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最終更新: 2026-07-13

💬 「生産計画をちゃんと立てろ」と言われるけど、そもそも何から手をつければいいの、、、?

💬 大日程・中日程・小日程、PSI、負荷計画…種類の言葉が多すぎて、頭がこんがらがるんだよなぁ、、、。

💬 せっかく計画を立てても、結局その通りに作れなくて、現場では守られない、、、。

そんな『生産計画の立て方』についての悩みにお答えします。

目次

☑ 記事の内容

  1. そもそも 生産計画とは何か・立てる目的 (手待ち・欠品・過剰在庫を防ぐ)
  2. 生産計画の 3つの種類 (大日程・中日程・小日程計画) と、PSI計画 (生産・販売・在庫の連動)
  3. 負荷計画と能力 (山積み・山崩しで無理をなくす)
  4. 生産計画の 立て方 7ステップ
  5. 平準化・変更対応 / つまずく点 と Q&A

私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を 10 年以上行ってきました。実績を金額に換算すると 1 億円以上の改善を行ってきた、いわゆる改善のプロです。今は中小企業診断士として、中小製造業の生産管理や原価管理のお手伝いをしています。その中で、生産計画がきれいに回っている現場も、立てた計画が絵に描いた餅になって現場が振り回されている現場も、数え切れないほど見てきました。生産計画は、種類の名前を聞くと難しそうですが、「大きく決めて → 細かく落とし込み → 無理がないか確かめ → 実績で直す」 という流れさえ掴めば、はじめての方でも組み立てられます。本記事では、私がふだん現場で説明している順番のまま、生産計画の立て方を整理していきます。

そんなわたしが解説していきます。

本記事は 生産計画を「実際にどう立てるか」まで踏み込んで解説する 記事です。そもそも生産管理とは何か、計画がその中でどこに位置づくのかという全体像から知りたい方は、まず ▶ 生産管理とは を読んでから戻ってくると、話がすっと入ってきます。生産管理だけでなく原価管理まで含めた全体像を目次のように把握したい方は、まとめ記事 ▶ 中小製造業の生産管理・原価管理 完全ガイド をご覧ください。

生産計画とは ── 「いつ・何を・どれだけ作るか」を先に決める設計図

まず、言葉の意味からそろえておきます。生産計画とは、「いつ・何を・どれだけ作るか」を、作りはじめる前に決めておく設計図 のことです。

家を建てるときに設計図なしで柱を立て始める人はいません。モノづくりも同じで、先に「いつまでに、何を、どれだけ、どの順で作るか」を決めておくから、材料の手配も人の配置も間に合います。この段取りの土台になるのが生産計画です。

生産計画とは ── 作る前に「時間・品目・数量」を決めておくこと

生産計画とは、時間 (いつ)・品目 (何を)・数量 (どれだけ) の3つを、作る前に決めておく活動 のことです。

もう少し噛みくだくと、次の問いに先に答えておく仕事です。

  • いつまでに仕上げる必要があるのか (時間)
  • どの製品・部品を作るのか (品目)
  • それぞれ、いくつ作るのか (数量)

この3つが決まってはじめて、材料をいつ発注するか、どの設備で誰が作るか、という手配に進めます。逆にこの3つが曖昧なままだと、現場は「今日は何を作ればいいのか」を毎朝さがすことになり、手待ちと段取り替えに追われてしまいます。

生産計画を立てる目的 ── 「手待ち・欠品・過剰在庫」を同時に防ぐ

生産計画を立てる目的は、ひとことで言えば ムリ・ムダ・ムラをなくして、QCD (品質・コスト・納期) を守ること です。QCD とは、Quality (品質)・Cost (コスト)・Delivery (納期) の頭文字をとった、モノづくりの3本柱を指す言葉です。

具体的には、計画があることで次の3つを同時に防げます。

  • 手待ち ── 「次に何を作るか決まっていない」空き時間をなくす
  • 欠品・納期遅れ ── 「間に合わない」を前もって見つけて手を打つ
  • 過剰在庫 ── 「作りすぎて倉庫にあふれる」を防ぐ

大事なのは、この3つは 引っぱり合う関係 だということです。欠品が怖いからと多めに作れば過剰在庫になり、在庫を減らそうと絞れば欠品しやすくなります。生産計画とは、この綱引きのちょうど良いところを先に決めておく仕事 なのです。

