのか」をつかまないと、どこを攻めるべきかは決まりません。
割合の大きい費目ほど、下げたときの効果が大きい
なぜ重い費目から狙うのか。理由はシンプルで、割合の大きい費目を少し下げるほうが、割合の小さい費目をがんばって下げるより、効きが大きい からです。
考え方を算式でつかんでおきましょう。
その費目の削減効果 = 元の金額 × 下げられる割合
同じ「1 割下げる」でも、元の金額が大きい費目ほど、下がる金額は大きくなります。ですから、原価の中で大きな割合を占める費目を先に狙うのが、効率のよい進め方です。逆に、金額の小さい費目を必死に削っても、全体への効きは限られます。まずは「どこが大きいか」を見て、狙いを定めてください。
「見えていないコスト」に注意する
もう一つ大事なのが、表に出ていないコスト (見えにくいコスト) です。
材料費のように、伝票に金額がはっきり出る費用は、まだ気づきやすいものです。やっかいなのは、不良で捨てた材料、手待ちで遊んでいた時間、余分に持っている在庫の維持費など、「損なのに、金額として見えにくいコスト」です。これらは、意識して探しにいかないと、原価の中に埋もれたままになります。次の章で紹介する着眼点は、この「見えにくいコスト」をあぶり出すための視点でもあります。
原価低減の 6 つの着眼点 ── 材料・工数・不良・在庫・段取・エネルギー
重い費目が見えたら、次は「どこを、どう下げるか」です。ここでは、中小製造業の現場でよく効く 6 つの着眼点 を紹介します。この 6 つを順に自社に当てはめていくと、下げる的が見つかりやすくなります。
6 つの着眼点 (早見)
原価低減でよく効く着眼点は、次の 6 つです。
| # | 着眼点 | 何を減らすか | 考え方の一言 |
|---|---|---|---|
| ① | 材料 | 材料のムダ・ロス | 歩留まり (使えた割合) を上げる |
| ② | 工数 | 作業の手間・時間 | ムダな動き・手待ちを減らす |
| ③ | 不良 | 作り直し・廃棄 | 不良は「二重のコスト」 |
| ④ | 在庫 | 持ちすぎ | 在庫は「寝ているお金」 |
| ⑤ | 段取 | 段取り替えの時間 | 段取りは短くできる |
| ⑥ | エネルギー | 電力・燃料のムダ | 使っていない時間を削る |
「材料・工数・不良・在庫・段取・エネルギー」── この 6 つを、順に見ていきます。
① 材料 ── 歩留まりを上げてロスを減らす
材料の着眼点は、歩留まり (投入した材料のうち、製品になった割合) を上げること です。
材料を切り出すときの端材、寸法をまちがえて使えなくなった分、余分に取りすぎた分── こうした材料のロスは、そのまま原価を押し上げます。取り都合 (材料からの取り方) を工夫する、寸法を見直す、まとめ買いや共通化で単価を見直すなど、着眼のしかたはいくつもあります。材料費が重い現場では、ここが最初の狙い目になります。
② 工数 ── ムダな動き・手待ちを減らす
工数の着眼点は、作業のムダな動きや手待ち (待っているだけの時間) を減らすこと です。
工数とは、作業にかかる人の手間・時間のことです。歩く、探す、運ぶ、待つ── こうした「モノを作っていない時間」は、原価に乗っているのに価値を生みません。動きのムダを減らせば、同じ人数でより多く作れるようになり、製品 1 個あたりの労務費が下がります。ここは現場改善そのものの領域で、標準作業を決めてムダを洗い出す ▶ 標準作業とは (IE) の考え方が、そのまま効いてきます。
③ 不良 ── 不良は「二重のコスト」
不良の着眼点は、不良そのものを減らすこと です。不良は、原価の面から見ると 二重のコスト になっています。
なぜ二重かというと、不良を出すと、まず それを作るのにかけた材料・工数がムダになり、さらに 作り直す (または捨てる) ぶんの材料・工数がもう一度かかるからです。1 回のつもりが、2 回分の費用がかかってしまうのです。ですから、不良を減らすことは、原価低減として非常に効きます。なぜ不良が出るのか、その原因をたどるには、原因を掘り下げる分析が役に立ちます。
④ 在庫 ── 在庫は「寝ているお金」
在庫の着眼点は、持ちすぎている在庫を減らすこと です。在庫は、原価の面では 寝ているお金 です。
