最終更新: 2026-07-14
💬 「リードタイムを短くしろ」と言われるけど、うちの納期って何にそんなに時間がかかっているんだろう、、、?
💬 現場をよく見ると、作っている時間より「待っている時間」のほうが長い気がするんだよなぁ、、、。
💬 短縮したいのは山々だけど、どこから手をつければいいのか分からない、、、。
そんな『リードタイム短縮』についての悩みにお答えします。
- 1 リードタイムとは ── 「着手から完了まで」にかかる時間のこと
- 2 リードタイムの構成 ── 加工・検査・運搬・停滞の 4 つに分かれる
- 3 なぜ停滞が大半になるのか ── 待ちが積み上がる仕組み
- 4 リードタイム短縮の 5 つの着眼点
- 5 リードタイム短縮と「ムダ 7 種」の関係 ── 停滞は時間で見たムダ
- 6 リードタイム短縮と「標準作業」の関係 ── 短縮を定着させる土台
- 7 リードタイム短縮の進め方 5 ステップ
- 8 リードタイム短縮が「在庫」と「原価」に効く ── 短いほどお金が回る
- 9 中小製造業がリードタイム短縮でつまずく 4 つの点 ── あるあると対処の方向
- 10 よくある質問 Q&A
- 11 まとめ
☑ 記事の内容
- そもそも リードタイムとは何か、そして開発・調達・生産・納品という 4 つの種類
- リードタイムは 加工・検査・運搬・停滞 に分かれ、その大半が 「停滞 (待ち)」 であること
- リードタイムを短くする 5 つの着眼点 (停滞除去・段取短縮・小ロット化・平準化・工程集約)
- 短縮の 進め方 5 ステップ、在庫・原価への波及、つまずく点、Q&A
わたしは自動車メーカーの工場で改善活動の指導を 10 年以上行ってきました。実績を金額に換算すると 1 億円以上の改善を行ってきた、いわゆる改善のプロです。今は中小企業診断士として、中小製造業の生産管理や原価管理のお手伝いをしています。その中で、「うちは納期が長い」と悩む現場を数え切れないほど見てきましたが、実際にストップウォッチを持って流れを追うと、時間の大半は『作っている時間』ではなく『待っている時間』 だった、というのがほとんどでした。リードタイム短縮は、難しそうな響きに反して、「どこで待っているか」を見つけて、その待ちを減らす という一本の筋で理解できます。本記事では、わたしがふだん現場で説明している順番のまま、その地図を整理していきます。
そんなわたしが解説していきます。
本記事は リードタイム短縮を「停滞 (待ち) を減らす」という視点で 1 枚の地図にまとめた 内容です。リードタイム短縮だけでなく、生産管理・原価管理まで含めた全体像から知りたい方は、まずまとめ記事の ▶ 中小製造業の生産管理・原価管理 完全ガイド をご覧ください。また、リードタイムの「待ち」や遅れを見つけるには、工程の進み具合を見る目が欠かせません。進捗や工程の見える化から知りたい という方は、▶ 工程管理・進捗管理 から読み進めるのもおすすめです。
リードタイムとは ── 「着手から完了まで」にかかる時間のこと
まず、言葉の意味からそろえておきます。リードタイムとは、ある工程や仕事が「始まってから終わるまで」にかかる時間の長さ のことです。もう少しかみくだくと、「注文を受けてから、モノを届けるまでに何日かかるか」「材料を発注してから、手元に届くまでに何日かかるか」といった、始点と終点のあいだの経過時間 を指します。
大事なのは、リードタイムは「実際に作業している時間」だけではない、という点です。作業していない待ち時間も、始点から終点までの経過に含まれます。ここが、この記事全体のカギになります。まずはリードタイムの種類から整理していきます。
リードタイムとは ── 経過時間であって、作業時間そのものではない
リードタイムとは、「始点から終点までの、時計で測った経過時間」 のことです。作業にかかった正味の時間 (実働) とは別ものです。