生産計画は生産管理の「起点」

生産計画は、生産管理という大きな活動の出発点にあたります。生産管理は「計画・手配・統制」という3つの働きで回っていますが、その一番はじめの「計画」がまさに生産計画です。

計画が良ければ、後の手配 (材料や人の段取り) も統制 (遅れの手直し) もスムーズに進みます。逆に計画がぶれていると、後の工程がすべて振り回されます。ですから、生産計画は生産管理の精度を左右する土台だと言えます。生産管理そのものの全体像は ▶ 生産管理とは で解説しているので、あわせて読むと位置づけがはっきりします。

生産計画の3つの種類 ── 大日程・中日程・小日程計画

生産計画は、1種類ではありません。期間と細かさのちがいで、大日程・中日程・小日程の3つ に分かれます。この3つを段階的に落とし込んでいくのが、計画づくりの基本形です。

生産計画の3階層 ── 大きく決めて → 細かく落とす

大日程計画 対象: 数ヶ月〜1年 / 粒度: 製品グループ・月単位 決める: 生産量の大枠・人員/設備の増減

中日程計画 対象: 数週間〜数ヶ月 / 粒度: 品目別・週単位 決める: 品目ごとの数量・材料手配時期・工程割当

小日程計画 対象: 数日〜1週間 / 粒度: 日・時間・作業単位 決める: どの設備で誰が何を作るか・作業の順番

落とし込む 上で大枠を決め、下で作業単位まで細かくする

3つの計画の早見

まず全体を1枚で掴んでおきましょう。3つの計画は、対象とする期間と細かさが段階的に変わります。

計画対象期間の目安細かさ (粒度)主に決めること
大日程計画数ヶ月〜1年大まか (製品グループ・月単位)生産量の大枠・人員や設備の増減・大きな受注への備え
中日程計画数週間〜数ヶ月品目別・週単位品目ごとの数量・材料の手配時期・工程の割り当て
小日程計画数日〜1週間細かい (日・時間・作業単位)どの設備で誰が何を作るか・作業の順番

ポイントは、上 (大日程) で大きく決め、下 (小日程) で細かく落とし込む という流れです。いきなり細かい計画を立てようとすると全体が見えず、逆に大きな計画だけでは現場が動けません。順に見ていきます。

大日程計画 ── 数ヶ月〜1年の「大枠」を決める

大日程計画とは、数ヶ月から1年先までの生産量を、大まかに決めておく計画 のことです。

ここで見るのは細かい品目ではなく、製品グループごとの「だいたいどれだけ作るか」という大枠です。この計画があると、人を増やす・設備を入れる・大きな受注に備える といった、時間のかかる準備を前もって進められます。

たとえば「繁忙期に向けて人手が足りなくなりそうだ」と数ヶ月前に分かれば、採用や外注の手配が間に合います。直前になって慌てないための、いちばん外側の計画が大日程計画です。

中日程計画 ── 数週間〜数ヶ月の「品目別」に落とす

中日程計画とは、大日程で決めた大枠を、品目ごと・週単位まで細かくした計画 のことです。生産計画の中でも、実務でいちばんよく使う中心的な計画です。

ここでは「A製品を来週いくつ、B製品を再来週いくつ」というレベルまで具体化します。この粒度になると、材料をいつ発注すればいいか、どの工程にどれだけ仕事が乗るか が見えてきます。後で出てくるPSI計画や負荷計画も、主にこの中日程のレベルで組み立てます。

小日程計画 ── 数日〜1週間の「作業割付」まで決める

小日程計画とは、数日から1週間先までを、現場の作業単位まで細かく割り付けた計画 のことです。

ここまで来ると、「この設備で、誰が、何を、どの順番で作るか」という現場が実際に動くレベルになります。作業の順番 (段取り替えが少なくなる並べ方) や、日ごとの負荷のバランスまで決めます。小日程計画は、現場の作業指示書に一番近い計画だと考えてください。

3階層は「大 → 中 → 小」に落とし込む

3つの計画は、バラバラに立てるものではありません。大日程で大枠を決め、それを中日程で品目別に割り、さらに小日程で作業に落とす ── この上から下への流れがそろっていることが大切です。

もし大日程と小日程がつながっていないと、「全体では足りているはずなのに、今日の現場では回らない」というズレが起きます。3つの計画は、粗さのちがう地図を重ねているようなものです。全体地図 (大日程) から市街地図 (小日程) まで、縮尺をそろえておく ── これが生産計画づくりの骨格になります。