材料や仕掛品、製品を在庫として抱えると、それはお金を「モノの形」で持っているのと同じです。使われずに置かれている間、そのお金は働きません。さらに、置き場所の費用、傷んだり古くなったりするリスク、管理の手間もかかります。必要なぶんだけを持つように在庫を見直すと、こうした見えにくいコストが減ります。適正な在庫の考え方は生産管理側のテーマでもあり、まとめ記事から在庫管理の解説にたどれます。
⑤ 段取 ── 段取り替えの時間を短くする
段取の着眼点は、段取り替え (生産する品種を切り替えるための準備) の時間を短くすること です。
段取り替えの間は、機械が止まり、モノが作れません。これも、価値を生まない時間です。段取りに時間がかかると、その間の人と設備の費用が原価に乗るうえ、「段取りが大変だから、まとめて大量に作ろう」となって、今度は在庫が増える原因にもなります。段取りは「短くできるもの」だと考えて、準備を先にすませておく、道具を定位置に置く、といった工夫で削っていけます。
⑥ エネルギー ── 使っていない時間のムダを削る
エネルギーの着眼点は、電力や燃料などのエネルギーのムダを減らすこと です。
わかりやすいのが、「使っていないのに動いている」状態です。誰も使っていない設備が動いたまま、休憩中も照明や機械がつけっぱなし── こうした空運転や待機のムダは、そのまま光熱費 (経費) を押し上げます。エネルギーは、原価計算でいう「経費」に含まれる費用です。設備の使い方を見直す、こまめに止める、といった地道な取り組みが、じわじわ効いてきます。近年は光熱費が上がりやすいので、着眼点としての重みも増しています。
改善活動との連動 ── 原価低減は現場改善と地続き
ここまで読んで、気づいた方もいるかもしれません。6 つの着眼点は、どれも 現場改善そのもの だということです。原価低減は、改善活動と切り離せません。むしろ、改善の成果を「原価という物差し」で測ったもの が原価低減だと考えると、すっきりします。
改善と原価低減は、同じことを別の角度から見ている
現場でムダを減らす、動きを整える、不良を減らす── これらはすべて改善活動です。そして、その改善が実を結ぶと、材料費・労務費・経費のどれかが下がります。改善は「現場を良くする」視点、原価低減は「お金で測る」視点 で、見ている対象は同じです。
ですから、原価低減を進めたいなら、改善活動の進め方をそのまま使えます。改善の考え方や進め方の全体像は ▶ 改善の進め方 完全ガイド にまとめていますので、原価低減とあわせて読むと、つながりがよく見えてきます。
標準作業で「維持」し、改善で「下げる」
原価を下げるうえで欠かせないのが、標準作業 です。標準作業とは、「今のいちばん良いやり方」を決めて、みんなが同じように作業できるようにする取り組みのことです。
やり方がバラバラだと、原価もバラつき、下がったのか悪くなったのかも分かりません。まず標準作業で「今の水準」を固めて維持し、そのうえで「もっと良いやり方」に更新していく── この繰り返しが、原価を下げつつ、下がった状態を保つ両輪になります。標準作業の詳しい進め方は ▶ 標準作業とは (IE) を参考にしてください。
ロスは「数字」で表すと改善が進む
改善を原価につなげるコツは、ロス (ムダ) を数字で表す ことです。「なんとなくムダが多い」ではなく、「どのロスが、どれだけあるか」を数字にすると、狙いどころがはっきりし、改善の効果も測れます。
ロスを数字でとらえて改善につなげる考え方は、▶ 【ロス改善は数字で表現】ロス改善の計算とは? で具体的に解説しています。原価低減を「感覚」で終わらせず「数字」で回すために、ぜひあわせて読んでみてください。
原価低減の進め方 5 ステップ ── 現状把握から定着まで
着眼点が分かったら、次は「どんな順番で進めるか」です。原価低減は、思いつきで単発に削るのではなく、5 つのステップ で回すと、続けやすく、成果も残りやすくなります。
進め方の 5 ステップ (全体像)
原価低減の進め方は、次の 5 ステップです。
- 第 1 ステップ:現状把握 ── 原価の中身をつかみ、重い費目を見つける
- 第 2 ステップ:目標設定 ── どこを、どのくらい下げるかの目標を決める
- 第 3 ステップ:着眼点の選定 ── 6 つの着眼点から、効きそうな的を選ぶ
- 第 4 ステップ:実行 ── 改善を行い、効果を数字で確かめる
- 第 5 ステップ:定着 ── 下がった状態を標準にして、維持する