たとえば、ある部品を作るのに、機械を動かす正味の加工時間が短くても、前の工程の順番待ちや、まとめて運ばれるのを待つ時間が長ければ、リードタイムは長くなります。「動いていた時間」ではなく「経過した時間」で測る ── これがリードタイムを見るときの第一歩です。
リードタイムの 4 つの種類 ── 開発・調達・生産・納品
リードタイムは、モノづくりのどの区間を測るかで、いくつかの種類に分かれます。代表的なのは次の 4 つです。
- 開発リードタイム ── 企画・設計から、量産できる状態になるまでの時間
- 調達リードタイム ── 材料や部品を発注してから、手元に届くまでの時間
- 生産 (製造) リードタイム ── 材料を投入してから、製品が完成するまでの時間
- 納品リードタイム ── 注文を受けてから、お客様に届けるまでの時間
このうち、現場で「リードタイム短縮」といえば、多くは 生産 (製造) リードタイム を指します。本記事も、この生産リードタイムを主役に置いて解説していきます。ただし、実際の納期 (注文から納品まで) は、調達・生産・納品のリードタイムが積み重なったものなので、どの区間が長いのかを分けて見ることが大切です。
なぜリードタイムを短くしたいのか ── 短いほど「良いこと」が増える
リードタイムを短くしたい理由は、短いほど、現場にも経営にも良いことが増える からです。
- 納期が守りやすくなる ── 早く作れれば、急な注文にも応えやすい
- 在庫が減る ── 待っているあいだ滞留するモノ (仕掛品) が減る
- お金が早く回る ── 作ってから売れるまでが短いほど、資金が寝ない
- 問題に早く気づける ── 流れが速いと、不良や異常がすぐ表に出る
つまりリードタイム短縮は、単に「速くする」だけの話ではなく、納期・在庫・原価・品質のすべてに効く、現場改善の背骨 なのです。ここを押さえておくと、後の話が一本の筋で理解できます。
リードタイムの構成 ── 加工・検査・運搬・停滞の 4 つに分かれる
ここからが本題です。生産リードタイムは、大きく 「加工・検査・運搬・停滞」の 4 つの時間 に分けられます。そして、この 4 つのうち、多くの現場でいちばん長いのは 「停滞 (待ち)」 です。まず、この構成を掴んでください。
4 つの時間の早見
生産リードタイムを構成する 4 つの時間は、次の通りです。
| # | 時間 | ひとことで言うと | 中身 |
|---|---|---|---|
| ① | 加工 | 作っている時間 | 実際に形を変えている正味の作業 (切る・削る・組む など) |
| ② | 検査 | 確かめている時間 | 良し悪しを測る・確認する時間 |
| ③ | 運搬 | 運んでいる時間 | 工程から工程へモノを移す時間 |
| ④ | 停滞 | 待っている時間 | 加工待ち・運搬待ち・ロット待ち・仕掛の滞留 |
このうち、お客様にとって価値があるのは、基本的に①加工だけ です。検査・運搬・停滞は、必要ではあっても、モノそのものの価値を高めてはいません。ここが、短縮を考えるうえでの分かれ目になります。
「正味の加工時間」はごく一部しかない
多くの人が意外に感じるのが、リードタイム全体に占める『加工 (正味)』の割合が、思ったよりずっと小さい という事実です。
現場でストップウォッチを持って 1 つの部品を追いかけると、機械が実際に動いて形を変えている時間は、全体のごく一部しかない、ということがよくあります。残りの大半は、次の工程が空くのを待つ、まとまった数がそろうのを待つ、運ばれるのを待つ といった「待ち」に消えています。
割合そのものは、作り方や品目によって幅があるので断定はできません。ですが、「加工より待ちのほうが長い」という傾向は、多くの現場に共通 します。だからこそ、加工時間を必死で削るより先に、待ちに目を向けたほうが効きやすいのです。