PSI計画 ── 生産・販売・在庫を1本でつなぐ

3つの計画の粒度が分かったら、次は 計画のつじつまを合わせる道具 を押さえます。それが PSI計画です。中日程計画を組むときに、特に見込生産で欠かせない考え方です。

PSI計画 ── 生産・販売・在庫を並べて在庫を先読みする

P (生産) Production / 作る量 S (販売) Sales / 売れる量 I (在庫) Inventory / 残る量

前期末の在庫 + 今期の生産 - 今期の販売 = 今期末の在庫

数ヶ月先まで横に並べると… 1ヶ月目 P / S / I が並ぶ 在庫OK

2ヶ月目 在庫がマイナス 🚨 欠品の予兆

3ヶ月目 在庫が積み上がる ⚠ 過剰の予兆

※具体的な数値は入れず、足し算・引き算を先の月まで並べるだけ

PSI計画とは ── 生産・販売・在庫の3つを並べて見る

PSI計画とは、Production (生産)・Sales (販売)・Inventory (在庫) の3つを並べて、在庫のつじつまが合うように生産量を決める計画 のことです。頭文字をとって「ピー・エス・アイ」と読みます。

なぜ3つを並べるのかというと、生産 (作る量)・販売 (売れる量)・在庫 (残る量) は、切り離せない関係にあるからです。売れる見込みに対して作りすぎれば在庫が余り、少なすぎれば欠品します。この3つを1枚に並べて見ることで、「今の計画だと在庫がどうなるか」が先に分かるのです。

在庫のつじつま合わせ ── 「前期末 + 生産 - 販売 = 今期末」

PSI計画の心臓部は、たった1つの単純な式です。

前期末の在庫 + 今期の生産 - 今期の販売 = 今期末の在庫

つまり、月ごと (または週ごと) に「先月末にいくつ残っていて、今月いくつ作り、いくつ売れる見込みか」を並べると、今月末の在庫が計算できます。この計算を数ヶ月先まで並べていくと、どの月に在庫が足りなくなり (欠品の予兆)、どの月に積み上がるか (過剰の予兆) が前もって見えてきます。

たとえば、ある月の末在庫がマイナスになりそうなら「その月までにもっと作る必要がある」と分かりますし、逆にどんどん積み上がるなら「作りすぎだから絞ろう」と手が打てます。難しい計算はいりません。足し算・引き算を先の月まで並べるだけです。

PSIを回すと何が見えるか ── 過剰と欠品の「予兆」

PSI計画のいちばんの効きどころは、問題が起きる前に気づける ことです。

実際に在庫があふれてから、あるいは欠品してお客様に迷惑をかけてから慌てるのでは遅すぎます。PSIで数ヶ月先まで並べておけば、「2ヶ月後に欠品しそう」「来月から在庫が積み上がりそう」という予兆が、まだ手を打てるうちに見えます。

数量の考え方としては、販売の見込みは幅を持って (強気・弱気の両にらみで) 置いておき、在庫は「これ以上は減らしたくない」下限を決めておく のがコツです。ぴったり1本の数字で当てにいくのではなく、幅の中で安全側に構えておくと、予測が多少外れても計画が崩れにくくなります。売れる見込み (需要予測) そのものの立て方は、別記事「需要予測の基本」で近日公開予定です。

負荷計画と能力 ── 山積み・山崩しで無理をなくす

数量のつじつまが合っても、まだ安心できません。その量を、決めた期間内に本当に作りきれるのか ── これを確かめるのが負荷計画です。ここを飛ばすと、計画は「数の上では合っているが、現場では回らない」ものになってしまいます。

負荷と能力とは ── 「積みたい仕事」と「できる仕事」

負荷計画を理解するには、まず「負荷」と「能力」という2つの言葉をそろえます。

  • 負荷 ── その期間に「作りたい・作る必要がある」仕事の量 (時間で表すことが多い)
  • 能力 ── その期間に設備や人が「実際に作れる」仕事の量

負荷計画とは、この負荷と能力を見くらべて、無理がないように仕事を配る計画 のことです。負荷が能力を超えていれば、そのままでは間に合いません。逆に能力が大きく余っていれば、手待ちやコストのムダが出ています。