「つかむ → 決める → 選ぶ → やる → 保つ」という流れです。これは改善でおなじみの「計画・実行・確認・改善 (PDCA)」を、原価低減に当てはめたものだと考えてください。順に見ていきます。
第 1 ステップ ── 現状把握で「重い費目」を見つける
最初は 現状把握 です。前の章で見たように、まず自社の原価が何で成り立っているか、どの費目が重いかをつかみます。
ここが土台です。現状が分からないまま目標だけ立てても、絵に描いた餅になります。▶ 原価計算の基礎 を使って、材料費・労務費・経費のどこが重いかを、まず大づかみでつかんでください。細かい精度より、「どこが大きいか」の傾向を先につかむことが大事です。
第 2 ステップ ── 目標設定は「割合」で持つ
次は 目標設定 です。ここでのコツは、金額そのものより「割合」で目標を持つ ことです。
たとえば「材料のロスを今より○割減らす」「段取り時間を今の半分に近づける」といった形です。割合で持つと、規模の違う現場でも考え方をそのまま使えますし、達成度も測りやすくなります。なお、下げられる幅は現場ごとにまったく違うので、本記事では「いくら下げられる」といった金額の目安は挙げません。大事なのは、金額の断定ではなく、自社の現状を起点に、無理のない割合の目標を置く ことです。
第 3 ステップ ── 着眼点を選び、的をしぼる
3 番目は 着眼点の選定 です。6 つの着眼点 (材料・工数・不良・在庫・段取・エネルギー) の中から、自社で効きそうなものを選びます。
ここで欲張って全部を一度にやろうとすると、たいてい中途半端になります。まずは「重い費目」に効く着眼点を 1 つか 2 つにしぼり、そこに力を集中してください。1 つ成果が出れば、現場に「やればできる」という手応えが生まれ、次の着眼点にも進みやすくなります。
第 4 ステップ ── 実行し、効果を数字で確かめる
4 番目は 実行 です。選んだ着眼点に沿って、実際に改善を行います。そして必ず、効果を数字で確かめる ところまでやりきります。
「改善したつもり」で終わらせないために、改善の前と後で、狙った数字がどう変わったかを見ます。ロスの割合、段取りの時間、不良の数など、着眼点に応じた物差しで測ります。ここで、前の章で紹介したロスを数字にする考え方が効いてきます。数字で確かめられた改善だけが、「本当に効いた改善」として残ります。
第 5 ステップ ── 定着させて「元に戻さない」
最後は 定着 です。せっかく下げても、放っておくと元に戻るのが原価のこわいところです。
下がった状態を、新しい標準作業として決め直し、その通りに作れているかを見ていきます。これが最初の章で触れた「原価維持」です。定着まで含めて、はじめて原価低減は完成します。そしてまた第 1 ステップの現状把握に戻り、次の的を探す── この輪を回し続けることが、原価を下げ続ける唯一の道です。
「買いたたき」の罠 ── 下請けいじめでなく、共存で下げる
原価低減というと、「仕入れ先や外注先に値下げを求める」ことを真っ先に思い浮かべる方もいます。もちろん、購入費の見直しは大切な着眼点の一つです。ですが、ここには 大きな落とし穴 があります。一方的な 買いたたき です。
買いたたきとは ── 一方的に値下げを押しつけること
買いたたきとは、取引先に対して、正当な理由なく一方的に、無理な値下げを押しつけること です。
「うちが原価を下げたいから、その分あなたが安くしてくれ」── これでは、自社のコストを取引先に付け替えているだけで、本当の意味での原価低減にはなっていません。しかも、取引先との力関係を背景にした一方的な値下げ要求は、下請けいじめ として問題になる行為でもあります。取引の適正化については、中小企業庁などの公的機関が、考え方やルールを分かりやすく示しています。
買いたたきが自社にはね返る理由
買いたたきは、じつは自社にもはね返ってきます。
無理な値下げを押しつけられた取引先は、品質を保つ余力を失ったり、良い提案をしてくれなくなったり、いざというときに協力してくれなくなったりします。目先の単価は下がっても、不良や納期遅れという形で、結局は自社のコストとして返ってくるのです。「安く買えた」つもりが、トータルでは高くついた── これは、私が現場で何度も見てきた失敗のかたちです。
共存で下げる ── 一緒に安く作る道を探す