短縮の主戦場は「停滞」にある
ここが本記事でいちばん伝えたいところです。リードタイム短縮の主戦場は、加工でも検査でもなく、いちばん長い「停滞 (待ち)」 にあります。
もちろん加工そのものを速くすることも大切です。ですが、加工が全体の一部しかないなら、そこを頑張っても全体はあまり縮みません。逆に、大半を占める停滞を減らせれば、全体が大きく縮みます。「いちばん長いところから狙う」 ── これが短縮の鉄則です。では、なぜ停滞はそんなに長くなるのか。次で仕組みを見ていきます。
なぜ停滞が大半になるのか ── 待ちが積み上がる仕組み
停滞 (待ち) が長くなるのには、はっきりした理由があります。仕組みを知れば、「どこを狙えば減るか」が見えてきます。ここでは、停滞が積み上がる代表的な 3 つの理由を整理します。
ロット待ち ── 「まとまるまで動けない」
1 つ目は ロット待ち です。ロットとは、まとめて作る・運ぶ単位のことです。
たとえば「100 個そろってから次の工程へ運ぶ」というやり方だと、最初にできた 1 個は、残り 99 個ができあがるまでずっと待たされます。まとめて作るほど段取りの手間は減りますが、その分だけ 「そろうまでの待ち」が長くなる のです。大きなロットは、停滞を生む大きな原因になります。
工程間の停滞 ── 「前がつかえている」
2 つ目は 工程間の停滞 です。工程ごとの速さがそろっていないと、速い工程で作ったモノが、遅い工程の前に山積みになって待ちます。
とくに、能力の低い工程 (ボトルネック) の前には、モノがたまりやすくなります。流れの中でいちばん詰まりやすい工程が、全体のリードタイムを決めている ことが多いのです。どこで前がつかえているかを見つけることが、停滞を減らす近道になります。工程の詰まりを見つけるには、進捗や仕掛の見える化が役立ちます。詳しくは ▶ 工程管理・進捗管理 で解説しています。
段取待ち・仕掛の滞留 ── 「動き出すまでが長い」
3 つ目は 段取待ちと仕掛の滞留 です。段取りとは、次の品種を作るための準備 (型替え・調整など) のことです。
段取りに時間がかかると、その間ずっとモノは動けません。また、計画が場当たりで「作れるものから作る」と、あちこちに仕掛品 (作りかけ) が散らばって滞留します。動き出すまでの準備が長い・作りかけが散らばる ほど、停滞は増えていきます。
そして見落とせないのが、この停滞がそのまま原価に効いてくる ことです。待っているあいだのモノは、置き場を占め、資金を寝かせ、管理の手間を増やします。停滞を減らすことは、原価を下げることに直結します。この関係は、後段の「短縮が在庫・原価に効く」の節と ▶ 原価低減の進め方 で掘り下げます。
リードタイム短縮の 5 つの着眼点
停滞が大半だと分かったら、次は「どう減らすか」です。リードタイム短縮の打ち手は、大きく 5 つの着眼点 に整理できます。この 5 つを知っておけば、自社の現場でどこに手を打つかの見当がつきます。
5 つの着眼点の早見
リードタイム短縮の 5 つの着眼点は、次の通りです。
| # | 着眼点 | ひとことで言うと | おもに効く場所 |
|---|---|---|---|
| ① | 停滞除去 | 待ちそのものを減らす | 停滞 |
| ② | 段取短縮 | 準備の時間を短くする | 停滞・加工 |
| ③ | 小ロット化 | まとめる単位を小さくする | 停滞 |
| ④ | 平準化 | 仕事の山谷をならす | 停滞 |
| ⑤ | 工程集約 | 工程間の移動・受け渡しを減らす | 運搬・停滞 |
見ての通り、5 つのうち 4 つまでが「停滞」に効きます。やはり主戦場は停滞だということです。順に見ていきます。
① 停滞除去 ── 待ちそのものを見つけて減らす