山積み ── まず負荷を積み上げて「見える化」する

山積みとは、各工程・各設備に、どれだけの仕事 (負荷) が乗っているかを積み上げて見えるようにすること です。棒グラフで、横軸に期間、縦軸に負荷時間を取って積み上げるイメージです。

山積みをすると、「この設備は来週パンパンだが、再来週はガラガラ」といった 仕事の山と谷 がひと目で分かります。多くの現場は、この山積みをしていないために「なんとなく忙しい」で済ませてしまい、どこがボトルネック (いちばん詰まる工程) なのかが見えていません。まずは負荷を積み上げて見える化する ── これが負荷計画の第一歩です。

山崩し ── 山を平して能力内に収める

山崩しとは、山積みで見えた「山」を、前後にずらしたり分けたりして、能力の範囲内にならすこと です。

具体的な平し方には、次のようなやり方があります。

  • 前倒し ── 余裕のある前の期間に、先に作っておく
  • 後ろ倒し ── 納期に余裕があるものを、後の空いた期間に回す
  • 外注・応援 ── 自社で作りきれない分を、外部や他ラインに振る

山崩しのゴールは、山の高さ (ピーク) を能力の線より下に収めること です。ピークが能力を超えたまま計画を出すと、その週は必ず残業や納期遅れになります。負荷を平すことは、そのまま残業とムリの削減につながります。

能力を超えたときの 4 つの打ち手

山崩しをしても、どうしても負荷が能力を超えてしまうことがあります。その場合の打ち手は、大きく4つです。

  1. 能力を増やす ── 残業・応援・シフト調整・設備の増強で、作れる量を上げる
  2. 負荷を減らす ── 納期を交渉して分散する、内示を早めにもらって前倒しする
  3. 外に出す ── 一部を外注に振って、社内の負荷を下げる
  4. 順番を変える ── ボトルネック工程を優先して流し、全体の詰まりを解く

どれを選ぶかは、コスト・納期・品質のバランスで決めます。大事なのは、「超えている」と早く気づいて、まだ手が打てるうちに選ぶ ことです。負荷計画は、この判断を前倒しにするための道具なのです。

生産計画の立て方 7ステップ

ここまでの種類・道具をふまえて、いよいよ 実際の立て方 を1本の手順にまとめます。生産計画は、次の7ステップで組み立てると迷いません。

全体の流れ ── 7ステップ早見

生産計画の立て方は、大きく次の7ステップです。

  1. 需要をつかむ ── 受注と売れ行きの見込みから「何がどれだけ要るか」を掴む
  2. 大日程で大枠を決める ── 数ヶ月〜1年の生産量の大枠を置く
  3. PSIでつじつまを合わせる ── 生産・販売・在庫を並べ、在庫が破綻しない生産量にする
  4. 負荷を確かめる (山積み・山崩し) ── 能力内に収まるか見て、平す
  5. 中日程・小日程に落とす ── 品目別・作業単位まで細かくする
  6. 現場に展開する ── 作業指示にして、現場が動ける形にする
  7. 実績で見直す ── 計画と実績を比べ、次の計画に返す

ポイントは、「大きく決めてから細かく落とす」順番を守る ことと、7で終わりにせず1に戻して回し続ける ことです。順に見ていきます。

ステップ1 ── 需要をつかむ

最初のステップは、「何が・どれだけ・いつ要るか」を掴む ことです。受注生産なら受けた注文が、見込生産なら売れ行きの見込み (需要予測) が出発点になります。

ここが実際の必要とズレると、後のすべてがズレます。ですから、営業からの受注情報・過去の実績・お客様からの内示 (早めの発注見込み) などを集めて、できるだけ正確に掴みます。見込みは1本の数字で当てにいかず、強気・弱気の幅で置いておく のがコツです。需要予測そのものの立て方は、別記事「需要予測の基本」で近日公開予定です。

ステップ2 ── 大日程で大枠を決める

次に、掴んだ需要をもとに 数ヶ月〜1年の生産量の大枠 を置きます。ここでは細かい品目ではなく、製品グループ単位で「この時期はこれくらい作る」という大まかな見当をつけます。

この段階で、人手や設備が足りるかどうかの見通しも立てます。足りなそうなら、採用・外注・設備増強といった時間のかかる準備を、ここで前もって仕込んでおきます。

ステップ3 ── PSIでつじつまを合わせる

大枠が決まったら、生産・販売・在庫を並べて、在庫が破綻しないかを確かめます。先ほどの「前期末 + 生産 - 販売 = 今期末」の式で、数ヶ月先まで在庫の動きを並べます。