では、購入費はどう下げればいいのでしょうか。答えは、取引先と一緒に、安く作れる道を探す ことです。
たとえば、仕様を見直して過剰な要求をやめる、発注のしかたをまとめて相手の手間を減らす、図面や工程を一緒に見直してムダを取る── こうした お互いにとって得になる改善 なら、取引先も前向きに協力してくれます。相手の利益を奪うのではなく、一緒に生み出したムダ取りの成果を分け合う。これが、続けられる調達改善の考え方です。取引先は、コストを押しつける相手ではなく、一緒に原価を下げるパートナーだと考えてください。
QCD のバランス ── 安さだけを追うと、品質・納期が崩れる
原価低減を進めるとき、絶対に忘れてはいけないことがあります。それは、コストだけを突出して追うと、品質や納期が崩れる ということです。ものづくりでは、品質 (Q)・コスト (C)・納期 (D) の 3 つ、いわゆる QCD のバランスが大事です。
QCD とは ── 品質・コスト・納期の 3 本柱
QCD とは、品質 (Quality)・コスト (Cost)・納期 (Delivery) の頭文字をとった言葉で、ものづくりで守るべき 3 つの柱のことです。
- Q (品質) ── 求められた品質を満たしているか
- C (コスト) ── いくらで作れているか (=原価)
- D (納期) ── 決めた期日までに届けられるか
原価低減は、このうち C (コスト) を良くする取り組みです。ですが、C だけを追いかけると、Q と D にしわ寄せがいくことがあります。
「安物買いの銭失い」を製造で起こさない
コストを下げようとして、たとえば安い材料に変えたら不良が増えた、人を減らしたら納期に間に合わなくなった── これでは、下げたコスト以上の損が出ます。まさに 安物買いの銭失い です。
大事なのは、Q と D を守ったうえで、C を下げる という順番です。品質を落とさず、納期も守りながら、ムダだけを削る。これができて、はじめて「良い原価低減」と言えます。逆に、品質不良や納期遅れを生む原価低減は、長い目で見ると必ず損をします。
3 つのバランスで考える
QCD は、どれか 1 つだけを良くすればいい、というものではありません。3 つのバランスの中で、全体として最も良い状態を探すのが、ものづくりの腕の見せどころです。
この QCD の考え方は、原価低減の土台であると同時に、品質管理という大きなテーマにもつながります。品質・コスト・納期 (QCD) の両立については、別記事「QCD (品質・コスト・納期) の両立」で近日公開予定 です。公開したら、この記事からもご案内します。まずは「原価低減は、Q と D を守りながら進めるもの」という原則を、しっかり覚えておいてください。
原価低減でつまずきやすい 3 つの点
最後に、原価低減がうまくいかない現場に共通する つまずきやすい点 を、3 つ整理します。先に落とし穴を知っておくと、避けて通れます。
一過性で終わる ── 続かない
1 つ目のつまずきは、一過性で終わってしまう ことです。
号令をかけて一度は下げたものの、続かずに元に戻る── これがいちばん多い失敗です。原因は、進め方 5 ステップの最後「定着」を飛ばしてしまうことにあります。下げた状態を標準にして維持しないと、原価はじわじわ元に戻ります。原価低減は、イベントではなく、日常の中で回し続ける活動だと考えてください。
現場任せで疲弊する ── 旗振り役がいない
2 つ目は、現場に丸投げして、疲弊させてしまう ことです。
「コストを下げろ」とだけ言って、あとは現場任せ── これでは、現場は何をどう下げればいいか分からず、ただ疲れるだけになります。どこが重いのかを一緒に見つけ、着眼点を示し、成果を認める。この 旗振り役 がいるかどうかで、原価低減が続くかどうかが決まります。責任丸投げにせず、進め方の型を示すことが大切です。
効果が見えない ── 数字で測っていない
3 つ目は、効果が数字で見えない ことです。
「がんばっているのに、下がった実感がない」という現場は、たいてい効果を数字で測っていません。数字で示せない改善は、達成感も得られず、続きません。だからこそ、進め方 5 ステップの「効果を数字で確かめる」が欠かせません。原価という物差しで測り、下がったことを目に見える形にする。これが、現場のやる気を保ちながら原価低減を続けるコツです。
よくある質問 Q&A
Q1: 原価低減と原価計算は何が違いますか?