停滞除去とは、モノが待っている場所を見つけて、その待ちを直接減らす ことです。いちばん素直で、いちばん効く着眼点です。
やり方の第一歩は、「どこにモノがたまっているか」を見ることです。仕掛品が山積みになっている場所は、そこが待ちの発生源です。そこに対して、前の工程を止める・順番を変える・運び方を変えるといった手を打ちます。たまっている場所こそ、短縮のチャンスがある場所 だと考えてください。
② 段取短縮 ── 準備の時間を短くする
段取短縮とは、次の品種を作るための準備 (型替え・調整など) にかかる時間を短くする ことです。
段取りが長いと、その間モノが止まるだけでなく、「段取りが面倒だから、まとめて大ロットで作ろう」となり、結果としてロット待ちも増えます。段取りを短くできれば、小さいロットでも段取りの負担が軽くなり、二重に効きます。段取りの手順を決めて標準化することが土台になります。標準化の考え方は ▶ 標準作業とは (トヨタ式) で解説しています。
③ 小ロット化 ── まとめる単位を小さくする
小ロット化とは、まとめて作る・運ぶ単位 (ロット) を小さくする ことです。
さきほど見たように、大きなロットはそろうまでの待ちを長くします。ロットを小さくすれば、最初の 1 個が次の工程に早く進めるので、全体の流れが速くなります。理想は「1 個ずつ流す」ことですが、いきなりは難しいので、今のロットを少しだけ小さくしてみる ところから始めるのが現実的です。ただし、小ロット化は段取りの回数を増やすので、②段取短縮とセットで進めるのがコツです。
④ 平準化 ── 仕事の山谷をならす
平準化とは、日ごと・時間ごとの仕事の量や種類の山谷を、できるだけならす ことです。
ある日は忙しく、ある日は暇 ── というように波が大きいと、忙しい日には仕掛が滞留し、暇な日には手待ちが出ます。仕事をならして流せば、滞留も手待ちも減り、流れが安定 します。平準化は生産計画の立て方と深く関わるので、詳しくは ▶ 生産計画の立て方 で解説しています。
⑤ 工程集約 ── 移動と受け渡しを減らす
工程集約とは、離れている工程を近づけたり、まとめたりして、工程間の移動・受け渡しを減らす ことです。
工程が離れていると、そのたびに運搬が発生し、運搬のたびに「運ばれ待ち」が生まれます。工程を近くに配置し直す、順番を組み替えるだけでも、運搬と停滞がまとめて減ります。モノの動く距離を短くする ことは、地味ですがよく効く着眼点です。
リードタイム短縮と「ムダ 7 種」の関係 ── 停滞は時間で見たムダ
ここで、改善の世界でよく使われる「ムダ 7 種」とのつながりを整理しておきます。リードタイム短縮は、実は ムダ取りを『時間』という切り口で見たもの です。
ムダ 7 種とは、現場に潜む代表的な 7 つのムダ (作りすぎ・手待ち・運搬・加工・在庫・動作・不良) のことです。このうち、リードタイムの停滞と深く関わるのは次の 3 つです。
- 手待ちのムダ ── モノや人が待っている時間。停滞そのもの
- 運搬のムダ ── 必要以上に運ぶこと。運搬時間と運ばれ待ちを生む
- 在庫のムダ ── 仕掛品や在庫が滞留すること。停滞が形になったもの
つまり、停滞を減らすことは、手待ち・運搬・在庫のムダを同時に減らすこと でもあります。リードタイム短縮とムダ取りは、同じ現象を「時間」で見るか「ムダ」で見るかの違いにすぎません。ムダ 7 種そのものの詳しい中身は、▶ ムダの種類は 7 つもあります で解説しています。あわせて読むと、短縮の着眼点がより立体的に見えてきます。
リードタイム短縮と「標準作業」の関係 ── 短縮を定着させる土台
短縮の打ち手を進めるうえで、忘れてはいけない土台があります。それが 標準作業 (決めたやり方) です。標準がないまま短縮だけを進めても、すぐに元に戻ってしまいます。
標準がないと短縮は「戻る」