欠品しそうな月があれば生産を前倒しし、積み上がりそうなら絞る ── こうして、在庫のつじつまが合う生産量に調整します。この段階で数量の骨格が固まります。

ステップ4 ── 負荷を確かめる (山積み・山崩し)

数量が決まったら、その量を本当に作りきれるかを確かめます。工程ごとに負荷を山積みし、能力を超えている山を山崩しでならします。

ここで能力を超えたままだと、計画は必ず破綻します。前倒し・後ろ倒し・外注・応援で平し、それでも超えるなら、納期の交渉や優先順位づけをこの段階で済ませておきます。

ステップ5 ── 中日程・小日程に落とす

数量と負荷のつじつまが合ったら、品目別 (中日程)・作業単位 (小日程) まで細かく落とします。「どの週にどの品目をいくつ」「どの日にどの設備で誰が何を」というレベルまで具体化します。

このとき、段取り替えが少なくなる順番に並べる、似た品目をまとめて流す、といった工夫をすると、現場のムダが減ります。

ステップ6 ── 現場に展開する

計画は、現場が動ける形にして初めて意味を持ちます。作業指示書・生産計画表など、現場が見て動ける形に展開します

このとき大事なのは、現場が「なぜこの順番なのか」を分かる状態にしておくことです。理由が伝わらない計画は守られません。展開は、計画を現場と共有する場でもあります。

ステップ7 ── 実績で見直す

最後のステップは、計画と実績を比べて、次の計画に返す ことです。「予定何個・実際何個」「予定何時間・実際何時間」を並べ、ズレの原因を掴みます。

「この工程はいつも計画より遅れる」と分かれば、次からは余裕を持たせる、あるいは工程そのものを改善する、といった手が打てます。この見直しがあるからこそ、計画の精度は回すたびに上がっていきます。生産計画は7で終わりではなく、また1に戻る 終わりのないサイクル なのです。

需要予測・在庫との関係 ── 計画の「入口」と「出口」

生産計画は、単独では立てられません。入口には需要予測があり、出口には在庫がつながっています。この前後関係を押さえておくと、計画がなぜズレるのか・どこを直せばいいのかが分かります。

入口 ── 需要予測が計画の精度を決める

生産計画の入口は、需要予測です。「どれだけ売れるか・要るか」の見込みが正確なほど、計画全体の精度が上がります。逆に、入口の読みが大きく外れると、いくら丁寧に計画を組んでも結果はズレます。

とはいえ、需要予測を完璧に当てることはできません。だからこそ、予測は幅で置き、在庫や負荷に安全側の余裕を持たせて、外れても崩れない計画にする という考え方が大切です。需要予測の具体的な立て方 (過去実績の使い方、季節や傾向の見方など) は、別記事「需要予測の基本」で近日公開予定です。

出口 ── 計画のズレは在庫に残る

生産計画の出口は、在庫です。計画と実際の需要のズレは、そのまま在庫となって残ります。多めに作れば余り、少なめに作れば欠品します。

ですから、生産計画と在庫管理はセットで考える必要があります。「これ以上は減らしたくない量 (安全在庫)」「いつ・どれだけ発注するか (発注点)」といった在庫側のルールを決めておくと、計画も立てやすくなります。適正な在庫の持ち方は、別記事 ▶ 在庫管理 (適正在庫・発注点) で解説しています。

原価とのつながり ── 作り方が原価に乗る

もう一つ見逃せないのが、原価とのつながりです。計画の立て方 (段取り替えの多さ・作りすぎ・手待ち) は、そのまま原価に跳ね返ります。同じモノでも、ムダの多い作り方をすれば原価は高くなります。

だからこそ、負荷を平し、段取り替えを減らし、作りすぎを防ぐ計画は、そのまま原価低減につながります。原価がそもそもどう成り立っているか (材料費・労務費・経費) という基礎は、▶ 原価計算の基礎 で解説しています。生産計画を原価の目で見られるようになると、「利益の残る作り方」に近づけます。