原価計算は「原価がいくらかを計算すること」、原価低減は「その原価を下げること」 です。原価計算で「うちはいくらで作れているか、どこが重いか」をつかんで、はじめて原価低減の的が決まります。まず原価計算で現状をつかむのが出発点で、その先に原価低減があると考えてください。原価計算の基礎は ▶ 原価計算の基礎 にまとめています。
Q2: 何から手を付ければいいですか?
まずは 自社の原価で、どの費目が重いかをつかむ ことです。材料費が重いのか、労務費が重いのかで、狙うべき着眼点が変わります。重い費目が見えたら、6 つの着眼点 (材料・工数・不良・在庫・段取・エネルギー) の中から、効きそうなものを 1 つか 2 つにしぼって始めてください。いきなり全部を狙わないことが、続けるコツです。
Q3: 「もう削るところがない」と行き詰まっています。どうすれば?
多くの場合、目に見えるコストは削ったが、見えにくいコストが残っている 状態です。不良で捨てている材料、手待ちの時間、持ちすぎの在庫、段取り替えの時間、空運転のエネルギー── こうした「見えにくいムダ」は、意識して探さないと気づけません。6 つの着眼点を、あらためて一つずつ自社に当ててみてください。まだ下げられる余地が見つかるはずです。
Q4: 仕入れ先に値下げをお願いするのは、原価低減ではないのですか?
購入費の見直しは、原価低減の一つです。ただし、一方的に無理な値下げを押しつける「買いたたき」は別物 です。それは自社のコストを取引先に付け替えているだけで、結局は不良や納期遅れとなって自社にはね返ります。取引先とは、仕様の見直しや発注の工夫など、一緒に安く作れる道を探す のが、続けられるやり方です。詳しくは「買いたたきの罠」の章で解説しています。
Q5: 原価低減と現場改善は、別々に進めるものですか?
いいえ、同じもの だと考えてください。現場改善 (ムダを減らす・動きを整える・不良を減らす) の成果を、原価という物差しで測ったものが原価低減です。ですから、改善活動の進め方がそのまま使えます。改善の全体像は ▶ 改善の進め方 完全ガイド にまとめていますので、あわせて読んでみてください。
Q6: コストを下げたら、品質が落ちてしまいました。どう考えればいいですか?
それは、コスト (C) だけを追って、品質 (Q) を犠牲にしてしまった状態です。原価低減は、品質 (Q) と納期 (D) を守ったうえで、コスト (C) を下げる のが原則です。品質不良や納期遅れを生む原価低減は、下げたコスト以上の損を生みます。QCD のバランスについては「QCD のバランス」の章で解説しています。まずは Q と D を守る、を大前提にしてください。
まとめ
本記事で押さえてほしい 3 行サマリーは以下の通りです。
- 原価低減は 原価企画 (作る前)・原価維持 (保つ)・原価改善 (下げる) の総称。中小はまず、今の現場で下げる 原価改善 から入る
- 進め方は、重い費目を見つけ → 6 つの着眼点 (材料・工数・不良・在庫・段取・エネルギー) で的をしぼり → 5 ステップで回す。効果は必ず数字で確かめる
- 買いたたきに走らず (取引先と共存)、品質・納期 (QD) を守ってコスト (C) を下げる。下げた状態を定着させて、元に戻さない
原価低減の進め方について解説しました。大事なのは、やみくもに削るのではなく、どこが重いかを見つけ、着眼点を決め、進め方の型に沿って回す ことです。そして、下げた状態を維持し、また次の的を探す── この輪をコツコツ回し続けることが、原価を下げ続ける唯一の道です。行き詰まったと感じても、見えにくいコストにはまだ余地があります。あせらず、一つずつ的をしぼって、進めていきましょう。
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- ▶ 生産管理とは (原価と対になる、生産管理の基礎)
- ▶ 標準作業とは (IE) (原価を維持・改善する土台になる標準作業)
- ▶ 改善の進め方 完全ガイド (原価低減は改善の一部)
- ▶ 【ロス改善は数字で表現】ロス改善の計算とは? (ロスを数字で表して改善につなげる)
- QCD (品質・コスト・納期) の両立 (近日公開 / 原価低減とあわせて考える品質・コスト・納期のバランス)
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外部の公的情報源
- 中小企業ビジネス支援サイト J-Net21: https://j-net21.smrj.go.jp/
- 中小企業庁 (取引適正化・下請取引の情報など): https://www.chusho.meti.go.jp/
- 中小企業向け補助金・総合支援サイト ミラサポplus: https://mirasapo-plus.go.jp/
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 (中小機構): https://www.smrj.go.jp/