標準作業とは、「いま考えられる、いちばん良いやり方」を決めて、みんながその通りにやること です。
段取りを短くしても、工程を集約しても、やり方が人によってバラバラなら、時間はまたばらつき、せっかくの短縮は元に戻ります。まず「決めたやり方」を作り、それを守るからこそ、短縮が定着 します。決めたやり方があれば、「そこからさらにどう縮めるか」も比べられます。
標準 → 改善 → 新しい標準、で縮め続ける
リードタイム短縮は、一度やって終わりではありません。標準を決める → そこから改善して縮める → 縮んだ状態を新しい標準にする、という繰り返しで、少しずつ短くしていきます。
この「標準から始めて、改善で更新する」という回し方が、短縮を続けるコツです。標準作業そのものの作り方・考え方は ▶ 標準作業とは (トヨタ式) で詳しく解説しています。リードタイム短縮と標準作業は、この「決めて・縮めて・また決める」でつながっています。
リードタイム短縮の進め方 5 ステップ
着眼点が分かったら、あとは進め方です。やみくもに手をつけると空回りするので、5 つのステップ に沿って進めるのがおすすめです。
進め方の早見
リードタイム短縮の進め方は、次の 5 ステップです。
- 第 1 ステップ: 測る ── 今のリードタイムがどれくらいかを、時計で測る
- 第 2 ステップ: 分解する ── 加工・検査・運搬・停滞に分け、どこが長いか見る
- 第 3 ステップ: 停滞を狙う ── いちばん長い停滞から、着眼点を当てて手を打つ
- 第 4 ステップ: 小さく試す ── 一気に変えず、一部の工程・品種で試す
- 第 5 ステップ: 標準化して回す ── 効いたやり方を標準にし、次の停滞へ
順に見ていきます。
第 1・第 2 ステップ ── まず測って、分解する
短縮の出発点は、「測る」こと です。「なんとなく長い」ではなく、「この品目は着手から完了まで何日」と、実際の時間を掴みます。測っていないものは、縮んだかどうかも分かりません。
次に、その時間を 加工・検査・運搬・停滞に分解 します。ここで、たいていは「停滞が大半」という姿が見えてきます。どこが長いかが見えれば、狙う場所は自ずと決まります。進捗や仕掛を見える化する方法は、▶ 工程管理・進捗管理 が参考になります。
第 3・第 4 ステップ ── いちばん長い停滞を、小さく試す
分解できたら、いちばん長い停滞に、5 つの着眼点 (停滞除去・段取短縮・小ロット化・平準化・工程集約) を当てて 手を打ちます。全部を一度にやろうとせず、いちばん効きそうな 1 つから始めます。
そのとき大事なのが、いきなり全体を変えず、一部の工程や品種で小さく試す ことです。小さく試せば、失敗しても傷が浅く、効果も確かめやすくなります。うまくいけば、その範囲を少しずつ広げていきます。改善を小さく回す進め方は、▶ 改善の進め方 完全ガイド にまとめています。
第 5 ステップ ── 効いたら標準にして、次の停滞へ
試して効いたやり方は、そのままにせず「標準 (決めたやり方)」にして定着 させます。標準にしないと、人が変わったり忙しくなったりした途端に元へ戻ってしまいます。
1 つの停滞を減らすと、次に長い停滞が浮かび上がってきます。そこへまた同じ 5 ステップを回します。こうして 「測る → 分解 → 狙う → 試す → 標準化」をぐるぐる回す ことで、リードタイムは少しずつ、しかし確実に短くなっていきます。
リードタイム短縮が「在庫」と「原価」に効く ── 短いほどお金が回る
リードタイム短縮は、納期の話だけではありません。短くなると、在庫と原価にもはっきり効いてきます。ここを理解すると、短縮に取り組む意味がぐっと大きくなります。
在庫とのつながり ── 待ちが減れば仕掛が減る
在庫、とくに仕掛品 (作りかけ) は、リードタイムが長いほど増えます。流れが遅いと、そのぶん途中のモノが滞留するからです。