計画の平準化と変更対応 ── 山谷をならし、崩れても立て直す

計画は、立てて終わりではありません。日々の山谷をならし (平準化)、急な変更にどう対応するか まで決めておいて、はじめて現場で使える計画になります。

平準化とは ── 仕事の「山谷」をならすこと

平準化とは、日ごと・週ごとの生産量や品種の偏り (山谷) を、できるだけならして一定に近づけること です。

なぜ平準化するかというと、山谷が大きいと ムリとムダが同時に増える からです。山の日は残業やミスが増え、谷の日は手待ちが出ます。生産量をならし、作る品種の順番もばらけさせておくと、人も設備も安定して動けるようになります。平準化は、負荷計画の山崩しを日々のレベルまで広げた考え方だと捉えてください。

平準化の進め方 ── まとめて作らず、少しずつ均す

平準化の基本は、「一度にまとめてドカッと作る」のではなく、必要な分を少しずつ、順番をばらして作る ことです。

たとえば、同じ製品を月初に1ヶ月分まとめて作ると、その週は山になり、他の週は谷になります。これを「毎週少しずつ、複数の品種を混ぜて作る」形にならすと、負荷が平らになり、在庫も減らせます。ただし、段取り替えのコストとのバランスもあるので、どこまで細かく分けるかは、段取りの手間と相談して決める のが現実的です。平準化は、改善活動と一緒に進めると効果が高まります。進め方は ▶ 改善の進め方 完全ガイド にまとめています。

計画変更への対応 ── 「凍結期間」と「差し替えルール」

現場では、急な受注・欠品・設備トラブルで、計画の変更は必ず起きます。大切なのは、変更を「なんとなく」でやらず、ルールを決めておく ことです。

  • 凍結期間を決める ── 「直前の数日は原則変更しない」と決め、現場を落ち着かせる
  • 差し替えのルールを決める ── 割り込みが入ったら「何を後ろに回すか」を先に決めておく
  • 変更の記録を残す ── なぜ変えたかを残し、次の計画に活かす

変更のたびに現場が混乱するのは、変更してよい範囲とやり方が決まっていない からです。「ここから先は動かさない」「割り込みが来たらこう捌く」というルールがあるだけで、計画は急な変更にも耐えられるようになります。

中小製造業が生産計画でつまずく 5 つの点 ── あるあると対処の方向

最後に、私が中小製造業の現場でよく見てきた「生産計画でつまずく点」を 5 つ整理します。裏を返せば、ここを押さえれば計画は前に進みます。

つまずき1 ── 計画がベテランの「勘」だけで作られている

いちばん多いのが、これです。生産計画がベテラン1人の頭の中にあり、その人がいないと計画が立たない 状態です。属人化とは、特定の人にしかできない状態のことです。

対処の方向は、頭の中にあるやり方を「見える形」にして外に出すことです。まずは大日程・中日程・小日程のどの粒度で、何を決めているのかを紙に書き出すだけでも、人から仕組みへ移す第一歩になります。

つまずき2 ── 数量だけ決めて「負荷 (能力)」を見ていない

「何をいくつ作るか」は決めるのに、それを作りきれる能力があるかを見ていない パターンです。これだと、計画は数の上では合っていても、現場では回りません。

対処の方向は、山積み・山崩しで負荷を見える化することです。工程ごとに負荷を積み上げ、能力の線と比べるだけで、「この週は無理」が事前に分かります。負荷を見ない計画は、絵に描いた餅になりがちです。

つまずき3 ── 計画を立てっぱなしで、実績と比べていない

計画を立てるだけで、実績と比べて振り返っていない パターンです。これでは、計画が良かったのか悪かったのかも分かりません。

対処の方向は、まず「予定何個・実際何個」「予定何時間・実際何時間」を並べて見ることです。並べるだけでズレの傾向が見え、次の計画の精度が上がります。計画は、実績と比べてはじめて育ちます。

つまずき4 ── 需要・在庫・負荷の情報がバラバラに散っている

受注は営業の頭の中、在庫は倉庫の紙、負荷は現場の感覚 ── というように、計画に必要な情報があちこちに散らばっている 状態です。これだと、つじつまの合った計画は立てられません。

対処の方向は、計画に使う情報を1か所に集めることです。いきなり大きなシステムを入れる必要はありません。まずは「需要・在庫・負荷が1枚で見える表」を1つ作るだけでも、計画は組みやすくなります。

つまずき5 ── 計画が現場で「守られない」

せっかく計画を立てても、現場がその通りに作らない・作れない パターンです。計画が守られなければ、立てる意味がありません。

対処の方向は2つあります。1つは、現場が守れる計画にする こと (能力を超えた無理な計画にしない)。もう1つは、なぜこの計画なのかを現場と共有する ことです。理由が伝わらない計画は守られません。守られない原因が「無理」なのか「伝わっていない」のかを見きわめて、そこを直します。守るべき「決めたやり方 (標準)」から改善を積み上げる進め方は、▶ 改善の進め方 完全ガイド で解説しています。

よくある質問 Q&A

Q1: 生産計画は、どのくらい先まで立てればいいですか?