逆にリードタイムが短くなれば、途中で待っているモノが減り、仕掛在庫が自然に減ります。在庫が減れば、置き場も、管理の手間も、寝ているお金も軽くなります。適正な在庫の持ち方・発注の考え方は、▶ 在庫管理 (適正在庫・発注点) で解説しています。リードタイムと在庫は、切り離せない関係です。
原価とのつながり ── 停滞は「見えないコスト」
原価とのつながりも見逃せません。待っているあいだのモノは、価値を生まないのに、置き場・資金・管理の手間を食っています。これは、伝票には出にくい「見えないコスト」です。
リードタイムを短くして停滞を減らせば、この見えないコストが減り、原価が下がります。さらに、流れが速いと不良にも早く気づけるので、作り直しのムダも減ります。原価をどう下げていくかの具体的な進め方は、▶ 原価低減の進め方 で解説しています。リードタイム短縮は、そのまま原価低減の一手 でもあるのです。
中小製造業がリードタイム短縮でつまずく 4 つの点 ── あるあると対処の方向
最後に、わたしが中小製造業の現場でよく見てきた「リードタイム短縮でつまずく点」を 4 つ整理します。裏を返せば、ここを避ければ短縮は前に進みます。
つまずき 1 ── 加工時間ばかり削ろうとする
いちばん多いのが、これです。「速く作らなきゃ」と、正味の加工時間ばかりを削ろうとする パターンです。ですが、加工は全体の一部でしかありません。ここを頑張っても、全体はあまり縮みません。
対処の方向は、まず いちばん長い『停滞』に目を向ける ことです。加工より待ちのほうが長いのですから、そこを減らすほうがずっと効きます。
つまずき 2 ── 測らずに「なんとなく」で進める
現状のリードタイムを測らないまま、感覚で短縮に取り組むパターンです。これでは、どこが長いのかも、縮んだのかも分かりません。
対処の方向は、まず測って、加工・検査・運搬・停滞に分解する ことです。地味ですが、これが短縮のいちばん確実な第一歩です。数字で見えれば、狙う場所は自然に決まります。
つまずき 3 ── 一気に大改造しようとする
「どうせなら全部まとめて変えよう」と、いきなりライン全体を作り替えようとするパターンです。大きく動かすほど、失敗したときの傷も深くなります。
対処の方向は、一部の工程・品種で小さく試してから広げる ことです。小さく試せば、効果を確かめながら、無理なく範囲を広げられます。改善は、小さく速く回すほうが続きます。
つまずき 4 ── 縮めたのに標準化せず、元に戻る
せっかく短縮できても、やり方を標準にしないまま放置して、気づいたら元に戻っていた というパターンです。単発の短縮は、続かなければ効果が消えます。
対処の方向は、効いたやり方を『決めたやり方 (標準)』にして定着させる ことです。標準にしてはじめて、短縮は現場に根づきます。標準の作り方は ▶ 標準作業とは (トヨタ式) で解説しています。
よくある質問 Q&A
Q1: そもそもリードタイムとは何ですか?
リードタイムとは、ある仕事が「始まってから終わるまで」にかかる経過時間 のことです。「注文を受けてから届けるまで」「材料を発注してから届くまで」といった、始点から終点までの時間を指します。大事なのは、実際に作業している時間だけでなく、待っている時間も含む という点です。現場で「リードタイム短縮」というときは、多くは材料投入から製品完成までの「生産 (製造) リードタイム」を指します。
Q2: 短縮は、どこから手をつければいいですか?
まず 現状を測って、加工・検査・運搬・停滞に分解する ことから始めてください。たいていは「停滞 (待ち)」が大半を占めています。いちばん長い停滞から、停滞除去・段取短縮・小ロット化・平準化・工程集約のどれかを当てて手を打つのが近道です。加工時間を削るのは、その後で十分です。
Q3: 小ロット化すると段取りが増えて、かえって原価が上がりませんか?
その心配はもっともです。ロットを小さくすると段取りの回数は増えます。だからこそ、小ロット化は『段取短縮』とセットで進める のがコツです。段取り時間そのものを短くしておけば、回数が増えても負担は抑えられます。段取りを短くしながらロットを小さくすることで、原価を上げずに流れだけを速くできます。
Q4: 受注生産でもリードタイムは短縮できますか?
できます。受注生産は「先に見込みで作る」ことはしませんが、受けた注文を、どの順で・どう流すかを工夫すれば、停滞は減らせます。工程間の待ちや段取りの長さは、受注生産でも見込生産でも共通の課題です。むしろ受注生産は納期がそのまま競争力になるので、リードタイム短縮の効果が大きく出やすい形態です。
Q5: リードタイム短縮に、システムやツールは必要ですか?
いきなり大きなシステムは要りません。まずは ストップウォッチと紙で、現状の時間を測って分解する ことから始められます。どこが長いかが見えれば、手を打つ場所は決まります。仕掛や進捗を見えるようにする段階でツールが役立つこともありますが、それは流れの整理が進んでからで十分です。順番を間違えないことが大切です。
Q6: 短縮の効果は、どこで実感できますか?
いちばん分かりやすいのは、現場に散らばっている仕掛品 (作りかけ) が減る ことです。流れが速くなると、途中で待っているモノが目に見えて減ります。あわせて、納期が守りやすくなる・急な注文に応えやすくなる・置き場が空く、といった形でも効果が出てきます。数字としては、在庫 (仕掛) の量と、着手から完了までの日数で確かめるのがおすすめです。
まとめ
本記事で押さえてほしい 3 行サマリーは以下の通りです。
- リードタイムは 加工・検査・運搬・停滞 に分かれ、その大半は 「停滞 (待ち)」。短縮の主戦場は停滞にある
- 短縮の着眼点は 停滞除去・段取短縮・小ロット化・平準化・工程集約 の 5 つ。うち 4 つは停滞に効く
- 進め方は 「測る → 分解 → 停滞を狙う → 小さく試す → 標準化」 の繰り返し。短縮は在庫減・原価減に直結する
リードタイム短縮について解説しました。響きは難しそうですが、要は 「いちばん長い待ちを見つけて、その待ちを減らす」 という一本の筋です。そして、それが在庫や原価にもつながっていて、短くするほど現場のお金と時間が回り出します。まずは自社の 1 品目のリードタイムを測って、加工・検査・運搬・停滞に分解してみましょう。きっと「待ち」の長さに驚くはずです。コツコツと積み上げて、流れの速い現場を作っていきましょう。
関連記事
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- ▶ 生産計画の立て方 (平準化・負荷の考え方)
- ▶ 在庫管理 (適正在庫・発注点) (仕掛・在庫への波及)
- ▶ 原価低減の進め方 (停滞=見えないコストの削減)
- ▶ 標準作業とは (トヨタ式) (短縮を定着させる標準)
- ▶ ムダの種類は 7 つもあります (手待ち・運搬・在庫のムダと接続)
- まとめ記事 ▶ 改善の進め方 完全ガイド (小さく試す・改善を続ける)
個別相談
自社のリードタイムがどこで長くなっているか、どこから短縮に手をつけるかで迷ったら、▶ あすなろ経営研究所 で個別相談を承っています。中小企業診断士として、自動車工場での改善経験をもとに、リードタイムの分解から現場の見える化・標準化までお手伝いしています。
外部の公的情報源
- 中小企業ビジネス支援サイト J-Net21: https://j-net21.smrj.go.jp/
- 中小企業庁: https://www.chusho.meti.go.jp/
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 (中小機構): https://www.smrj.go.jp/
- 経済産業省: https://www.meti.go.jp/