3つの期間で立てるのが基本です。大まかな大枠は数ヶ月〜1年先まで、品目別の中身は数週間〜数ヶ月先まで、現場の作業割付は数日〜1週間先まで ── というように、粒度を変えて重ねます。遠い先ほど大まかに、近いほど細かく、と考えると迷いません。1つの細かさで遠くまで立てようとすると、外れて作り直しになります。

Q2: 受注生産でも生産計画は立てられますか?

立てられます。確かに「先に見込みで作る」ことはしませんが、受けた注文をいつ・どの順で・どれだけの負荷で作るか を決めるのは、立派な生産計画です。むしろ受注生産では、限られた設備と人をどう割り付けるか (負荷計画) が計画のカギになります。山積み・山崩しで負荷を平すことが、納期を守るうえで特に効いてきます。

Q3: PSI計画は難しそうですが、Excelでもできますか?

できます。PSIの心臓部は「前期末の在庫 + 生産 - 販売 = 今期末の在庫」という足し算・引き算だけです。月 (または週) を横に並べ、品目ごとに生産・販売・在庫の3行を作れば、Excelで十分に組めます。まずは主要な品目だけでいいので、数ヶ月先まで在庫の動きを並べてみてください。欠品・過剰の予兆が見えるようになります。

Q4: 需要予測が当たらないので、計画が立てられません。どうすれば?

予測を完璧に当てる必要はありません。大切なのは、予測を1本の数字で当てにいかず、幅で置くこと、そして 在庫や負荷に安全側の余裕を持たせて、外れても崩れない計画にすること です。予測が外れる前提で、在庫の下限を決めておく・負荷にゆとりを持たせておく、といった備えのほうが実務では効きます。需要予測そのものの立て方は、別記事「需要予測の基本」で近日公開予定です。

Q5: 生産計画システム (生産スケジューラ) を入れれば解決しますか?

システムは強力な道具ですが、入れただけでは解決しません。何を大日程・中日程・小日程で決めるのか、PSIや負荷をどう見るのかという「計画の立て方」が整理されていないままシステムを入れると、混乱をそのままデジタルに移すだけになりがちです。まずは紙やExcelで計画の回し方を整理し、回り始めてからシステム化に進むのが、失敗の少ない順番です。

Q6: 平準化と、お客様の急な注文の両立ができません。

これは多くの現場が抱える悩みです。ポイントは、「動かさない部分」と「動かしてよい部分」を分けておく ことです。直前の数日は計画を凍結して平準化を守り、その先の期間で急な注文を吸収する ── というように、期間で役割を分けます。あわせて、急な注文が入ったときに「何を後ろに回すか」の差し替えルールを先に決めておくと、平準化を大きく崩さずに対応できます。

まとめ

本記事で押さえてほしい 3 行サマリーは以下の通りです。

  1. 生産計画は 「いつ・何を・どれだけ作るか」を先に決める設計図。大日程・中日程・小日程の3つを「大 → 小」に落とし込む
  2. PSI (生産・販売・在庫) で在庫のつじつまを合わせ、山積み・山崩し で負荷を能力内にならす。この2つが計画の土台
  3. 立て方は 7ステップ (需要をつかむ → 大枠 → PSI → 負荷 → 中小日程 → 現場展開 → 実績で見直す)。7で終わらず1に戻して回し続ける

生産計画の立て方について解説しました。種類の名前を聞くと難しそうですが、要は 「大きく決めて、細かく落とし、無理がないか確かめ、実績で直す」 を回し続ける活動です。そして、その入口には需要予測、出口には在庫があり、作り方はそのまま原価に乗ってきます。まずは主要な品目だけでいいので、PSIの表を数ヶ月先まで並べ、負荷を山積みしてみるところから始めましょう。コツコツと積み上げて、納期・在庫・コストの揃った計画づくりを進めていきましょう。

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